健康問題による自殺の統計|2007~2024年の原因・動機別データを分析【警察庁・厚労省】

更新日:1 日前
最終更新日:2026年9月17日(随時更新)
※更新履歴:2025年版自殺対策白書の公開状況を確認 |2007~2024年データの統計上の注意点を追記|2022年以降の原因・動機計上方法の変更を明記 |学術論文をPubMed情報に基づき更新
👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
👉 安楽死の定義と分類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓
本記事は、警察庁および厚生労働省が公表する統計データに基づき、健康問題を理由とした自殺者数の推移を整理・分析したものです。
内容は一般的な情報提供を目的としており、医療的判断や個別の助言、また特定の行為を推奨するものではありません。
あくまで公開データの理解を深めるための参考情報としてご活用ください。
【健康問題 自殺の統計】
日本において、自殺の原因として最も多く挙げられているのが
「健康問題」
です。
これは一時的な傾向ではなく、長年にわたり統計上で一貫して確認されてきた事実であり、政策・医療・福祉の分野においても重要な分析対象となります。

本ページでは、警察庁および厚生労働省が公表している公式統計データをもとに、
2007年から2024年までの18年間にわたる「健康問題による自殺者数」の推移を体系的に整理しました。
単なる数値の羅列ではなく、各年度ごとの特徴、長期的な増減傾向、そして年齢別・原因別の構造に着目することで、日本社会における「健康問題と自殺」の関係をより立体的に理解できる構成としています。
特に本データは、終末期医療や緩和ケア、
さらには安楽死制度の議論を検討するうえでも基礎資料となり得るものです。
感情論ではなく、客観的な統計に基づいた議論の出発点として、本ページを活用してください。
※本ページは基礎資料として、今後も最新の公式統計に基づき、データの追加および内容の更新を継続的に行います。
本データは、終末期医療や制度議論を検討する基礎資料としても活用可能です。
👉 関連テーマについては以下の記事をご参照ください。
・安楽死と自殺の関連性とは?身体疾患・精神疾患の統計から検証【日本・海外】
🎧音声による動画解説
要約図(自由使用可)
(健康問題 自殺の統計)

健康問題による自殺の全体像(2007年~2024年:18年間)
(自由使用可)


※調査方法
調査対象
2007年(平成19年)~2024年(令和6年)
主要資料
・警察庁「自殺の状況」
・厚生労働省「自殺対策白書」
・厚生労働省公表資料
・PubMed収載査読論文
分析内容:年次データを整理し、「健康問題」の内訳として公表されている身体疾患、身体障害、精神疾患等について推移を比較した。
日本における自殺の原因構造を長期的に見ると、
「健康問題」は
一貫して最大の割合
を占めてきました。
この傾向は2007年から2024年までの18年間においても大きくは変わっていません。
ここでいう「健康問題」とは、単なる身体疾患だけではなく、うつ病などの精神疾患、慢性的な痛み、生活機能の低下などを含む広義の概念です。
とりわけ統計上は、精神的要因と身体的要因が複合的に絡み合うケースが多い点が特徴です。
長期推移から見える3つの重要な傾向
1.全体としては減少傾向だが、構造は維持されている
2000年代後半、日本の自殺者数は年間3万人を超える高水準にありました。その後、全体の自殺者数は減少傾向に転じます。
しかし注目すべきは、「健康問題が占める割合」は大きく変わっていない点です。
つまり、自殺者総数が減少しても、原因構造そのものは維持され続けているといえます。
2.精神疾患の影響が極めて大きい
健康問題の内訳をみると、最も大きな割合を占めるのは精神疾患、特にうつ病です。
身体疾患が直接の原因となるケースも存在しますが、多くの場合は以下のような複合的要因が確認されています。
・慢性疾患による生活の質の低下
・長期治療による心理的負担
・社会的孤立や就労困難
・将来への不安
このように、「身体の問題」が「心の問題」を誘発し、最終的に自殺に至る構造が典型的です。
3.高齢者層における割合の高さ
年齢別に見ると、健康問題による自殺は特に高齢者層で顕著です。
これは以下の要因が複合的に影響しています。
・慢性疾患やがんの罹患率の上昇
・身体機能の低下
・介護負担や孤立
・配偶者の死別
一方で近年は、若年層においても精神的健康問題の影響が増加しており、
単純に「高齢者の問題」とは言えなくなりつつあります。
時期別に見る変化のポイント
📝 2007年~2015年:高水準からの減少期
この期間は、自殺者数全体が減少に転じた重要なフェーズです。背景には、地域支援体制の強化や精神保健対策の拡充が挙げられます。
一方で、健康問題が原因の中心である構造は変わらず、
「減少しているが問題の本質は継続している」状態でした。
📝 2016年~2019年:安定期と構造固定
この時期は、自殺者数が比較的安定し、緩やかな減少または横ばいが続きました。
特徴的なのは、健康問題の中でも精神疾患の割合がより明確になってきた点です。
統計の精緻化により、原因分類の精度も向上しました。
📝 2020年~2021年:社会的要因との交差
この時期は、新型感染症の拡大により社会環境が大きく変化しました。
健康問題そのものに加え、
・コロナ禍による外出制限による孤立
・医療アクセスの制約
・経済不安
といった要因が重なり、特に女性や若年層での変動が注目されました。
📝 2022年~2024年:回復と新たな課題
最新データでは、自殺者数は一定の落ち着きを見せつつも、完全な改善には至っていません。
健康問題の内訳においては、
・精神的ストレスの長期化
・高齢化の進行
・医療および福祉の地域格差
といった課題が浮き彫りになっています。
健康問題と自殺の関係は「単一原因」ではない
重要なのは、健康問題による自殺が単一の原因で説明できるものではないという点です。
実際には、
・健康問題 × 経済問題
・健康問題 × 家庭問題
・健康問題 × 社会的孤立
といった複合構造の中で発生しています。
このため、統計上「健康問題」と分類されていても、その背後には多層的な要因が存在します。
政策・医療への示唆
この18年間のデータから導かれる最も重要な示唆は、
「医療だけでは自殺は防げない」
という点です。
必要とされるのは、
・精神医療の改革
・地域包括ケアの強化
・孤立防止の社会政策
・終末期医療の質の向上
といった、医療と社会の両面からのアプローチが必要と言われています。
👉 安楽死と関係が深い「緩和ケアと安楽死の違い」は、こちらで整理しています↓
👉 緩和ケアの限界とは?│難治性疼痛・緩和的鎮静と安楽死を考える
まとめ
2007年から2024年までの長期データを通じて明らかになるのは、
健康問題が日本の自殺構造の
中核にあり続けている
という事実です。
総数の増減に目を向けるだけでは不十分であり、その内訳と構造を理解することが不可欠です。
本ページで提示した公式統計は、感情的な議論ではなく、実証に基づいた理解を進めるための基盤となるものです。
今後の政策議論や社会的検討においても、こうした長期データの分析が重要な役割を果たすといえるでしょう。
👉 地図で確認する安楽死が合法の国 一覧と各国の制度↓
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採用した公式の統計データまとめ
※データの解釈に関する留意点
本記事で扱う自殺統計は、警察庁および厚生労働省が公表する公式データに基づいていますが、これらの数値にはいくつかの前提と限界が存在します。
まず、自殺の理由は、遺書の内容や関係者への聞き取りなどをもとに推定されるため、一定の主観性を含みます。必ずしも本人の意思や背景が完全に反映されているとは限りません。
また、実際の自殺には複数の要因が重なっているケースが多いものの、統計上は主たる一因に分類されるため、「健康問題」とされた事例の中にも、経済的要因や家庭問題などが併存している可能性があります。
さらに、年次ごとの比較においては、社会状況や医療環境、報告方法の変化などが影響を与えることがあります。特に近年では、感染症の流行や医療アクセスの変化といった外部要因も無視できません。
これらの点を踏まえ、本記事の分析は「傾向の把握」を目的としたものであり、特定の因果関係を断定するものではありません。データの読み取りにあたっては、こうした前提を考慮することが重要です。
2007年~2015年(平成19年~平成27年)の健康問題による自殺者数の内訳(厚生労働省データ)

👉 2007年〜2015年の日本の自殺者数の推移を原因別・年齢別に分析した統計データ(PDF)
出典URL:h28h-2-2.pdf
※以下は、警察庁Webサイトよりデータを収集
2016年(平成28年)の健康問題による自殺者数の内訳

👉 2016年の日本の自殺者数を原因別・年齢別に分析した公式統計データ(PDF)
2017年(平成29年)の健康問題による自殺者数の内訳

👉 2017年の日本の自殺者数を原因別・年齢別に分析した公式統計データ(PDF)
2018年(平成30年)の健康問題による自殺者数の内訳

👉 2018年の日本の自殺者数を原因別・年齢別に分析した公式統計データ(PDF)
2019年(令和1年)の健康問題による自殺者数の内訳

👉 2019年の日本の自殺者数を原因別・年齢別に分析した公式統計データ(PDF)
2020年(令和2年)の健康問題による自殺者数の内訳

👉 2020年の日本の自殺者数を原因別・年齢別に分析した公式統計データ(PDF)
2021年(令和3年)の健康問題による自殺者数の内訳

👉 2021年の日本の自殺者数を原因別・年齢別に分析した公式統計データ(PDF)
※以下、厚生労働省のサイトよりデータを収集
2022年(令和4年)の健康問題による自殺者数の内訳

出典:↓
2023年(令和5年)の健康問題による自殺者数の内訳

出典:↓
2024年(令和6年)の健康問題による自殺者数の内訳

出典:↓
👉 安楽死をめぐる賛否の論点を体系的に整理したい方は、こちらをご覧ください↓
👉 日本の安楽死の歴史・事件を知りたい方は、こちらをご覧ください↓
この統計を読む際に重要な注意点
本記事でいう「健康問題」は、警察庁の自殺統計において「原因・動機」として計上された項目です。
ここで注意が必要なのは、「健康問題12,029件」という数字が、「健康問題だけを原因として自殺した12,029人」を意味するわけではないという点です。
自殺に至る背景には複数の要因が存在する場合があり、警察庁の統計では一人の自殺者について複数の原因・動機が計上されることがあります。
また、令和4年(2022年)以降は、原因・動機の計上方法が変更され、遺書等だけでなく家族等の証言から原因・動機を把握する場合も含まれるようになり、1人につき最大4つまで計上される方式となっています。
そのため、特に2021年以前と2022年以降の数値を単純に連続した時系列として比較する際には注意が必要です。
したがって、本記事では「健康問題による自殺者数」という一般的な表現を用いる場合でも、厳密には「健康問題が原因・動機として計上された件数」を意味するものとして扱います。
さらに、警察統計上「健康問題」が計上されていることと、医学的に特定の疾患が自殺の直接的な原因であったことは同義ではありません。
本記事の統計は、健康問題と自殺との間に存在する可能性のある社会的・医学的背景を検討するための基礎資料であり、個々の自殺について因果関係を証明するものではありません。
直近のデータ
年 | 自殺者総数 | 健康問題 | 経済・生活 | 家庭 | 備考 |
2019 | ― | 9,861 | ― | 3,039 | 旧計上方式 |
2020 | ― | 10,195 | ― | 3,128 | 旧計上方式 |
2021 | ― | 9,860 | ― | 3,200 | 旧計上方式 |
2022 | ― | 12,774 | ― | 4,775 | 方式変更 |
2023 | ― | 12,403 | ― | 5,181 | 新方式 |
2024 | 20,320 | 12,029 | 5,092 | 4,297 | 新方式 |
※2022年から計上方法変更↓
期間 | 原因・動機の計上 |
2007~2021年 | 最大3つ |
2022~2024年 | 最大4つ |
注意 | 年次の単純比較には制約あり |
「健康問題=身体疾患ではない」
健康問題
│
├── 精神疾患
│ ├── うつ病
│ ├── 統合失調症
│ └── その他
│
├── 身体疾患
│ ├── がん
│ ├── 慢性疾患
│ └── その他
│
├── 身体障害
│
└── その他
※健康問題 12,029件 ≠ 身体疾患による自殺12,029人
「統計→医学研究→制度論」の3段階図
① 公的統計
健康問題が原因・動機として多数計上
↓
② 医学研究
身体的疼痛・慢性疾患と
自殺関連行動との関連を研究
↓
③ 制度論
終末期医療・緩和ケア・
自己決定・人道的終末選択を検討
※①から③へ直接ジャンプしない
本統計は安楽死制度の必要性を直接証明するものではありません。
一方で、現在の日本において、身体疾患や身体障害、慢性的な苦痛を背景とする自殺が
統計上継続的に確認されていることは、終末期・慢性疾患患者の苦痛と自己決定について検討する際の重要な基礎資料となります。
FAQ(よくある質問)
Q1.日本では自殺の原因・動機として何が最も多く計上されていますか?
A. 警察庁の自殺統計を基にした厚生労働省の資料では、令和6年(2024年)は「健康問題」が12,029件で、原因・動機の項目として最も多く計上されています。
ただし、この数字は「健康問題だけを原因として自殺した12,029人」を意味するものではありません。1人について複数の原因・動機が計上される場合があるため、本記事では原則として「件数」として扱っています。
Q2.「健康問題」には何が含まれますか?
A. 健康問題には、うつ病や統合失調症などの精神疾患、身体疾患、身体障害に関する悩みなど、複数の項目が含まれます。
そのため、「健康問題」という統計項目を、そのまま「身体疾患による自殺」と読み替えることはできません。
Q3.健康問題による自殺は増えているのですか?
A. 自殺者総数と、原因・動機として計上された健康問題の件数は分けて考える必要があります。
また、令和4年(2022年)以降は原因・動機の計上方法が変更されているため、2007年から2024年までの数値を単純に連続した時系列として比較することには注意が必要です。
Q4.一人の自殺者について複数の原因が計上されることはありますか?
A. あります。
警察庁の自殺統計では、確認できる資料に基づいて複数の原因・動機が計上される場合があります。そのため、「健康問題12,029件」を「健康問題によって亡くなった12,029人」と解釈することはできません。
Q5.身体疾患による苦痛と自殺には医学的な関連がありますか?
A. 身体的疼痛や慢性疼痛と自殺関連行動との関連を示す研究があります。
一方で、自殺は単一の原因で説明できるものではなく、抑うつ、社会的孤立、生活上の問題、医療へのアクセスなど複数の要因が関係します。
したがって、「身体疾患があるから自殺する」という単純な因果関係を示す統計ではありません。
Q6.安楽死と自殺は同じものですか?
A. 同じものとして扱うことはできません。
安楽死や医師幇助自殺は、一定の法的・医学的要件の下で行われる行為として制度化されている国があります。一方、自殺は通常、そのような制度的枠組みの外で発生する自死を指します。
ただし、安楽死・医師幇助自殺と自殺との関係については研究上も議論が続いており、両者の関係を完全に切り離して考えられるかについては慎重な検討が必要です。
Q7.緩和ケアを否定するために、この統計を紹介しているのですか?
A. いいえ。
緩和ケアは、生命を脅かす病気に直面する患者と家族の苦痛を軽減し、生活の質を高める重要な医療・ケアです。
本記事で身体疾患や苦痛と自殺との関連を取り上げる目的は、緩和ケアの価値を否定することではありません。
むしろ、緩和ケアによって多くの苦痛が軽減される一方で、身体的・心理的・社会的な苦痛が複雑に残る場合があることを踏まえ、終末期の選択肢について考えるための基礎資料として統計を整理しています。
Q8.安楽死制度を導入すると自殺は減るのでしょうか?
A. 現在の研究から、単純に「安楽死制度を導入すれば自殺が減る」と結論づけることはできません。
安楽死・医師幇助自殺と非幇助自殺の関連を調べた研究では、異なる結果が報告されています。制度導入による影響については、対象国、制度、統計方法、社会的背景などを考慮した検討が必要です。
本記事では、制度導入による自殺への影響について、肯定的・否定的・慎重な研究を可能な限り併記します。
Q9.このページは安楽死制度の導入を主張するページですか?
A. 本ページは、警察庁・厚生労働省の公的統計を整理し、健康問題と自殺の関係を理解することを目的とした資料です。
RiP:Dは安楽死制度の法制化を支持する立場を示していますが、統計そのものとRiPの政策的見解は区別して記載しています。
Q10.この統計だけで安楽死制度の必要性を証明できますか?
A. できません。
自殺統計は、健康問題が自殺の原因・動機としてどの程度計上されているかを示す資料であり、安楽死制度の必要性を直接証明するものではありません。
制度の必要性を検討するためには、終末期医療、緩和ケア、自己決定権、海外制度、安全性、濫用防止、障害者権利、精神医学など、複数の観点から検討する必要があります。
本記事で確認した統計は、それだけで安楽死制度の必要性を証明するものではありません。
しかし、健康問題、とりわけ身体疾患や身体障害に関する悩みが、自殺の原因・動機として継続的に計上されていることは、終末期医療や慢性疾患患者の苦痛、自己決定のあり方を考えるうえで無視できない論点です。
では、現在の日本の法制度は、こうした苦痛に対してどのような選択肢を提供しているのでしょうか。
RiP:Dでは、公的統計、国内外の法制度、医学研究、緩和ケア、安全性・濫用防止策などを踏まえ、日本における人道的終末選択の制度整備について提言をまとめています。
嘆願書送付アクション
本サイトでは、各国制度、安全性・濫用防止、緩和ケア、身体疾患による苦痛と自殺などについて、国会提出用の補足資料も公開しています。
書類 一覧
・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』
・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白
・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル
・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策
・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題
・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態
・カバーレター:ご挨拶(1ページ)
・要約文(2ページ)
👉 世界各国の申請プロセスをまとめて確認する場合はこちら(ハイライト)↓
参考文献・研究資料
本ページでは、健康問題・身体的疼痛と自殺関連行動との関係、および安楽死・医師幇助自殺と自殺との関係について、査読付き学術論文・系統的レビューを参照しています。
以下では、読者が原論文を確認できるよう、著者名・論文タイトル・雑誌名・発行年・巻号・ページ(または記事番号)・DOI・PubMed IDを記載しています。
1.身体的疼痛と自殺関連行動
Calati R, Laglaoui Bakhiyi C, Artero S, Ilgen M, Courtet P. The impact of physical pain on suicidal thoughts and behaviors: Meta-analyses.Journal of Psychiatric Research. 2015;71:16–32.DOI: 10.1016/j.jpsychires.2015.09.004PMID: 26522868
概要:身体的疼痛と自殺念慮、自殺計画、自殺企図、自殺死亡などとの関連を検討したメタ解析です。31研究を対象とし、身体的疼痛を有する人では複数の自殺関連アウトカムが高い傾向を示しました。一方、研究間の異質性が高く、主要なアウトカムでは出版バイアスも確認されているため、単純な因果関係を示す研究ではありません。
本ページとの関係:身体的疼痛・身体的苦痛と自殺関連行動との関連について、複数研究を統合した根拠として参照しています。
2.慢性疼痛と自殺リスク
Racine M.Chronic pain and suicide risk: A comprehensive review. Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry. 2018;87(Pt B):269–280.DOI: 10.1016/j.pnpbp.2017.08.020PMID: 28847525
概要:慢性疼痛と自殺関連行動との関係を包括的に検討したレビューです。慢性疼痛そのものに加え、抑うつ症状、怒り、物質使用、過去の逆境、家族歴、睡眠問題、心理的苦痛、社会的要因など、複数の要因が自殺リスクに関係することを整理しています。
本ページとの関係:「身体疾患・身体的苦痛と自殺との関係は、単一の原因ではなく複数の心理・社会的要因が関係する」という説明の根拠として参照しています。
3.身体的疼痛に関する新しいメタ解析
Torino G, Rignanese M, Salmè E, Madeddu F, Courtet P, Forget J, Attali D, Kalisch L, Baeza-Velasco C, Lopez-Castroman J, Fornaro M, Calati R.Physical pain and suicide-related outcomes across the lifespan: systematic review and meta-analysis.Psychiatry Research. 2025;345:116371.DOI: 10.1016/j.psychres.2025.116371PMID: 39889568
概要:身体的疼痛と自殺関連アウトカムについて、91研究をレビューし、そのうち88研究をメタ解析した比較的新しい研究です。身体的疼痛を有する人では、自殺念慮、自殺企図、自殺死亡など複数のアウトカムとの関連が確認されました。一方で、研究間の異質性などの限界も報告されています。
本ページとの関係:身体的疼痛と自殺関連行動について、2015年のメタ解析以降の研究状況を補足する比較的新しい総説として参照しています。
4.がん患者の疼痛と自殺
Simonetti A, Tripaldella D, Bardi F, Pinto M, Caso R, Stella G, Monacelli L, Camardese G, D'Onofrio AM, Montanari S, Janiri D, Sani G.Pain and Suicide Behavior in Cancer Patients: Implications for Personalized Treatment—A Systematic Review. Journal of Personalized Medicine. 2026;16(1):42.DOI: 10.3390/jpm16010042PMID: 41590535
概要:がん患者における疼痛と自殺関連行動との関係を検討した2026年の系統的レビューです。832件の文献から15研究を対象とし、疼痛と自殺念慮との関連について検討しています。また、抑うつ症状、進行した病期、心理的支援へのアクセスなどが関連する可能性を指摘しています。
本ページとの関係:終末期・重篤な身体疾患に伴う疼痛と自殺関連行動を考える際の、最新の医学的研究の一つとして参照しています。
安楽死・医師幇助自殺と自殺との関係
5.安楽死・医師幇助自殺と一般的な自殺との関係
Doherty AM, Axe CJ, Jones DA. Investigating the relationship between euthanasia and/or assisted suicide and rates of non-assisted suicide: systematic review. BJPsych Open. 2022;8(4).DOI: 10.1192/bjo.2022.71PMID: 35656575
概要:安楽死・医師幇助自殺(EAS)の導入と、非幇助自殺および自己開始による死亡との関連を検討した系統的レビューです。対象となった6研究について検討した結果、EASの導入によって非幇助自殺が減少するという仮説を支持する結果は得られなかったとしています。一方、社会人口学的要因を調整すると、非幇助自殺の増加は多くの場合で統計的に有意ではありませんでした。
本ページとの関係:「安楽死制度が自殺率にどのような影響を与えるのか」という論点について、慎重な立場から検討した系統的レビューとして参照しています。
6.米国におけるMAID合法化と自殺率
Sutton OP, Kious BM. Associations Between the Legalization and Implementation of Medical Aid in Dying and Suicide Rates in the United States. AJOB Empirical Bioethics. 2025;16(2):85–93.DOI: 10.1080/23294515.2024.2433474PMID: 39652678
概要:1995~2021年の米国州別の自殺死亡データを用い、MAID(Medical Aid in Dying)の合法化・実施と自殺率との関連を分析した研究です。社会人口学的要因などを調整した分析では、MAID合法化・実施後の自殺率との有意な関連は確認されなかったと報告しています。一方、著者ら自身が、先行研究には自殺率との正の関連を報告した研究もあることを指摘しており、研究結果が一様ではない点にも注意が必要です。
本ページとの関係:安楽死・MAIDと自殺率との関係について、反対方向の研究結果も存在することを示す資料として参照しています。
7.安楽死・医師幇助自殺と「自殺」の概念
Gerson SM, Bingley A, Preston N, Grinyer A. When is hastened death considered suicide? A systematically conducted literature review about palliative care professionals' experiences where assisted dying is legal.BMC Palliative Care. 2019;18(1):75.DOI: 10.1186/s12904-019-0451-4PMID: 31472690
概要:assisted dyingが合法化されている地域における、緩和ケア専門職の経験を扱った系統的レビューです。1,518件の文献をスクリーニングし、30研究をレビュー対象としています。合法的なassisted dyingと、制度外で行われる自殺・死を早める行為との関係について、既存研究には限界があり、さらなる研究が必要であることを示しています。
本ページとの関係:「安楽死・医師幇助自殺と一般的な自殺をどのように区別するのか」という概念的・制度的論点を考える際の資料として参照しています。
緩和ケア・医療倫理から見た制度論
8.緩和ケアの立場からの制度論
Radbruch L, Leget C, Bahr P, Müller-Busch C, Ellershaw J, de Conno F, Vanden Berghe P; Board Members of the European Association for Palliative Care. Euthanasia and physician-assisted suicide: A white paper from the European Association for Palliative Care. Palliative Medicine. 2016;30(2):104–116.DOI: 10.1177/0269216315616524PMID: 26586603
概要:European Association for Palliative Care(EAPC)の緩和ケアの立場から、安楽死・医師幇助自殺について倫理的・医学的論点を整理した公式白書です。緩和ケアの理念、安楽死・医師幇助自殺、患者・医療組織に関する問題などを扱い、倫理的枠組みと既存研究を整理しています。なお、EAPC内部でもすべての倫理的立場について完全な合意が可能とは限らないことが示されています。
本ページとの関係:安楽死制度を検討する際に、緩和ケアの立場から提示されている倫理的・医学的論点を確認するための資料として参照しています。
参考文献を読む際の注意
本ページでは、これらの研究を「安楽死制度の必要性を直接証明する資料」として扱っているわけではありません。
身体的疼痛と自殺関連行動との関連を示す研究が存在する一方、自殺は身体的疾患や疼痛だけで説明できるものではなく、精神的・心理的・社会的要因などが複合的に関係する現象です。
また、安楽死・医師幇助自殺と一般的な自殺との関係についても、研究結果は一様ではありません。
そのため、本ページでは、公的統計、医学研究、系統的レビュー、制度・倫理に関する研究を区別し、それぞれが何を明らかにしているのかを分けて紹介しています。
読者の方には、可能な限り上記のPubMedおよびDOIから原論文をご確認いただくことを推奨します。
調査方法・情報源
本記事では、安楽死・医師幇助自殺等の法制度について、各国政府・議会・裁判所・制度運営機関などの公的資料を優先して確認しています。
制度の「合法/違法」や対象範囲については、報道記事や民間団体の一覧だけに依存せず、可能な限り法律・政府資料・公式統計等の一次資料を確認しています。
また、医学的知見や自殺との関連については、PubMed収載の査読付き論文、系統的レビュー、メタ分析等を参照しています。
国によって「安楽死」「医師幇助自殺」「MAiD」などの法律上の定義が異なるため、本記事では各国の制度上の用語・定義を確認したうえで整理しています。
統計については、統計年度・対象範囲・集計方法・制度上の定義の違いにも留意しています。
本記事では、公的資料・研究結果・RiPによる分析・見解を可能な限り区別し、制度の利点だけでなく、慎重論や制度上の課題についても併記することを基本としています。















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