精神疾患による自殺の実態|警察庁・厚労省統計から見る原因と推移【2007~2025年】

更新日:18 時間前
最終更新日:2026年9月17日(随時更新)
※更新履歴:警察庁の原因・動機の複数計上について注記を追加|精神疾患と自殺に関するPubMed収載研究を追加|反対・慎重論に関する研究を追加
👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
👉 安楽死の定義と分類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓
👉 18年間の「健康問題」による自殺者数の推移は、こちらをご覧ください↓
日本における自殺の原因として、精神疾患の影響は長年にわたり重要な位置を占めてきました。警察庁の統計や自殺対策白書を分析すると、うつ病をはじめとする精神的な問題が、自殺の大きな要因となっている実態が明らかになっています。
一方で、総自殺者数は減少傾向にあるものの、
健康問題が占める割合はむしろ増加しており、
精神疾患の影響は依然として深刻です。
これは、自殺問題が単なる個人の問題ではなく、医療・社会全体の課題であることを示しています。
本記事では、警察庁統計および自殺対策白書のデータをもとに、
精神疾患と自殺の関係を18年間にわたって分析し、
その実態と背景、そして今後の課題についてわかりやすく解説します。
🎧音声による動画解説
要約図(自由使用可)

年間自殺者数全体のうち、健康問題を動機とする自殺が占める割合


※図表について|警察庁統計と自殺対策白書を基にした算出方法
本図表は、RiP:D(Rest in Peace with Dignity)が独自に作成したものです。
警察庁が毎年公表している自殺統計資料に記載された数値データを基礎とし、あわせて厚生労働省が発行する『自殺対策白書』の内容を参照しながら、健康問題による自殺者数の内訳を再整理・集計しています。
対象期間は平成19年(2007年)から令和6年(2024年)までの18年間で、「健康問題」を理由とする自殺について、身体疾患・身体障害と精神疾患(うつ病、統合失調症等、その他)に分類し、年次推移および平均値を算出しています。
なお、本図表は特定の立場を前提とした恣意的な数値操作を行ったものではなく、公的機関が公開している一次資料をもとに、一般市民にも全体像が把握しやすい形で可視化することを目的として作成したものです。
警察庁(National Police Agency)が公表する自殺統計資料↓
厚生労働省(Ministry of Health, Labour and Welfare)が発行する『自殺対策白書』↓
👉 後日、改めて詳細なソース元を公開して記事にしています↓
👉※身体疾患・身体障害による自殺については、こちらからご覧ください↓
健康問題による自殺の中心にある精神疾患
日本では長年にわたり、「自殺対策」が重要な社会課題として語られてきました。
その中で、経済問題や孤立と並び、しばしば言及されるのが「健康問題」です。
今回取り上げる図表は、平成19年から令和6年までの18年間にわたる「健康問題による自殺者数」を詳細に分類したものです。
本稿では、この図表に示された精神疾患系の自殺に焦点を当て、感情論や一般論を排し、統計が示す事実から私たちが何を読み取るべきなのかを考察します。
👉 安楽死と自殺の違い・関係を整理したい方は、こちらをご覧ください↓
健康問題による自殺の中心にある「精神疾患」
まず確認すべき事実があります。
この18年間、自殺全体に占める「健康問題」を原因とする割合は、
平均で51.2%に達しています。
つまり、日本における自殺の半数以上が、
健康上の問題を背景にしています。

さらに、その内訳を見ると、次の構造が浮かび上がります。
・身体疾患・身体障害による自殺:
平均 約4,300人
・精神疾患による自殺:
平均 約7,400人
健康問題による自殺の中で、精神疾患が明確に多数派を占めていることは、この図表が一貫して示している事実です。

精神疾患による自殺の内訳|うつ病が占める割合
精神疾患の内訳に目を向けると、さらに特徴的な傾向が確認できます。
精神疾患による自殺のうち、
・うつ病:平均 約5,200人
・統合失調症等:平均 約1,100人
・その他の精神疾患:平均 約1,100人
と、うつ病が全体の約7割を占めています。
これは、「極めて稀で重篤な精神疾患が原因で起きている問題」ではなく、
・社会に広く存在する精神疾患が、
・大規模な死と結びついている
という現実を示しています。
精神疾患による自殺は一時的な増減ではない
この図表を年次で見ても、精神疾患による自殺は、ある年だけ突出しているわけではありません。

・年ごとの多少の上下はある
・しかし、18年間を通じて高い水準が持続している
・特定の政策や医療技術の進展によって、
明確に減少した時期は確認できない
これは、精神疾患系の自殺が
一過性の社会不安や個別要因では
説明できない構造的問題
であることを示唆しています。
精神疾患と「治療可能性」|統計が示す現実
精神疾患については、しばしば
「治療可能性がある」
「回復の見込みがある」
と語られます。
しかし、この図表が示すのは、
・治療が存在するとされ続けた18年間に
・毎年7,000人前後が精神疾患を理由に
・自ら命を絶っている
という、動かしがたい事実です。
交通事故死、労災死亡、災害死亡、などと比較しても、極めて大きな数字です。
重要なのは、治療の存在と、苦痛の軽減が統計的に一致していないという点です。
これは医療の努力を否定するものではありません。
一方で、
「治療があるのだから耐えられるはずだ」
という前提が、現実の死者数と整合していない
ことを示しています。
数値化されにくい精神的苦痛と自殺
身体疾患と比較した場合、精神疾患には特徴があります。
・客観的な数値指標が乏しい
・痛みや苦しさが外から見えにくい
・本人の訴えが「症状」として疑われやすい
しかし、この図表は、そうした
評価されにくい苦痛が、
死に至るほど深刻である
ことを、数字という形で明確に示しています。
精神疾患による自殺が社会に突きつける問い
精神疾患による自殺が、これほど長期間・大規模に発生しているという事実は、私たちに次の問いを投げかけます。
精神的な苦痛は、身体的な苦痛と同様に、人を「生きられない状態」に追い込む現実を、社会は本当に直視しているのか。
現在の制度や議論では、精神疾患による苦痛は「支援・治療の対象」とされる一方、
その限界について語られることは多くありません。
しかし、この図表が示す数字は、その前提だけでは説明しきれない死が存在していることを静かに語っています。
👉 日本における安楽死の法律的な扱いについては、こちらで詳しく解説しています↓
👉 安楽死をめぐる賛成・反対の議論はこちら
まとめ ― RiP:Dとしての立場
本稿で見てきた統計は、精神疾患による自殺が「例外的な悲劇」ではなく、
日本社会における主要な死の構造の一部であることを示しています。
私たち RiP:D(Rest in Peace with Dignity)は、この現実を前に、
・誰かを急いで結論へ導くこと
・生と死を単純化すること
を望んでいるわけではありません。
一方で、
・長期間にわたり、
・精神疾患のみを基礎疾患として、
・耐え難い苦痛の中で命を失う人々が存在し続けている
という事実は、現行の制度や議論の枠組みだけでは、十分に説明できない現実でもあります。
この点を踏まえるならば、
・精神疾患が唯一の基礎疾患である場合であっても、
・一定の厳格な条件の下で、
・安楽死の適応が議論の対象となり得る可能性
を、初めから排除すべきではないのではないでしょうか。
私たちが問題にしたいのは、拙速な制度導入でも、単純な賛否の対立でもありません。
すでに起き続けている大量の死を、
「制度の外」「議論の外」に置き続けてよいのか
…その問いを、社会と共有したいのです。
精神疾患による自殺の数字は、声を上げることができなかった人々の、静かな記録でもあります。
この事実から目を背けず、制度・医療・倫理のあり方を、冷静に、そして誠実に考えること。それこそが、私たちに求められている出発点ではないでしょうか。
👉 世界各国の安楽死制度を知りたい方は、はこちらで解説しています↓
👉 安楽死と関係が深い「緩和ケアと安楽死の違い」は、こちらで整理しています↓
👉 混同されやすい、安楽死と尊厳死の違いをを知りたい方は、こちら(延命治療との関係も整理)↓
👉 各国の安楽死制度や最新動向については、世界の安楽死動向をまとめたこちらの記事もご覧ください↓
統計データを読む際の重要な注意点
本記事でいう「精神疾患による自殺」や「うつ病による自殺」という表現は、警察庁の自殺統計において、原因・動機の詳細項目として「病気の悩み・影響(うつ病)」などが計上されたケースを指しています。
これは、「精神疾患だけが唯一の原因であった自殺者数」を意味するものではありません。
警察庁の自殺統計では、原因・動機は複数計上される仕組みになっており、一人の自殺について複数の要因が記録される場合があります。また、原因・動機が特定できないケースも存在します。
したがって、本記事の数値は「精神疾患が自殺の唯一の原因であった人数」ではなく、「自殺の原因・動機として精神疾患関連の項目が計上された件数」として読む必要があります。
この区別は、自殺を単一の原因だけで説明しないためにも重要です。
厚生労働省も、自殺は健康問題、経済・生活問題、家庭問題、人間関係など、複数の要因が複雑に連鎖して生じることを示しています。
精神疾患と「治療可能性」――統計から何が分かるのか
精神疾患には、薬物療法、精神療法、入院治療、リハビリテーション、社会的支援など、さまざまな治療・支援手段があります。
一方で、治療や支援の選択肢が存在することと、すべての患者の苦痛や自殺リスクが十分に解消されることは同じではありません。
ただし、警察庁の自殺統計だけから、「治療が存在するにもかかわらず苦痛が軽減されなかった」といった因果関係を直接証明することはできません。
ここで確認できるのは、精神疾患に関連する原因・動機が、自殺統計において長期間にわたり多数記録されているという事実です。
この事実を踏まえれば、精神疾患に伴う深刻な苦痛について、治療・支援だけでなく、意思決定能力、回復可能性、本人の自己決定、社会的支援、終末期の選択肢をどのように考えるべきかという倫理的・制度的論点についても、慎重に検討する余地があります。
「自殺統計をどう読むか」
自殺者
│
├── 原因・動機 不詳
│
└── 原因・動機 特定
│
├── 健康問題
│ ├── うつ病
│ ├── 統合失調症
│ ├── その他の精神疾患
│ ├── 身体疾患
│ └── 身体障害
│
├── 経済・生活問題
├── 家庭問題
└── その他
※複数の原因・動機を計上可能
「統計→安楽死」論理の切り分け
精神疾患関連の
自殺統計
↓
精神的苦痛が
深刻な転帰につながることを示す
↓
×
「だから安楽死を認めるべき」
とは統計だけでは証明できない
↓
倫理・医学・法律の検討
↓
意思決定能力
治療可能性
本人の意思
社会的圧力
第三者審査
監督制度
↓
制度設計の議論
精神疾患関連自殺統計と安楽死制度は何が違うか
項目 | 自殺統計 | 安楽死制度 |
対象 | 自殺による死亡 | 制度上の適格性を満たす申請者 |
データ | 原因・動機等 | 診断・意思能力・適格性等 |
原因の扱い | 複数計上可能 | 個別審査 |
意思能力 | 統計項目では直接評価しない | 制度によって評価 |
治療可能性 | 統計から直接判断できない | 制度によって重要な要件 |
第三者審査 | なし | 国によって存在 |
目的 | 発生した自殺を統計化 | 制度上の条件を満たす選択を審査 |
👉 精神疾患の安楽死を認めているオランダとベルギーの詳細なデータ
【最新版】オランダ安楽死2025年『年次報告書』完全解説|過去最多10,341件・制度運用・年齢・疾患・審査体制を徹底解説↓
ベルギー 安楽死の現状【2026年】制度・割合・条件・統計データを徹底解説
2025年・健康問題の詳細
2025年・健康問題の詳細 | 件数 |
健康問題 | 11,355 |
うつ病 | 3,958 |
統合失調症 | 855 |
その他の精神疾患 | 1,792 |
その他の身体疾患 | 2,540 |
身体障害 | 567 |
認知機能低下 | 248 |
FAQ(よくある質問)
Q1.精神疾患は自殺の主な原因なのですか?
A. 警察庁の自殺統計では、「健康問題」が原因・動機として大きな割合を占め、その中でも「病気の悩み・影響(うつ病)」など精神疾患に関連する項目が大きな割合を占めています。
ただし、自殺には複数の原因・背景が関係することが多く、精神疾患だけを唯一の原因として扱うことはできません。
Q2.この記事でいう「精神疾患による自殺」とは何ですか?
A. 本記事では、警察庁の自殺統計において、原因・動機の詳細項目として「うつ病」「統合失調症」「その他の精神疾患」などが計上されたケースを指しています。
これは「精神疾患だけが原因だった自殺者数」という意味ではありません。原因・動機は複数計上される場合があるためです。
Q3.精神疾患による自殺は増えているのですか?
A. 自殺者総数は長期的には減少していますが、精神疾患に関連する原因・動機が毎年多数計上されていることは統計から確認できます。
ただし、年ごとの増減については、単純な増加・減少だけで判断せず、総自殺者数、原因・動機が特定された人数、統計上の分類方法の変更なども考慮する必要があります。
Q4.精神疾患と自殺にはどのような医学的関連がありますか?
A. 日本の心理学的剖検研究や国際的な研究では、精神疾患、特に気分障害などと自殺との関連が報告されています。
一方で、精神疾患があることだけから個人の自殺リスクや意思決定能力を判断することはできません。
Q5.精神疾患は治療できるのだから、安楽死を議論する必要はないのでは?
A. 精神疾患には薬物療法、精神療法、入院治療、社会的支援などさまざまな治療・支援方法があります。
一方で、治療可能性があることと、すべての患者の苦痛が十分に軽減されることは同じではありません。
安楽死をめぐる議論では、「治療可能性」「回復可能性」「意思決定能力」「本人の意思」「社会的支援」などを個別に検討する必要があります。
Q6.精神疾患による自殺と安楽死は同じものですか?
A. いいえ、制度上は別のものです。
自殺は、本人が自ら生命を絶つ行為を指します。一方、安楽死は、法律によって認められている国・地域では、一定の適格性や本人の意思確認などの条件の下で、医療者が関与して死をもたらす制度として扱われています。
したがって、両者を単純に同一視することはできません。
Q7.安楽死と尊厳死は同じですか?
A. 一般には区別されます。
安楽死は、医療者が薬物などによって患者の死を直接もたらす行為を指して使われます。
一方、尊厳死という言葉は、延命治療の差し控え・中止などによって、過度な医療介入を避け自然な経過で最期を迎えることを指して使われる場合があります。
ただし、用語の定義は国・制度・文献によって異なるため、具体的な行為を確認することが重要です。
Q8.緩和ケアを否定しているのですか?
A. いいえ。
緩和ケアは、痛みやその他の身体的・心理的・社会的な苦痛を軽減する重要な医療・ケアです。
本サイトは緩和ケアを否定するものではありません。
むしろ、適切な緩和ケアや精神医療、社会的支援を十分に提供したうえで、それでもなお残る耐え難い苦痛について、社会としてどのような選択肢を認めるべきかを検討する必要がある、という立場から議論しています。
Q9.精神疾患がある人に安楽死を認めている国はありますか?
A. 国・地域によって制度は大きく異なります。
オランダやベルギーなどでは、一定の条件の下で精神疾患を理由とする安楽死・医療的死が議論・実施されてきました。一方、多くの国・地域では対象を限定しており、精神疾患のみを理由とする場合には認めていない制度もあります。
そのため、「合法国では精神疾患なら誰でも安楽死できる」という理解は正確ではありません。
Q10.精神疾患を理由とする安楽死には反対・慎重論もありますか?
A. はい。
主な論点として、意思決定能力の評価、精神疾患の回復可能性、症状の変動、自殺予防との関係、治療可能性、社会的孤立や家族からの圧力などが挙げられます。
学術研究にも、制度化に慎重な立場や制度上のリスクを指摘する研究があります。
本サイトでは、法制化を求める立場から発信していますが、これらの反対・慎重論も重要な検討対象として扱っています。
Q11.「自殺を防ぐこと」と「安楽死を認めること」は矛盾しませんか?
A. 重要な論点の一つです。
自殺予防では、本人が一時的な危機や治療可能な状態にある場合に、その生命を守り、治療や支援につなげることが基本となります。
一方、安楽死制度をめぐる議論では、十分な意思能力があり、一定の条件を満たした本人による持続的な意思をどのように扱うかが問題となります。
両者を同一視せず、意思決定能力、治療可能性、本人の意思、社会的圧力などを個別に評価する制度設計が必要です。
Q12.この統計だけで、精神疾患を理由とする安楽死の合法化が必要だと証明できますか?
A. いいえ。
警察庁の自殺統計は、精神疾患に関連する原因・動機が自殺統計上多数計上されていることを示す重要な資料です。
しかし、それだけで安楽死制度の合法化が必要だという結論を直接導くことはできません。
安楽死の法制化を検討するためには、医学、倫理、法律、本人の自己決定、意思決定能力、社会的圧力、制度の監督、安全性などを総合的に検討する必要があります。
本記事が提起しているのは、「精神疾患に伴う深刻な苦痛と、それに関連する大量の死を、終末期の自己決定をめぐる議論から最初から除外してよいのか」という問題です。
「安楽死と自殺の全体像」については、こちらをご覧ください↓
嘆願書送付アクション
本サイトでは、各国制度、安全性・濫用防止、緩和ケア、身体疾患による苦痛と自殺などについて、国会提出用の補足資料も公開しています。
※世界の制度を比較したうえで、日本で制度設計を考える際には、適格要件、第三者審査、記録・報告、医療従事者の良心的拒否、障害者・高齢者等への配慮、緩和ケアとの関係などを個別に検討する必要があります。
書類 一覧
・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』
・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白
・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル
・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策
・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題
・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態
・カバーレター:ご挨拶(1ページ)
・要約文(2ページ)
参考文献・主要資料
1.日本の公的統計・政府資料
・警察庁「自殺者数」警察庁が公表する自殺統計。年次の自殺者数、原因・動機、年齢、性別等の基礎資料として使用しています。警察庁「自殺者数」
・厚生労働省「自殺の統計:各年の状況」警察庁の自殺統計をもとに、各年の確定値・暫定値および詳細資料を掲載しています。厚生労働省「自殺の統計:各年の状況」
・厚生労働省「令和7年版 自殺対策白書」我が国の自殺の現状、自殺対策の実施状況、年齢・性別・原因・動機等について整理した政府の年次白書です。
2.日本における精神疾患と自殺
・Hirokawa S, Kawakami N, Matsumoto T, et al. Mental disorders and suicide in Japan: a nation-wide psychological autopsy case-control study. Journal of Affective Disorders. 2012;140(2):168-175.DOI: 10.1016/j.jad.2012.02.001. PMID: 22391515.
日本全国を対象とした心理学的剖検研究で、精神疾患と自殺との関連を検討した研究です。PubMed
・Bertolote JM, Fleischmann A. Psychiatric diagnoses and suicide in 3275 suicides: a meta-analysis.BMC Psychiatry. 2004;4:37.DOI: 10.1186/1471-244X-4-37. PMID: 15527502.
複数の心理学的剖検研究を統合し、自殺既遂者における精神疾患の診断状況を検討したメタ分析です。PubMed
3.精神疾患を理由とする安楽死・自殺幇助に関する研究
・Nicolini ME, Kim SYH, Churchill ME, Gastmans C.Should euthanasia and assisted suicide for psychiatric disorders be permitted? A systematic review of reasons.Psychological Medicine. 2020;50:1241-1256.DOI: 10.1017/S0033291720001543. PMID: 32482180.
精神疾患を理由とする安楽死・自殺幇助について、賛成・反対双方の論拠を体系的に整理したシステマティックレビューです。PubMed
・Grassi L, Folesani F, Marella M, et al. Debating Euthanasia and Physician-Assisted Death in People with Psychiatric Disorders. Current Psychiatry Reports. 2022;24(6):325-335.DOI: 10.1007/s11920-022-01339-y. PMID: 35678920.
精神疾患を理由とする医療的死について、自己決定、回復可能性、自殺予防、脆弱性などの論点を整理したレビューです。PubMed
4.反対・慎重論を含む研究
・Mehlum L, Schmahl C, Berens A, et al. Euthanasia and assisted suicide in patients with personality disorders: a review of current practice and challenges. Borderline Personality Disorder and Emotion Dysregulation. 2020;7:15.DOI: 10.1186/s40479-020-00131-9. PMID: 32742662.
パーソナリティ障害を含む精神疾患について、治療可能性、症状の変動、意思決定能力、適格性評価などの問題を検討しています。PubMed
・Appelbaum PS.Physician-assisted death for psychiatric disorders: ongoing reasons for concern. World Psychiatry. 2024;23(1):56-57.DOI: 10.1002/wps.21153. PMID: 38214640.
精神疾患を理由とする医師幇助死について、意思決定能力、自殺予防、回復可能性等の観点から慎重な検討を求める論考です。PubMed
5.研究上の位置づけ
本記事では、安楽死制度の法制化を求める立場から問題提起を行っています。
一方で、精神疾患を理由とする安楽死・自殺幇助については、意思決定能力、治療可能性、症状の変動、自殺予防との関係、脆弱な患者への影響など、重要な反対・慎重論があります。
そのため、本記事では制度化を支持する研究だけでなく、反対・慎重論を示す研究も確認し、読者が原資料を参照できるよう、可能な限りPubMed、DOI、公的機関資料を併記しています。
調査方法・情報源
本記事では、精神疾患と自殺の実態、および精神疾患を理由とする安楽死・医師幇助自殺をめぐる制度・医学・倫理上の論点について、公的統計、政府・行政機関の資料、司法資料、国際機関の文書、査読付き学術論文などを中心に調査しています。
自殺に関する統計は、警察庁・厚生労働省の公表資料を優先して参照し、統計上の「原因・動機」と医学的な因果関係を区別して扱っています。本記事でいう「精神疾患による自殺」は、精神疾患だけが唯一の原因であったことを意味するものではなく、警察庁の自殺統計において精神疾患等に関連する原因・動機が記録された自殺を指します。
医学的な関連については、PubMed等に収載された査読付き論文、総説、系統的レビューなどを参照し、精神疾患と自殺リスク、治療可能性、回復可能性などについて確認しています。
安楽死・医師幇助自殺等の制度については、各国の政府、議会、裁判所、制度運営機関などの一次資料を優先しています。国によって法律上の用語や定義が異なるため、単純な「合法/違法」の二分ではなく、対象者、要件、手続、審査、監督体制などを確認して整理しています。
また、精神疾患を理由とする安楽死等については、制度を支持する議論だけでなく、意思決定能力、治療可能性・回復可能性、自殺予防との関係、社会的圧力、脆弱性、濫用防止などをめぐる慎重論・反対論についても、可能な限り併記しています。
本記事は特定の個人に安楽死等を勧めたり、自殺を正当化したりするものではありません。終末期や耐え難い苦痛に対する自己決定と法制度のあり方について、賛成・反対双方の論点を含めて検討するための情報を提供することを目的としています。
統計から制度論へ
自殺統計は、精神疾患に関連する原因・動機が多数記録されていることを示します。
しかし、この統計だけから「精神疾患を理由とする安楽死を合法化すべきだ」という結論を直接導くことはできません。
そこで必要になるのが、医学・倫理・法律・制度設計の議論です。
精神疾患を理由とする安楽死については、意思決定能力、治療可能性、回復可能性、自殺予防との関係、社会的圧力、本人の持続的意思など、複数の論点を検討する必要があります。
RiP:Dが提起しているのは、これらの条件を厳格に検討したうえでもなお、精神疾患のみを理由とする終末期の選択肢を制度議論から最初から排除してよいのか、という問題です。















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