【最新版】オランダ安楽死2025年『年次報告書』完全解説|過去最多10,341件・制度運用・年齢・疾患・審査体制を徹底解説
- リップディー(RiP:D)

- 7月28日
- 読了時間: 14分
更新日:6 日前
※最終更新日:2026年7月29日(随時更新)
👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
👉 安楽死の定義と分類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓
はじめに|2025年オランダ安楽死制度を公式資料から読み解く
「安楽死制度」と聞くと、皆さんはどのような印象を持つでしょうか。
「本当に厳しく管理されているのだろうか。」
「年々増え続けているのではないか。」
「認知症や精神疾患でも認められていると聞くが、実際はどうなのだろう。」
日本では、オランダの安楽死制度について断片的な情報が紹介されることはあっても、毎年公表される公式年次報告書の内容まで詳しく紹介される機会は多くありません。
そこで今回は、
オランダ地域安楽死審査委員会(RTE)が公表した2025年年次報告書
と、
オランダ王立医師会(KNMG)の統計資料
をもとに、最新の制度運用や統計データを分かりやすく整理します。
件数だけではなく、患者の年齢や疾患、制度運用の実態なども見ながら、
現在のオランダの安楽死制度を客観的に見ていきましょう。
※👉オランダ地域安楽死審査委員会(RTE)の年次報告書は、こちらからダウンロード↓
※👉オランダ王立医師会(KNMG)の統計資料は、こちらからダウンロード↓
👉 世界各国の安楽死制度を知りたい方は、こちらで解説しています↓
🎧音声による動画解説
要約図(自由使用可)

オランダ安楽死制度とは
オランダは、2002年に世界で初めて安楽死を法律で認めた国です。
正式には「要請による生命終結および自殺幇助審査法」に基づき、一定の条件を満たした場合に限って、医師が患者の生命を終わらせる医療行為(安楽死)や、患者自身が薬剤を服用する医師幇助自殺が認められています。
制度の最大の特徴は、「安楽死を認める法律」であると同時に、「医師の行為を厳格に審査する法律」である点です。
実施されたすべての症例は、地域安楽死審査委員会(RTE)へ報告され、法律で定められた要件を満たしていたかが第三者によって審査されます。
つまり、制度は「実施して終わり」ではなく、
事後審査まで含めて運用されていることが大きな特徴です。

👉オランダ安楽死の基本や全体像を知りたい方は、こちらをご覧ください↓
👉 オランダの安楽死の申請から実施までの全プロセスはこちら↓
2025年RTE年次報告書の概要
2025年6月、RTEは最新の年次報告書を公表しました。
今回の報告書では、2025年に実施された安楽死の件数や患者の疾患、年齢構成、審査結果などが詳細にまとめられています。
2025年の安楽死実施件数は10,341件で、前年から3.8%増加しました。
また、安楽死による死亡は、オランダ国内の全死亡者数の約6.0%を占めています。
件数は制度開始以来で最多となりましたが、前年比の増加率は前年(約10%増)よりも緩やかになっており、
制度が急激に拡大しているというよりは、一定の水準で定着している様子がうかがえます。
※👉出典『RTE Annual Report 2025』
2025年オランダ安楽死の主要統計
2025年の主な統計は以下のとおりです。
項目 | 2025年 |
安楽死実施件数 | 10,341件 |
前年比 | +3.8% |
全死亡者に占める割合 | 約6.0% |
平均審査期間 | 37日 |
不適切と判断 | 7件 |
これらの数字からは、オランダでは毎年詳細な統計を公表しながら制度運用を続けていることが分かります。
安楽死件数の推移(2002〜2025)
制度開始当初、安楽死件数は年間2,000件前後でした。
その後、高齢化や制度の定着などを背景に件数は徐々に増加し、2025年には初めて1万件を超えました。
一方で、近年は毎年の増減率に変化があり、2025年は前年ほど急激な伸びではありませんでした。
単純に件数だけを見るのではなく、人口構成や高齢化、医療制度全体との関係も踏まえて理解することが重要です。

全死亡者に占める割合
2025年、オランダでは安楽死による死亡が全死亡者数の約6.0%を占めました。
これは、およそ100人が亡くなるうち6人が安楽死を選択した計算になります。
世界的に見ても高い割合ではありますが、この数字だけで制度の良し悪しを判断することはできません。
制度の背景には、高齢化や医療制度、緩和ケアの充実、患者の自己決定権など、さまざまな要素が関係しています。

※👉出典『KNMG:Euthanasie in cijfers 2025』から当会が作成
👉 安楽死と関係が深い「緩和ケアと安楽死の違い」は、こちらで整理しています↓
👉 混同されやすい、安楽死と尊厳死の違いをを知りたい方は、こちら(延命治療との関係も整理)↓
疾患別内訳
2025年も、安楽死を選択した人の多くは重い身体疾患を抱えていました。
最も多かったのは
がんで、5,355件(約52%)
を占めています。
続いて、神経系疾患、循環器疾患、肺疾患などが多く、身体的な疾患が全体の大半を占めています。
一方で、認知症や精神疾患を理由とする症例も報告されていますが、その割合は身体疾患と比べると限定的です。

※👉出典『RTE Annual Report 2025』より当会が作成
年齢別・男女比
年齢別に見ると、安楽死を選択した人の多くは高齢者でした。
特に70~79歳と80~89歳が最も多く、全体の約4分の3を70歳以上が占めています。
また、60歳以上では全体の約9割を占めています。
一方で、18歳未満は1件のみでした。
また、男女比は男性5,292人、女性5,049人で、ほぼ半数ずつとなっています。
これらの統計からは、オランダの安楽死制度は主として高齢者の終末期医療に関連して利用されている実態が読み取れます。
2025年 オランダ安楽死 年齢別内訳
年齢 | 件数 | 構成比 |
12~17歳 | 1件 | 0.01% |
18~29歳 | 33件 | 0.32% |
30~39歳 | 71件 | 0.69% |
40~49歳 | 160件 | 1.55% |
50~59歳 | 618件 | 5.98% |
60~69歳 | 1,730件 | 16.73% |
70~79歳 | 3,346件 | 32.36% |
80~89歳 | 3,258件 | 31.51% |
90歳以上 | 1,124件 | 10.87% |
合計 | 10,341件 | 100% |
※2025年は18歳未満(12~17歳)の症例は1件で、身体疾患によるものでした。
年齢別の特徴
70~79歳:3,346件(最多)
80~89歳:3,258件
60~69歳:1,730件
つまり、
70歳以上:約74.7%
60歳以上:約91.5%
となり、安楽死の大半は高齢者に対して実施されています。
男女比(2025年)
性別 | 人数 | 構成比 |
男性 | 5,292人 | 約51.2% |
女性 | 5,049人 | 約48.8% |
合計 | 10,341人 | 100% |
男女比はほぼ半々であり、特定の性別に偏った制度ではないことが分かります。

※👉出典『RTE Annual Report 2025』より当会が作成
日本の識者によるオランダ安楽死制度への懸念
日本では、オランダの安楽死制度に対して慎重または批判的な立場をとる識者もいます。
その代表的な一人として、
障害者・介護者の立場から発言を続けている『児玉真美』氏が挙げられます。
児玉氏は、オランダでは安楽死が
・「日常化」し、医療現場でルーティン化していること、
・対象が認知症や精神疾患へと拡大していること、
・緩和ケアより安楽死が選ばれやすくなる危険性
があることを理由にオランダの安楽死制度に批判的です。
著書『安楽死が合法の国で起こっていること』では、
「医療現場でルーティンと化す安楽死」という章を設け、制度運用への懸念を示しているほどです。
児玉真美氏の主張
児玉氏の著書では、主に次のような点が繰り返し論じられています。
安楽死件数は毎年増加している
対象者が終末期から認知症・精神疾患へと広がっている
医療現場で安楽死が「日常化」「ルーティン化」している
手続き要件が徐々に緩和されている
緩和ケアより安楽死が選択されやすくなる危険性がある
※👉対象者の拡大という懸念(滑り坂論)については、こちらで詳しく解説しています↓
「安楽死における滑り坂論とは何か|反対論とその反論を制度と事実から整理」
「医師が慣れてしまう」という懸念
日本の反対派の論考では、
「安楽死が例外ではなく日常診療の一部になる」
「医師が死を提供することに慣れてしまう」
「治療可能性を十分に探らなくなる危険がある」
といった趣旨の懸念が示されることがあります。
児玉氏はこれを「医療現場でルーティンと化す安楽死」という表現で論じています。
※👉反対派の全容については、こちらで詳しく解説しています↓
「安楽死反対は誰を守っているのか──障害者団体・福祉系NPOの論理構造を検証する」
オランダ側の説明と制度上の安全策
一方で、オランダの公的機関であるRTE(地域安楽死審査委員会)やKNMG(オランダ王立医師会)は、制度には複数の安全策が組み込まれていると説明しています。
すべての症例が事後審査を受ける
SCEN医師による独立した第三者評価が行われる
ガイドライン(EuthanasieCode)が毎年更新される
不適切と判断された事例は公表される
2025年報告書でも、10,341件すべてが審査対象となり、法律上の要件を満たさなかったと判断された7件については、その理由が匿名化されたうえで公表されています。


👉より詳しい解説は、こちらをご覧ください↓

👉 世界各国の申請プロセスをまとめて確認する場合はこちら(ハイライト)↓
制度評価をめぐる論点
この問題は、単純な「事実認定」というよりも、制度をどのように評価するかという点に関わっています。
オランダの公的機関は、SCEN医師による独立確認やRTEによる全件審査などを通じて、監督体制は機能していると説明しています。
一方、日本の反対派の一部は、それでもなお「安楽死の社会的な日常化」が進んでいると評価しています。
つまり、同じ統計や制度を見ても、「監督体制が整っている」と見る立場と、「日常化が進んでいる」と見る立場の違いが存在しているのです。
※👉「安楽死に反対する障害者団体の全体像(日本)|DPI・JCIL・当事者運動の構造」
RiP:Dとして考えるべきこと
制度について賛成・反対の立場はさまざまですが、まず重要なのは、
公式な年次報告書や制度資料に基づいて
事実を確認すること
です。そのうえで、件数の増加、認知症症例、精神疾患症例、審査体制、安全策などを総合的に見ながら、社会としてどのような制度設計が望ましいのかを冷静に考えていく必要があるのではないでしょうか。
👉『安楽死が合法の国で起こっていること』を読む前に|児玉真美と“命の選別”思想の背景↓
👉『障害者運動の歴史|2000年代から現在までをわかりやすく解説【後編】│尊厳生・生命倫理・ALSと当事者運動の展開|立岩真也・児玉真美・川口有美子・岡部宏生から見る生命倫理と尊厳生』↓
まとめ|オランダ安楽死制度を理解するために重要なこと
2025年のオランダ地域安楽死審査委員会(RTE)年次報告書からは、制度開始から20年以上が経過した現在の運用実態が、さまざまな統計とともに示されています。
2025年の安楽死実施件数は10,341件となり、初めて年間1万件を超えました。また、安楽死による死亡はオランダ国内の全死亡者数の約6.0%を占めています。
一方で、その内訳を見ると、多くはがんや神経系疾患、循環器疾患、肺疾患などの重い身体疾患を抱えた患者であり、年齢別では約4人に3人が70歳以上、約9割が60歳以上でした。
また、すべての症例はRTEによる事後審査の対象となり、SCEN医師による独立した確認、不適切事例の公表、ガイドラインの継続的な見直しなど、多層的な監督体制のもとで制度が運用されていることも確認できます。
一方で、日本では制度に対して慎重な立場をとる識者もおり、「安楽死の日常化」や「対象拡大」への懸念が示されています。
こうした議論は、単純に「賛成」「反対」と結論づけられるものではありません。
同じ統計や制度を見ても、
「監督体制が機能している制度」と評価する立場
「社会的な日常化が進んでいる」と評価する立場
が存在しており、制度に対する評価は必ずしも一致していません。
だからこそ重要なのは、断片的な情報や印象だけで判断するのではなく、
公式年次報告書や法制度、運用実態といった
一次資料に基づいて事実を確認すること
ではないでしょうか。
👉 安楽死をめぐる賛否の論点を体系的に整理したい方は、こちらをご覧ください↓
制度を導入するかどうかは、それぞれの国の文化や医療制度、価値観、社会保障制度なども含めた幅広い議論が必要です。
しかし、その議論の出発点となるのは、正確な情報を共有することです。
RiP:Dでは今後も、オランダをはじめ、ベルギー、カナダ、スペイン、フランスなど各国の制度や運用実態について、できる限り一次資料に基づいた情報を分かりやすく紹介し、
日本における終末期医療と人道的終末選択のあり方について考える材料を提供していきたいと考えています。
👉 地図で確認する安楽死が合法の国 一覧と各国制度は、こちらで詳しく解説しています↓
👉 日本における安楽死の法律的な扱いについては、こちらで詳しく解説しています↓
👉 日本の安楽死の歴史・事件を知りたい方は、こちらをご覧ください↓
FAQ
Q1 オランダでは安楽死は合法ですか?
A.はい。オランダでは2002年に施行された「要請による生命終結および自殺幇助審査法」に基づき、法律で定められた厳格な要件を満たした場合に限り、安楽死および医師幇助自殺が認められています。
Q2 オランダでは年間何件の安楽死がありますか?
A.2025年は10,341件でした。制度開始以来最多であり、前年から約3.8%増加しました。
Q3 オランダではどのような病気で安楽死が認められていますか?
A.2025年の報告では、最も多いのはがんで約52%を占めています。そのほか神経系疾患、循環器疾患、肺疾患などが多く、認知症や精神疾患による症例もあります。
Q4 オランダでは認知症でも安楽死は認められますか?
A.認知症だけを理由に自動的に認められるわけではありません。法律上の要件を満たす必要があり、事前指示書や意思能力、耐え難い苦痛などが個別に審査されます。
Q5 オランダでは精神疾患でも安楽死は可能ですか?
A.可能な制度はありますが、2025年の報告でも全体から見れば少数です。通常より慎重な審査や複数の専門医による評価が行われます。
👉 安楽死と自殺の違い・関係を整理したい方は、こちらをご覧ください↓
Q6 オランダでは誰が審査するのですか?
A.実施されたすべての症例は地域安楽死審査委員会(RTE)が事後審査します。また実施前にはSCEN医師による独立した第三者評価が行われます。
Q7 日本で安楽死は合法ですか?
A.日本では積極的安楽死を認める法律はありません。延命治療の中止や緩和ケアなどとは法的位置づけが異なります。
出典・参考資料
オランダ政府・公的機関(一次資料)
・オランダ地域安楽死審査委員会(RTE)
Annual Report 2025(2025年 年次報告書)https://www.euthanasiecommissie.nl/documenten/2026/03/26/jaarverslag-2025
・Regional Euthanasia Review Committees(RTE)
・Euthanasia Code 2022(RTEガイドライン)
・オランダ王立医師会(KNMG)
Euthanasie in cijfers 2025 https://www.knmg.nl/
(※「Euthanasie in cijfers 2025」で検索すると最新版が確認できます。)
・オランダ王立医師会(KNMG)
Position PaperThe Role of the Physician in the Voluntary Termination of Life https://www.knmg.nl/
・SCEN(Support and Consultation on Euthanasia in the Netherlands)
オランダ法令
・Termination of Life on Request and Assisted Suicide (Review Procedures) Act
(要請による生命終結および自殺幇助審査法)
国際機関・医学団体
・European Association for Palliative Care(EAPC)
Position Statement on Euthanasia and Physician-Assisted Suicide
・World Health Organization(WHO)
Palliative Care
重要文献
The New England Journal of Medicine(NEJM):オランダの終末期医療・安楽死に関する長期研究
JAMA Psychiatry:精神疾患による安楽死に関する査読論文
European Association for Palliative Care(EAPC):緩和ケアと安楽死に関する公式見解
学術論文
・Kim SYH, De Vries R, Peteet JR.
Euthanasia and Assisted Suicide of Patients With Psychiatric Disorders in the Netherlands 2011–2014
JAMA Psychiatry.
・van der Heide A, van Delden JJM, Onwuteaka-Philipsen BD.
End-of-Life Decisions in the Netherlands over 25 Years
New England Journal of Medicine
・Onwuteaka-Philipsen BD et al.
Trends in End-of-Life Practices before and after the Enactment of the Euthanasia Law in the Netherlands
The Lancet
書籍・現地取材
・シャボット・あかね
『生きるための安楽死』
日本評論社
・三井美奈
『安楽死のできる国』
新潮新書
・児玉真美
『安楽死が合法の国で起こっていること』
晶文社
(制度に批判的立場からの分析)
関連記事(RiP:D)
・オランダ安楽死制度とは|制度の基本と全体像
・オランダ安楽死法ガイド|申請から手続き・保護措置まで全プロセスを徹底解説
・安楽死における滑り坂論とは何か|反対論とその反論を制度と事実から整理
・安楽死反対は誰を守っているのか──障害者団体・福祉系NPOの論理構造を検証する
・安楽死に反対する障害者団体の全体像(日本)|DPI・JCIL・当事者運動の構造
・安楽死と緩和ケアの違い
・安楽死と尊厳死の違い
・世界各国の安楽死制度一覧






















コメント