オーストラリアの安楽死(VAD)制度とは?ビクトリア州の申請条件・手続き・保護措置を解説【2026年最新】

更新日:9月11日
最終更新日:2026年9月11日(随時更新)
※更新履歴:補足事項の追加|図表の追加|論文の追加
👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
👉 安楽死の定義と分類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓
【2026年9月時点の重要な注意】
ビクトリア州では、Voluntary Assisted Dying Act 2017の改正法が2025年11月に成立しています。
改正内容の施行日は2027年4月19日とされており、それまでは現在の制度が適用されます。
本記事では、2026年9月時点で施行されている制度を中心に解説し、2027年4月以降に施行予定の変更については別途区別して紹介します。
制度は今後変更される可能性があるため、具体的な手続きや法的要件については、必ずビクトリア州政府および現行法の最新情報をご確認ください。
世界には様々な安楽死制度がありますが、
「最も完成度が高いモデル」と言われている国があります。
それが、オーストラリアです。
医師による判断、複数の審査、待機期間、最終確認――これらすべてを体系化した制度設計は、単なる合法化ではなく、「安全に運用するための仕組み」そのものです。
オーストラリアの安楽死制度は、「医療主導型の中で最も制度設計が完成されたモデル」です。
👉 世界各国の安楽死制度を知りたい方は、はこちらで解説しています↓
🎧音声による動画解説
要約図(自由使用可)
(オーストラリア 安楽死 )

オーストラリア 安楽死 申請から手続き・保護措置まで全プロセス解説
本稿では、オーストラリア(ビクトリア州)における安楽死法を対象として、
・「安楽死の申請から終了に至るまでの具体的プロセス」
・「患者に不利益をもたらさないために設けられた保護措置(セーフティガード)」
――以上の二点に注目しながら解説いたします。
オーストラリア安楽死法とは|外部リンク情報

👉 オーストラリアはビクトリア州ホームページの、安楽死法に関するサイト↓
👉 法律のPDFはこちら
オーストラリア安楽死法の正式名称
『Voluntary Assisted Dying Act』
※オーストラリアでは『安楽死(Eauthanasia: ユーサネイジア)』という言葉は使わず、Voluntary Assisted Dying 、通称『VAD』と呼称します。
【適用の条件】
オーストラリア安楽死法の適用対象と要件|
誰が申請できるのか
・18歳以上であること。
・オーストラリア市民または永住者であること、およびビクトリア州に通常居住しており、最初の申請時に少なくとも12ヶ月間そうであったこと。
・VADに関する意思決定能力があること。
・治癒不能であり、進行性で、死をもたらす疾患、疾病、または医療状態と診断されていること。
・その疾患により、数週間から数ヶ月以内、最長6ヶ月以内、
または神経変性疾患の場合は最長12ヶ月以内に死に至ると予想されること。
(※非末期の状態では対象外)。
・その疾患が、本人が耐えられないと判断する苦痛を引き起こしており、許容できる方法で軽減できないこと。
・精神疾患や障害のみを理由としてVADの資格は得られない。
※神経変性疾患:
ALS、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、多発性硬化症、ハンチントン病など。
【安楽死 審査プロセス】
【申請段階 ①】
安楽死申請の開始要件|
対象疾患・居住条件・自己意思の確認
(患者の意思を初めて明確にする段階)
・VADへのアクセスを希望する者は、登録医療従事者に対して明確かつ曖昧でない個人的な要求を行う。
・要求は口頭、ジェスチャー、またはその他の利用可能な意思伝達手段で行うことができる。
・要求を受けた医療従事者は、7日以内にその要求を受諾するか拒否するかを患者に伝えなければならない。
拒否の理由としては、良心的診断拒否、多忙、資格要件の不適合などが挙げられる。
・ 受諾された場合、その医療従事者は患者の医療記録に記録し、調整医師(1番目の医師)となる。
・患者はいつでも要求を撤回でき、その時点でプロセスは終了するが、新たに開始することも可能。
【申請段階 ②】
主治医による医学的評価|耐え難い苦痛と代替手段の検討
・調整医師が、患者が適格基準を満たしているか評価する。
・評価開始前に承認された評価トレーニングを修了している必要がある。
・意思決定能力の判断が困難な場合(例:精神疾患による)や、神経変性疾患で予後が6〜12ヶ月と予想される場合は、
専門家(精神科医など)の意見を求めるための紹介が義務付けられる。
・適格と判断された場合、調整医師は患者に対し、診断、予後、利用可能な治療法や緩和ケアの選択肢、処方される薬剤のリスクと結果、および要求を撤回する権利について説明。
・患者の同意があれば、家族の一員に、関連する臨床ガイドラインや自己投与計画について説明する措置も講じる。
・調整医師は、患者の要求が自発的であり、強制されておらず、持続的であることを確認する必要がある。
・評価結果は患者に通知され、最初の評価報告書に記録され、7日以内に委員会に提出される。
・適格と判断された場合、患者は相談評価のために別の登録医療従事者に紹介される。
【評価段階 ①】
独立医師によるセカンドオピニオン制度|
二重確認の仕組み
・別の登録医療従事者が相談評価の紹介を受諾または拒否(拒否理由は最初の申請と同様)。
受諾した場合、その医療従事者は相談医師(2番目の医師)となる。
・意思決定能力(例:精神疾患)や疾患に関して、専門家の意見を求める紹介を行うことができる。
・適格と判断された場合、最初の評価と同様の情報を患者に提供。
・要求が自発的であり、強制されておらず、持続的であることを確認する必要がある。
・評価結果は患者に通知され、相談評価報告書に記録され、7日以内に委員会および調整医師に提出。
・不適格と判断された場合でも、調整医師はさらなる相談評価のために別の医療従事者に紹介することができる。
・調整医師の役割は、患者を適格と評価した相談医師に引き継がれる場合がある。
【評価段階 ②】
・両医師による適格評価後、患者はVADアクセスを要求する書面による宣言を行なう。
・自発的であり、強制されておらず、その性質と効果(死に至るという結果)を理解していることを明記する必要がある。
・患者本人(または本人が署名できない場合は代理人)が、2人の証人および調整医師の立ち会いのもと署名。
・証人は18歳以上で、不適格な証人(遺言の受取人、治療中の医療施設の所有者/運営者/従業員、直接の医療サービス提供者)でないこと。
・家族構成員の証人は1名までとされている。
・証人は、署名が自発的であること、患者に意思決定能力があること、および宣言の性質と効果を理解していることを証明。
・通訳が関与する場合、通訳は認定を受けており、不適格な証人であってはならず、翻訳が正確であることを証明しなければならない。
【評価段階 ③】
・最終申請:
書面による宣言後、調整医師に対して患者本人から行われる。
最初の申請から少なくとも9日後、かつ相談評価完了から少なくとも1日後に行われなければならない。
死亡が9日以内に起こると予想される場合は、より短い期間が許容される。
・連絡担当者:
患者は最終申請後、18歳以上の人物を連絡担当者に指名する必要がある。
連絡担当者は指名を承諾し、患者の死亡後(15日以内)または自己投与を中止した場合に、使用されなかった薬剤を薬局に返却する義務を負う。
指名フォームは、患者と連絡担当者本人が18歳以上の第三者の立ち会いのもと署名。
委員会は、情報提供のために連絡担当者に連絡することがある。
・最終レビュー:
調整医師は、全ての関連フォーム(最初の評価報告書、相談評価報告書、書面による宣言、連絡担当者指名フォーム)をレビュー。
プロセスが法律の要件に従って完了していることを証明する。
最終レビューフォームのコピーと、レビューした全てのフォームを7日以内に委員会に送付する。
証明後であっても、患者はVADの継続を中止する決定をいつでもできる。
※オーストラリアの制度は、医師の審査が終わると第3者機関が最終チェックして決定します↓
👉 医師判断型と第三者審査型の違いを詳しく知りたい方はこちら↓
【協議段階】
安楽死実施判断までの協議プロセス|多段階審査の実際
(外部の機関による再評価)
・調整医師は、最終レビューの証明後、許可証を申請する。
・2種類の許可証がある。
1.自己投与許可証(Self-administration permit):
患者が自分で薬剤を投与できる場合に適用される。
調整医師による処方と供給、および患者による入手、所持、保管、使用、自己投与を許可。使用されなかった場合は、連絡担当者は薬剤を返却。
2.医療従事者投与許可証(Practitioner administration permit):
患者が自分で薬剤を投与できない場合に適用。
調整医師による処方、供給、および(証人の立ち会いのもとでの)投与を許可。この際、患者が意思決定能力を有し、自発的で持続的な要求があり、かつ要求後すぐにに投与される場合に限る。
3.担当省庁が申請を審査し(許可または拒否)、調整医師と委員会に通知する。
許可証は薬剤を特定し、指定された日から有効になる。
自己投与許可証は、未記入の処方箋が破棄された場合、または供給された薬剤が処分された場合にキャンセルされる。
自己投与ができなくなった場合、患者は医療従事者投与許可証の申請を要求でき、その際には未記入の処方箋の破棄と、すでに供給された薬剤の返却が必要となる。
※オーストラリアでは、安楽死薬の『自己摂取』『医師から注射』、どちらの方法でも可能です。国によっては『前者のみ』という場合もあります。
👉 世界各国の申請プロセスをまとめて確認する場合はこちら(ハイライト)↓
【実施・報告段階】
オーストラリアにおける安楽死の実施方法|
手続きと医療管理体制
・処方/調剤(自己投与):
調整医師は患者に対し、自己投与方法、薬剤の取得や服用義務がないこと、施錠された箱での保管、未使用薬剤の返却方法について説明。薬剤師も調剤時に同様の情報を提供。
・表示:
薬剤には、その目的、危険性、保管要件、返却方針を警告するラベルを貼付する必要がある。
・記録/通知(薬剤師):
薬剤師は調剤を記録し、7日以内に委員会にフォームを送付。返却された薬剤の処分を記録し、7日以内に委員会に通知。
・投与申請(医療従事者投与):
患者は調整医師に投与申請を行う。その際、意思決定能力があり、要求が持続的で、即時投与を理解している必要がある。証人の立ち会いが必要。要件を満たさない場合、調整医師は拒否できる。
・投与の証人:
18歳以上で、調整医師から独立している必要がある。患者の能力、自発性、持続的な要求を証明し、調整医師が薬剤を投与したことを記載。
・調整医師による証明(投与後):
調整医師は、患者が自己投与できない身体状態であったこと、意思決定能力があったこと、自発的であったこと、要求が持続的であったことを証明する。7日以内にフォームを委員会に送付する。
・死亡通知:
登録医療従事者は、登録官と検視官に死亡と基礎疾患を通知し、VAD薬剤が自己投与されたのか、医療従事者によって投与されたのか、あるいは使用されなかったのかを明記。
死亡記録には年齢、性別、民族性、郵便番号、障害の有無、末期疾患の情報が含まれる。
※留意点
オーストラリアでの安楽死法では『自己投与の場合』においては、薬を自宅の金庫に保管(義務)して、いつでも好きな時に実施が可能。医師やナースが側に付いている必要はないです。
いわゆる“お守り”を自分の側に置いておけるイメージ。結局使用されないで亡くなるケースも多いので、既述の連絡担当者の存在が必要になっています。
日本人には不安視されそうですが、現状まったく問題は起きていないとの事。
以下のイギリス国会審議も参考にしてください。
オーストラリアの緩和医療学会の会長の発言
安楽死の資格を患者が得ることは
『大きな慰め』
『最終的な保険ポリシー』
と表現されていました。
👉 安楽死と関係が深い「緩和ケアと安楽死の違い」は、こちらで整理しています↓
【その他 注意事項】
• 良心的診断拒否(Conscientious Objection):
登録医療従事者は、VADへの参加を拒否する権利を有する。
また患者から要求されていないのにVADについて議論を開始したり、提案したりしてはならない(※2025年11月に撤廃)。
• 安楽死審査委員会(Voluntary Assisted Dying Review Board):
VADに関連する事項を監視し、法律の運用をレビューする独立した機関が設立されている。
委員会はコンプライアンスの促進、問題の調査、データ分析、および議会への年次報告を行う。
不正行為が疑われる場合、警察や検死官などの関係機関に情報を提供する権限がある。
• 責任の保護と違反行為:
本法に従って誠実に行動する医療従事者やその他の関係者は、民事または刑事責任、および専門的な懲戒処分の対象とならない。
不正行為や不当な影響力を行使して他者にVADを要求させたり、薬物の自己投与を誘発したりする行為は重大な犯罪であり、終身刑を含む懲役刑が科される可能性がある。
虚偽の陳述や書類の偽造、破壊もまた犯罪である。
これらの保護措置は、患者の脆弱性を保護し、VADのプロセス全体を通じて患者の意思の自由と尊厳を確保するために設計されている。
👉 安楽死をめぐる賛成・反対の論点は、こちらで詳しく整理しています↓
オーストラリア安楽死|申請手続きの全体フロー
①『調整』医師:患者が適格基準を満たしているか評価(第1チェック)
↓
②『相談』医師:別の登録医師が①と同様の評価(第2チェック)
↓
③『書面』による宣言:2名の証人と調整医師の前で署名(第3-1チェック)
↓
④調整医師が最終チェック:連絡担当者を指名(第3-2チェック)
↓
⑤安楽死許可証を申請:審査委員会と担当省庁が審査して発行(第3-3チェック)
↓
⑥実施
※もう少し簡略化。
①『調整』医師:患者が適格基準を満たしているか評価(第1チェック)
↓
②『相談』医師:別の登録医師が①と同様の評価(第2チェック)
↓
③『書面』による宣言後、最初の調整医師が最終チェックして、安楽死許可証を委員会および省庁(≒国、行政機関)に申請(第3チェック)
※オランダで言うところの『SCEN』に該当。
イギリスで言うところの『パネル審査』に該当。
↓
⑥実施
オーストラリア安楽死プロセスの特徴と国際的評価
オーストラリアの安楽死制度は極めて厳格な運用が求められ、その手続の複雑さは多くの専門家から指摘されています。
実際、オーストラリアの安楽死制度においても、厳重すぎる制度設計が現場の医療従事者から批判を受けていることは広く知られています。
もはや「厳重」という表現を超え、プロセスそのものが極めて複雑かつ煩雑であると評価されるほどです。
制度の基本的な枠組みは三段階のステップを進める構造となっていますが、
各ステップに要する時間は相当長く、また多数の医療従事者の関与を必要とします。
中心的な監督者として配置されるのは調整医師と相談医師の二名ですが、実際にはこれに加えて複数の医師が手続に参画せざるを得ない場合も多く、制度運用の負担は決して軽いものではありません。
【参考動画】
👉 各国の安楽死制度や最新動向については、世界の安楽死動向をまとめたこちらの記事もご覧ください↓
👉 他国の制度と比較したい方はこちら↓
・オランダ 安楽死法:
・カナダ 安楽死法:
・イギリス 安楽死法案:
👉 世界の安楽死制度の成立経緯を年代順で知りたい方は、こちら↓
2024–25年度のビクトリア州VAD
項目 | 2024–25年度 |
VAD application | 837件 |
Assessment forms | 1,487件 |
VAD制度開始以来のassessment forms | 6,647件 |
2023–24年度にはVADによる死亡がビクトリア州全死亡の「0.84%」
各州の施行年代
※オーストラリアは一つの制度ではない
州・準州 | VAD法 | 備考 |
Victoria | 2017 | 2019施行 |
Western Australia | 2019 | 2021施行 |
Tasmania | 2021 | 制度化 |
Queensland | 2021 | 制度化 |
South Australia | 2021 | 制度化 |
NSW | 2022 | 制度化 |
ACT | 2024 | 制度化 |
セーフガード一覧
セーフガード | 目的 |
本人による申請 | 第三者による強制防止 |
意思決定能力の確認 | 判断能力の確保 |
2名の医師による評価 | 単独判断の回避 |
書面による意思確認 | 本人意思の記録 |
証人 | 本人意思の確認 |
待機期間 | 衝動的判断の抑制 |
Review Board | 制度監督 |
年次報告 | 透明性 |
薬剤管理 | 第三者使用防止 |
違反への罰則 | 不正防止 |
FAQ(よくある質問)|オーストラリアのVAD制度について
Q1.オーストラリアでは「安楽死」と呼んでいるのですか?
A.制度上の正式な用語は、Voluntary Assisted Dying(VAD)です。日本語では「自発的な援助死」などと訳されます。本記事では検索上の分かりやすさを考慮して「安楽死」という言葉も使用しますが、オーストラリアの法制度上はVADという用語が用いられています。
Q2.オーストラリア全体で同じVAD制度なのですか?
A.いいえ。オーストラリアのVAD制度は連邦法ではなく、州・準州ごとの法律によって運用されています。そのため、対象となる疾患、余命要件、申請方法、投与方法、医療従事者の役割などには州・準州ごとの違いがあります。本記事では主としてビクトリア州の制度を扱います。
Q3.ビクトリア州では誰でもVADを申請できますか?
A.いいえ。18歳以上であること、ビクトリア州の居住要件を満たすこと、意思決定能力があること、一定の医学的要件を満たすことなど、法律で定められた複数の条件があります。また、本人自身による自発的な意思表示が必要です。
Q4.VADを希望する場合、医師1人だけが判断するのですか?
A.いいえ。ビクトリア州では、原則として2名の医師が独立して適格性を評価する仕組みが設けられています。さらに、本人の意思確認、書面による手続き、許可・報告制度など、複数の保護措置が設けられています。
Q5.緩和ケアを受けてもVADを選べるのですか?
A.VADと緩和ケアは目的の異なる制度・医療行為です。緩和ケアは苦痛の軽減や生活の質の維持を目的とします。一方、VADは一定の条件を満たした本人が死を迎える時期や方法を選択するための制度です。したがって、VADをめぐる議論では、緩和ケアへのアクセスを確保することと、それでも残る苦痛にどのように対応するかを分けて考える必要があります。
Q6.VAD制度には反対・慎重論もありますか?
A.あります。主な論点として、本人の意思が本当に自由なものか、家族や社会からの圧力が影響しないか、医療・介護へのアクセス格差が意思決定に影響しないか、意思決定能力を適切に評価できるか、セーフガードがアクセス障壁にならないか、医療従事者の良心的拒否と患者アクセスをどう両立するか、といった問題があります。これらについては査読付き研究でも議論されています。
Q7.セーフガードが多ければ、制度上のリスクはなくなるのですか?
A.必ずしもそうとは言えません。複数の医師による評価、書面による意思確認、監督機関、記録・報告制度などは本人の意思を守るための重要な仕組みですが、一方で手続きが複雑になることで、適格な患者のアクセスが難しくなる可能性も指摘されています。そのため、安全性とアクセスの両方を考慮する必要があります。
Q8.医師はVADへの参加を拒否できますか?
A.ビクトリア州では、一定の条件のもとで医療従事者がVADへの関与を拒否する良心的拒否が認められています。一方で、良心的拒否と患者のアクセスをどのように両立させるかは、オーストラリアでも重要な制度上・倫理上の論点となっています。
Q9.2025年にビクトリア州のVAD法は改正されたのですか?
A.はい。ビクトリア州議会は2025年11月にVoluntary Assisted Dying Act 2017の改正を可決しました。改正内容の施行は2027年4月19日から予定されており、それまでは現在の制度が適用されます。したがって、今後このページを読む際には、施行前の制度と2027年以降の制度を区別する必要があります。
Q10.このページはオーストラリア全州のVAD制度を説明していますか?
A.いいえ。本ページでは、オーストラリアのVAD制度の全体像に触れながら、主としてビクトリア州の制度を詳しく解説しています。各州・準州では制度に違いがあるため、具体的な制度を確認する場合には、それぞれの州政府・公的機関の最新資料を確認する必要があります。
🔽関連記事
👉 混同されやすい、安楽死と尊厳死の違いをを知りたい方は、こちら(延命治療との関係も整理)↓
👉 安楽死と自殺の違い・関係を整理したい方は、こちらをご覧ください↓
嘆願書送付アクション
本サイトでは、各国制度、安全性・濫用防止、緩和ケア、身体疾患による苦痛と自殺などについて、国会提出用の補足資料も公開しています。
※世界の制度を比較したうえで、日本で制度設計を考える際には、適格要件、第三者審査、記録・報告、医療従事者の良心的拒否、障害者・高齢者等への配慮、緩和ケアとの関係などを個別に検討する必要があります。
書類 一覧
・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』
・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白
・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル
・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策
・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題
・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態
・カバーレター:ご挨拶(1ページ)
・要約文(2ページ)
出典・参考文献
本記事では、オーストラリア各州政府・議会・VAD Review Board等の公的資料を優先し、制度の評価や倫理的論点についてはPubMed等で確認できる査読付き学術論文を参照しています。
1.ビクトリア州政府・法令
・Victorian Department of Health. Voluntary assisted dying.ビクトリア州政府によるVAD制度の公式解説。適格要件、申請手続き、保護措置、Review Board、今後の制度変更などを確認できます。Victorian Department of Health – Voluntary assisted dying
・Voluntary Assisted Dying Act 2017 (Victoria).ビクトリア州VAD制度の根拠となる法律本文。Voluntary Assisted Dying Act 2017 – Victorian Legislation
・Voluntary Assisted Dying Review Board. Annual Report July 2024–June 2025.2024–25年度の申請、評価、許可、実施などの制度運用状況を示す公式年次報告書。
・Victorian Department of Health. Review of the Operation of the Voluntary Assisted Dying Act 2017.制度開始後の運用を検証した5年レビュー。制度がどのように機能しているかだけでなく、今後の改善点も整理されています。
2.オーストラリアVAD制度の学術研究
・Hempton C. Voluntary assisted dying in the Australian state of Victoria: an overview of challenges for clinical implementation. Annals of Palliative Medicine. 2021;10(3):3575–3585.doi: 10.21037/apm-20-1157. PMID: 33849136.ビクトリア州制度の実装上の課題、セーフガード、臨床現場への適用、良心的拒否などを検討しています。PubMed
・McDougall R, Pratt B. Too much safety? Safeguards and equal access in the context of voluntary assisted dying legislation. BMC Medical Ethics. 2020;21(1):38.doi: 10.1186/s12910-020-00483-5. PMID: 32404097.安全確保のためのセーフガードが、場合によっては適格者のアクセス障壁にもなり得るという倫理的・制度的問題を論じています。PubMed
・Sheahan L. Exploring the interface between ‘physician-assisted death’ and palliative care: cross-sectional data from Australasian palliative care specialists. Internal Medicine Journal. 2016;46(4):443–451.doi: 10.1111/imj.13009. PMID: 26762669.オーストラリア・ニュージーランドの緩和ケア専門家のVAD・PADに対する態度や、緩和ケアとの関係を検討しています。PubMed
・Kresin T, Hawgood J, De Leo D, Varghese F. Attitudes and Arguments in the Voluntary Assisted Dying Debate in Australia: What Are They and How Have They Evolved Over Time? International Journal of Environmental Research and Public Health. 2021;18(23):12327.doi: 10.3390/ijerph182312327. PMID: 34886053.オーストラリアにおけるVADをめぐる賛成・反対の議論と世論の変化を整理した研究です。PubMed
・White BP, Willmott L. What next for voluntary assisted dying in Australia? Australian Health Review. 2023;47(1):3–4.doi: 10.1071/AH23005. PMID: 36729059.全州でVAD法が導入された後の制度運用、評価、改善の必要性について論じています。PubMed
・Del Villar K, Willmott L, White BP. Voluntary assisted dying—Australia in an international context. Medical Law Review. 2025;33(3).doi: 10.1093/medlaw/fwaf025. PMID: 40708257. PMCID: PMC12289548.オーストラリア各州・準州のVAD制度を国際的な制度と比較し、適格要件、申請・評価手続き、投与方法、良心的拒否などを整理しています。PubMed
・Kerridge I, Stewart C, Scully JL, et al. Conscientious Objection and Institutional Objection to Voluntary Assistance in Dying: An Ethico-legal Critique. Journal of Law and Medicine. 2023;30(4):806–821.PMID: 38459874.VADへの医療従事者・医療機関の良心的拒否について、倫理的・法的観点から検討しています。PubMed
3.補足
本記事では、VAD制度の安全性を示す公的資料だけでなく、制度の複雑さ、アクセス格差、医療従事者の良心的拒否、緩和ケアとの関係などを指摘する批判的・慎重論も参照しています。
したがって、本記事の記述は「制度を肯定する資料だけ」に基づくものではなく、制度の利点と課題の双方を確認したうえで整理しています。
留意事項
・オーストラリアでは連邦法ではなく州法に基づいてVAD制度が運用されており、各州で要件や手続きに違いがあります。
・一般的には、成年で判断能力があり、進行性・終末期の疾患があり、耐え難い苦痛を抱える患者が対象となり、複数の医師による評価や本人の自発的意思確認などの保護措置が設けられています。
・各州では制度の運用状況について年次報告書や統計が公表されており、制度の透明性を確保するための監督体制が整備されています。
制度の安全性と課題について
ビクトリア州では、VAD Review Boardによる監督、年次報告、法定レビューなどを通じて、制度の運用状況が継続的に検証されています。
一方で、「制度上の保護措置が整備されていること」と「制度に課題が存在しないこと」は同じ意味ではありません。
実際、査読付き研究では、手続きの複雑さ、医療従事者の良心的拒否、地域や医療機関によるアクセスの差などが課題として論じられています。
したがって本記事では、ビクトリア州のVAD制度について、保護措置の存在だけでなく、制度運用上の課題や批判的な研究も含めて紹介しています。
本記事の調査方法・情報更新方針
本記事では、オーストラリアのVoluntary Assisted Dying(VAD)制度について、主としてビクトリア州の現行法令、州政府・VAD Review Boardが公表する制度資料および年次報告書を確認し、制度の申請条件、評価手続き、保護措置、監督体制を整理しています。
また、制度の評価や課題については、PubMed等で確認できる査読付き学術論文も参照しています。
なお、本記事は安楽死制度の法制化を支持するRiPの立場から作成していますが、制度上の課題、アクセス上の問題、医療従事者の良心的拒否、反対・慎重論を含む研究についても、可能な限り併記しています。
法律・制度・統計について重要な変更が確認された場合は、本文および参考資料を更新します。















コメント