安楽死とは何か│定義・3分類(積極的・消極的・間接的)の違い│世界の制度をわかりやすくチェック

更新日:6 日前
最終更新日:2026年8月21日(随時更新)
※確認した情報
定義の補足|図表の挿入|PubMed収載論文
👉安楽死の基本的な定義や全体像については、こちらで体系的に整理しています。
安楽死とは 、苦痛から解放するために死期を早める医療行為です。
安楽死には「積極的」「消極的」「間接的」の3つの種類があり、それぞれ意味や扱いが大きく異なります。
特に「どこまでが許されるのか」は法律や倫理とも深く関わる重要なポイントです。
「違いがよくわからない」「どう区別すればいいのか知りたい」と感じている方も多いでしょう。
本記事では、それぞれの特徴や違いを具体例を交えながらわかりやすく解説します。
※本記事は、安楽死に関する基本的な理解を深めるため、定義・種類・法律・世界の制度・終末期医療との関係・賛否の論点を、一次資料や学術研究などをもとに整理しています。
なお、当会は安楽死制度の法制化を支持する立場にあります。一方で、本記事では制度の安全性や課題、反対・慎重論についても取り上げ、読者が多角的に理解できるよう情報を整理しています。
👉 世界各国の安楽死制度を知りたい方は、はこちらで解説しています↓
安楽死とは何か(定義と分類)
(安楽死 定義 分類)

安楽死の厳密な定義とは、耐え難い苦痛や壮絶な不快感を抱える患者の
死期を早める行為の「総称」
もしくは
結果的に死期が早まる行為の「総称」となります。
安楽死の3つの分類(積極的・消極的・間接的)
・積極的安楽死とは
📝1.医師が薬物投与などにより意図的に死に関与する行為。
📝2.または医師が致死性薬剤などを提供し、患者本人が使用する(自殺幇助)。
👉 積極的安楽死の仕組みや制度の違いは、こちらで詳しく解説しています
⇩
・消極的安楽死(尊厳死)とは
📝延命治療を中止・差し控えることで自然な死を迎えさせる行為。
いちおう死を導くという行為、ニュアンスがあるので【消極的】という言葉が冠されます。
👉 尊厳死や延命治療中止については、こちらで詳しく解説しています
⇩
※👉混同されやすい、安楽死と尊厳死の違いを知りたい方は、こちら(命治療との関係も整理)↓
・間接的安楽死(鎮静)とは
📝苦痛緩和を目的とした治療の結果として、死期が早まる可能性がある行為。
持続的な深い鎮静は【(事実上)死を前提としながらも】痛みの緩和を目的とする医療行為です。
別名、ソフトな安楽死、スローな安楽死とも呼ばれます。
様々な課題を抱えていますが、日本では通常の医療行為として認められています。
👉 持続的深い鎮静の実態と問題点は、こちらで詳しく解説しています
⇩
※👉 安楽死と緩和ケアの違いについて詳しくはこちら
日本にて“安楽死”という言葉を指す場合は、上記3つに分類されます。
図をイメージして上記の記事をご覧いただければ、だいたいの安楽死談義には付いて行けると思います。
分類 | 内容 | 日本での扱い |
積極的安楽死 | 医師が致死薬投与 または 患者本人が自己投与 | 違法とされる |
消極的安楽死 | 延命治療中止 | 一部容認 |
間接的安楽死 | 鎮静 | 実務上行われる |
【注意点】
本記事では、安楽死を理解するために、まず「安楽死の3分類」という日本語圏で用いられる整理方法を示したうえで、
さらに、『国際的な』終末期医療・生命倫理の議論で区別されている
『4つの関連概念』についても整理しておきます。
特にEAPC(欧州緩和ケア協会)の白書では、
・euthanasia(安楽死)
・physician-assisted suicide(医師幇助自殺)
・withholding/withdrawing treatment(治療の差し控え・中止)
・palliative sedation(緩和的鎮静)
が、それぞれ異なる概念として定義・論じられています。
✅世界では尊厳死(消極的安楽死)の実施が、日本と違って“当たり前”に行なわれている現在、わざわざ消極的(passive)安楽死という表現は、海外の臨床上では使用されません。
いわゆる“延命治療”という風習も虐待とみなされているため、単に「治療の差し控え・中止」と表現されています。
したがって、本記事では「安楽死の3分類」という説明方法を用いつつ、
安楽死そのものと、それを理解するうえで重要な関連概念を区別して整理しています。
「3分類」=記事独自・日本語圏向けの説明枠
↓
「4つの関連概念」=国際的な議論に合わせた用語整理
なお、これらの分類や用語の意味は、すべての国の法律・医学・生命倫理学で完全に統一されているわけではありません。
単純に整理の仕方が変わったなので、大枠の体系は同じものですが、国や制度によって定義・法的評価が異なるため、制度比較では個別の定義を確認する必要があります。
安楽死をめぐる終末期の4つの医療行為
行為・概念 | 誰が行うか | 何をするか | 死をもたらすことが目的か | 安楽死との関係 |
積極的安楽死 | 医師など | 患者の自発的な要請に基づき、薬物を投与するなどして死をもたらす | はい | 安楽死そのもの |
医師幇助自殺 | 最終的には患者本人 | 医師が致死性薬剤などを提供し、患者本人が使用する | はい | 安楽死とは区別される |
治療の差し控え・中止 | 医療者 | 生命維持治療を開始しない、または中止する | いいえ | 通常、安楽死とは区別される |
緩和的鎮静 | 医療者 | 苦痛を緩和するため、薬剤で意識水準を低下させる | いいえ | 安楽死とは医学的・倫理的に区別される |
・3分類から観察される世界的な現状
👉安楽死の3分類からみる世界と日本の現状比較、考察
⇩
※一般に「安楽死」という言葉は一つの行為(積極的安楽死)のように扱われますが、
実際の医療・法制度では明確に区別、分類されており、この違いを理解しないと議論が混乱します。
さらに理解を深めたい方へ
👉 日本における安楽死の法的扱いについては、こちらで詳しく解説しています↓
👉 安楽死とは何かを整理したい方は、こちらで全体像を確認できます↓
👉 日本の安楽死の歴史・事件を知りたい方は、こちらをご覧ください↓
👉 世界の安楽死制度の成立経緯を年代順で知りたい方は、こちら↓
👉 地図で確認する安楽死が合法の国 一覧と各国制度は、こちらで詳しく解説しています↓
図①「安楽死を理解する4分岐」
人生の最終段階
│
├─ 医師が薬剤を投与して死をもたらす
│ ↓
│ 安楽死(積極的安楽死)
│
├─ 医師が薬剤を提供し本人が服用
│ ↓
│ 医師幇助自殺(自殺幇助)
│
├─ 延命治療を差し控える・中止する
│ ↓
│ 治療の差し控え・中止(尊厳死・消極的安楽死)
│
└─ 苦痛緩和のため意識を低下させる
↓
緩和的鎮静(間接的安楽死)
図② EAPC(欧州緩和ケア協会)の定義をベースにした表
項目 | 死をもたらす行為 | 最終行為者 | 主目的 | 安楽死との関係 |
安楽死 | 医師等が死をもたらす | 医師等 | 死をもたらす | 安楽死 |
医師幇助自殺 | 本人が実行 | 本人 | 死をもたらす | 別概念 |
治療中止・差し控え | 基礎疾患が進行 | ― | 不要・過剰な治療を行わない | 通常区別 |
緩和的鎮静 | 死を目的としない | 医療者 | 苦痛緩和 | 通常区別 |
FAQ
Q. 安楽死と尊厳死は同じですか?
A. 同じではありません。一般に安楽死は、医師などが患者の要請に基づいて意図的に死をもたらす行為を指します。一方、尊厳死は、延命治療の差し控え・中止などによって、過剰な医療介入を避け、自然な経過で死を迎えるという考え方として用いられます。ただし、「尊厳死」「消極的安楽死」などの用語は文献や国によって意味が異なるため、具体的な行為を区別して考える必要があります。
Q. 安楽死と医師幇助自殺は同じですか?
A. 同じではありません。安楽死では、医師などが薬剤を投与するなどして死をもたらします。一方、医師幇助自殺では、医師が薬剤等を提供し、最終的な服用などの行為を本人が行います。両者は制度によって法的な扱いが異なります。
Q. 緩和ケアは安楽死を否定するものですか?
A. いいえ。緩和ケアは、生命を脅かす病気に直面する患者と家族の苦痛を軽減し、生活の質を高めることを目的とする医療・ケアです。安楽死制度をめぐる議論では、「緩和ケアを十分に利用できること」と「それでも解消できない苦痛にどのように対応するか」を分けて考える必要があります。
Q. 緩和的鎮静は安楽死ですか?
A. 通常は別の医療行為として扱われます。緩和的鎮静は、他の方法では十分に緩和できない苦痛を軽減することを目的として意識水準を低下させる医療行為です。死をもたらすこと自体を目的とする安楽死とは、目的や意図が異なります。ただし、持続的・深い鎮静については倫理的な議論も存在します。
Q. 安楽死制度にはどのようなリスクがありますか?
A. 主な論点として、本人の意思が本当に自由なものか、家族や社会からの圧力が存在しないか、障害や高齢、貧困、介護負担などが意思決定に影響しないか、意思能力を適切に評価できるか、医師の判断にばらつきが生じないか、制度の対象範囲が将来的に拡大する可能性をどう考えるか、といった問題があります。したがって、制度化を検討する場合には、適格基準だけでなく、複数の医師による評価、独立した審査、記録・報告制度、監視機関などを含めた制度設計が重要になります。
Q. 安楽死に反対する人は、どのような理由を挙げていますか?
A. 生命を意図的に終わらせることへの倫理的懸念、医療者の役割の変化、本人の意思決定に対する社会的圧力の可能性、障害者・高齢者など脆弱な立場の人への影響、制度の対象範囲が拡大する可能性、誤診や意思能力評価の限界などが主な論点です。一方、安楽死を支持する側からは、自己決定、耐え難い苦痛からの解放、尊厳などが重要な理由として挙げられています。
👉 安楽死をめぐる賛否の論点を体系的に整理したい方は、こちらをご覧ください↓
Q. 海外では安楽死制度について反対意見は存在しますか?
A. 存在します。安楽死を合法化した国でも、対象疾患、意思能力、精神疾患、障害、未成年者、社会的圧力、緩和ケアとの関係などをめぐって継続的な議論があります。そのため、海外制度を紹介する際には、制度の成立だけでなく、制度導入後に生じた議論や批判も確認する必要があります。
Q. 安楽死と自殺は同じですか?
A. 同一の概念ではありません。安楽死は、一定の医学的・法的条件のもとで医療者が関与する行為として議論されます。一方、自殺は本人が自らの生命を絶つ行為です。ただし、自己決定、苦痛、意思能力など共通する論点もあるため、両者の関係については倫理学・法学・公衆衛生の分野で議論されています。
※👉 安楽死と自殺の違いについて詳しくはこちら
Q. 日本では安楽死は合法ですか?
A. 日本には、積極的安楽死を一般的に合法化する法律は現在ありません。本人の嘱託・承諾を受けて人を死亡させる行為については刑法202条の同意殺人等が問題となり得ます。具体的な事案では行為の態様によって刑法199条などが問題となる場合もあります。
Q. 安楽死を合法化すべきかどうかについて、科学的に結論は出ていますか?
A. 科学だけで一つの結論が決まっているわけではありません。医学研究によって制度の実態、患者の意思決定、緩和ケアとの関係などを検討することはできますが、「安楽死を合法化すべきか」という最終的な判断には、法律、倫理、社会制度、価値判断も関係します。そのため、賛成・反対双方の研究と公的資料を確認することが重要です。
嘆願書送付アクション
本サイトでは、各国制度、安全性・濫用防止、緩和ケア、身体疾患による苦痛と自殺などについて、国会提出用の補足資料も公開しています。
書類 一覧
・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』
・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白
・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル
・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策
・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題
・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態
・カバーレター:ご挨拶(1ページ)
・要約文(2ページ)
参考文献・主要資料
本記事では、安楽死・医師幇助自殺・治療の差し控え・緩和的鎮静などの概念を区別するため、国際的な生命倫理・緩和ケアの文献および公的資料を参照しています。
1.安楽死・医師幇助自殺の定義
・Radbruch L, Leget C, Bahr P, et al.Euthanasia and physician-assisted suicide: A white paper from the European Association for Palliative Care.Palliative Medicine. 2016;30(2):104-116.DOI: 10.1177/0269216315616524
安楽死、医師幇助自殺、治療の差し控え・中止、緩和的鎮静などを区別して定義する、欧州緩和ケア協会(EAPC)の重要なポジションペーパーです。
・Downie J, et al.Assistance in dying: A comparative look at legal definitions.Death Studies. 2022;46(7):1547-1556.DOI: 10.1080/07481187.2021.1926631.PMID: 34048332
各国で使われる「安楽死」「医師幇助自殺」「medical assistance in dying」などの用語を比較し、概念上の混乱を避けるための定義整理を行っています。
2.緩和的鎮静と安楽死の違い
・Morita T, Hirai K, Akechi T, Uchitomi Y.Similarity and difference among standard medical care, palliative sedation therapy, and euthanasia: a multidimensional scaling analysis on physicians' and the general population's opinions.Journal of Pain and Symptom Management. 2003;25(4):357-362.DOI: 10.1016/S0885-3924(02)00684-X.PMID: 12691687
日本の医師と一般人を対象に、標準的医療、緩和的鎮静、医師幇助自殺・安楽死がどのように認識されているかを検討した研究です。
・Morita T, et al.Definition of sedation for symptom relief: a systematic literature review and a proposal of operational criteria.Journal of Pain and Symptom Management. 2002.PMID: 12505214
緩和的鎮静について、難治性の苦痛を軽減する目的で意識水準を低下させる医療行為として定義するための基礎となるレビューです。
3.安楽死制度に対する慎重論・倫理的論点
・Gillett G.Euthanasia, letting die and the pause.Journal of Medical Ethics. 1988;14(2):61-68.DOI: 10.1136/jme.14.2.61.PMID: 3392719
安楽死と「死なせること」の倫理的区別、医師の役割、生命の価値などについて慎重な立場から検討しています。
・Campbell CS.'Aid-in-dying' and the taking of human life.Journal of Medical Ethics. 1992;18(3):128-134.DOI: 10.1136/jme.18.3.128.PMID: 1404279
安楽死・死の援助をめぐる自己決定と生命保護の緊張関係について倫理的に論じた研究です。
4.精神疾患と安楽死
・Calati R, Olié E, Dassa D, et al.Euthanasia and assisted suicide in psychiatric patients: A systematic review of the literature.Journal of Psychiatric Research. 2021;135:153-173.DOI: 10.1016/j.jpsychires.2020.12.006.PMID: 33486164
精神疾患を理由とする安楽死・自殺幇助について、合法地域の研究を体系的にレビューしています。制度の対象範囲、意思能力、倫理的問題を考える際の重要な資料です。
5.安楽死制度と緩和ケア
Gerson SM, et al.The Relationship of Palliative Care With Assisted Dying Where Assisted Dying is Lawful: A Systematic Scoping Review of the Literature.Journal of Pain and Symptom Management. 2020.DOI: 10.1016/j.jpainsymman.2019.12.361.PMID: 31881289
安楽死・assisted dyingが合法化されている地域において、緩和ケアとの関係を検討した文献を体系的に整理しています。
公的資料
厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」
人生の最終段階における治療・ケアの意思決定について、日本政府が示している基本的な考え方を確認できます。
・e-Gov法令検索「刑法」
日本における殺人罪、同意殺人・自殺関与罪などの現行法令を確認できます。
※本記事では、安楽死制度を支持する研究・資料だけでなく、反対・慎重論や制度上のリスクを指摘する研究も参照しています。医学的事実、法律上の現状、各国制度の説明と、RiPとしての政策的立場は可能な限り区別して記載しています。
本文中の出典対応表
本文の主張 | 推奨根拠 |
安楽死の定義 | EAPC |
PASとの違い | EAPC / Downie |
治療中止との違い | EAPC / IAHPC |
緩和的鎮静 | PubMedレビュー |
日本の刑法 | e-Gov |
日本の終末期医療 | 厚労省 |
世界の制度 | 各国政府 |
制度のリスク | PubMed / 倫理学研究 |
精神疾患 | Calati et al. |
緩和ケアとの関係 | Gerson et al. |
本記事の情報源・調査方法
本記事では、安楽死・医師幇助自殺・尊厳死・緩和ケアなどについて、一般向けの理解を目的として整理しています。
情報の確認にあたっては、可能な限り以下の資料を優先しています。
日本の法律・判例・国会資料
厚生労働省など日本の公的機関資料
WHOなど国際機関の資料
各国政府・公的機関が公表する法令・統計・年次報告書
PubMedで確認できる査読付き医学・生命倫理学論文
DOI等によって論文を特定できる学術資料
国際的な緩和ケア・生命倫理学団体の公式文書
また、安楽死制度を支持する研究・資料だけでなく、制度に反対または慎重な立場を示す研究、倫理的・社会的リスクを指摘する研究についても、可能な限り確認しています。
本記事は、安楽死制度の法制化をめぐる議論について、特定の見解を唯一の正解として提示することを目的としたものではありません。
RiPとしての制度化に関する見解と、医学・法律・生命倫理学上の客観的事実については、可能な限り区別して記載しています。
なお、法律・制度・統計等は変更される可能性があるため、記事には更新日を明記し、重要な情報については原資料へのリンクを掲載しています。















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