安楽死制度の2つの承認モデルとは?医師判断型と第三者審査型の違いを世界比較
- リップディー(RiP:D)

- 3月14日
- 読了時間: 8分
更新日:4月15日
※最終更新日:2026年4月15日(随時更新)
👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
安楽死制度の議論において、本当に重要なのは「認めるかどうか」ではありません。
誰が、その決定を下すのか。
医師が判断するのか、それとも第三者機関が審査するのか——この違いによって、安楽死は「医療行為」にも「社会制度」にもなり得ます。
そして実際の制度設計では、複数の医師の判断と第三者機関の審査が組み合わされ、安全性と自己決定の両立が図られています。
安楽死制度の本質は、「死を許可する権限を誰が持つのか」という点に集約されます。
👉 世界各国の安楽死制度を知りたい方は、はこちらで解説しています↓
🎧音声による動画解説
要約図(自由使用可)

世界では安楽死制度の導入が広がっている
世界では現在、安楽死や医師による自殺幇助を認める制度が、少しずつ広がりつつあります。
※👉 安楽死が合法な国の一覧はこちらで確認できます
「どの国で認められているのか」という点ばかりが注目されがちですが、
実はもう一つ、非常に重要な問いがあります。
それは
「どのような手続きで、
その死が承認されるのか」
という問題です。
制度の設計次第で、患者の権利の守られ方も、安全性の担保の仕方も、社会の受け止め方も、大きく変わってくるからです。
世界の安楽死制度では、申請・審査・承認というプロセスが法律で詳細に定められています。
こうした制度設計は「安楽死の承認プロセス」と呼ばれ、国ごとに大きく異なります。
世界の制度を比較すると、安楽死の承認プロセスは大きく2つのモデルに分かれていることが見えてきます。
世界の安楽死制度に共通する4つの手続き
まず前提として、どの国でも共通している基本的な流れがあります。
それは次の4つの段階です。

① 申請段階(患者の意思表明)
患者が医師に対して、自らの意思で安楽死または自殺幇助を希望することを表明します。
医師は
成人であること
判断能力があること
深刻な苦痛があること
などの基準を確認します。
② 評価段階(セカンドオピニオン)
次に、別の独立した医師 が患者の状態を再評価します。
ここでは
本当に自発的な意思か
医学的条件を満たしているか
判断能力があるか
などが確認されます。
この 「医師2名による評価」 は、ほぼすべての制度で共通しています。
③ 最終審査段階(制度によって異なる)
ここから先が、国によって大きく分かれる部分です。
世界の制度は
医師の判断のみで完結するモデル
第三者機関が最終審査を行うモデル
の2種類に分かれます。
④ 実施・報告段階
最終的に安楽死が実施された場合、
医療記録
行政機関への報告
データベース登録
などが行われ、制度の監視が行われます。
安楽死制度の2つの承認モデル
① 医師2名で完結するモデル(迅速型)

このモデルでは、2人の医師が条件を満たすと判断すれば、
第三者の承認を待たずに実施が可能です。
つまり
医師の医学的判断が、制度の最終判断になります。
主な採用国は次のとおりです。
アメリカ(オレゴン州など)
(Oregon Death with Dignity Act)
カナダ
(Medical Assistance in Dying)
フランス(法案)
(aide à mourir)
特徴
医療判断を重視
手続きが比較的迅速
医師と患者の関係が中心
ただし多くの国では、
事後報告による監視
が制度の安全装置となっています。
② 第三者機関が審査するモデル(多層型)

こちらのモデルでは、
医師2名の評価に加えて専門家委員会などの第三者機関が最終審査を行います。
委員会には
医師
法律家
倫理学者
などが参加する場合が多く、
医学だけでなく法・倫理の観点からも審査が行われます。
主な採用国は次のとおりです。
オランダ
(Termination of Life on Request and Assisted Suicide Act)
スペイン
(Ley Orgánica de Regulación de la Eutanasia)
オーストラリア
(Voluntary Assisted Dying Act)
イギリス(法案)
(Terminally Ill Adults (End of Life) Bill)
特徴
審査が多層的
透明性が高い
不当な圧力を防ぎやすい
一方で、
手続きが長くなるという課題も指摘されています。
制度設計の違いが意味するもの
安楽死の議論では、
「賛成か反対か」
という対立だけが強調されがちです。
しかし実際には、
制度設計の違いによって社会的意味は大きく変わります。
たとえば
医療判断を中心にするのか
社会的審査を加えるのか
によって、
制度が目指す価値も異なってきます。
それは
迅速な救済を重視する社会
慎重な審査を重視する社会
という違いでもあります。
👉 制度の運用スタイル(厳格型・寛容型)の違いについては、こちらで詳しく解説しています
👉 実際の方法(医師投与・自己投与)については、こちらで詳しく解説しています
日本には安楽死制度が存在しない
現在、日本には
安楽死を明確に認める法律は存在していません。
一部の裁判例では、
厳しい条件のもとで安楽死の成立要件が示されたことがあります。
しかしそれはあくまで
刑事責任の判断基準
であり、制度としての仕組みではありません。
つまり日本では、
手続き
審査
監視
といった制度的な枠組みがまだ整備されていないのです。
👉 日本における法制度や現状については、こちらで詳しく解説しています
👉 安楽死をとおした日本の歴史は、こちらをご覧ください↓
今後の議論に必要な視点
安楽死というテーマは、
誰にとっても簡単に答えが出せる問題ではありません。
だからこそ、
単純な賛否の対立ではなく
「どのような制度なら社会として受け入れられるのか」
という冷静な議論が必要だと私たちは考えています。
世界ではすでに、さまざまな制度設計の試みが始まっています。
その経験を学びながら、
日本でも市民的な議論を進めていくことが大切ではないでしょうか。
👉 承認プロセスをめぐる倫理的な議論については、こちらで整理しています
まとめ|安楽死制度は2つのモデルに分かれる
世界の安楽死制度は、主に次の2つのモデル に分かれています。
医師判断型
医師2名の評価で実施可能
手続きが比較的迅速
アメリカ、カナダなど
第三者審査型
専門家委員会が最終審査
透明性と安全性を重視
オランダ、スペイン、オーストラリアなど
制度の違いは、
その社会がどの価値を重視するのか
という問いでもあります。
私たちは、この問題を感情的な対立ではなく、市民一人ひとりが考えることのできる社会的議論として広げていく必要があると考えています。
👉 安楽死とは何かを整理したい方は、こちらで全体像を確認できます↓
👉 安楽死の種類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓
👉 各国の安楽死制度や最新動向については、世界の安楽死動向をまとめたこちらの記事もご覧ください↓
FAQ
Q. 安楽死制度の承認モデルとは何ですか?
A. 安楽死制度の承認モデルとは、患者の安楽死の申請を「誰が判断・許可するか」という仕組みのことです。主に医師が判断する「医師判断型」と、第三者機関が審査する「第三者審査型」に分かれます。
Q. 医師判断型とはどのような制度ですか?
A. 医師判断型とは、主治医や複数の医師が医学的条件や患者の意思を確認し、安楽死の適格性を判断する制度です。医療行為の延長として扱われることが特徴です。
Q. 第三者審査型とは何ですか?
A. 第三者審査型とは、医師の判断に加えて、独立した委員会や監査機関が申請を審査する制度です。透明性や濫用防止を重視する設計です。
Q. なぜ第三者審査が必要とされるのですか?
A. 安楽死は不可逆的な行為であるため、医師だけの判断ではなく、独立した機関によるチェックを行うことで、公平性や安全性を確保する必要があるためです。
Q. 実際の制度ではどちらか一方だけですか?
A. 多くの国では、医師判断と第三者審査を組み合わせたハイブリッド型が採用されています。複数医師の診断と独立機関の監査が併用されるのが一般的です。
Q. 日本ではどの承認モデルが採用されていますか?
A. 日本では安楽死制度自体が法的に整備されていないため、承認モデルも確立されていません。
「世界の安楽死制度の全体像」については、こちらをご覧ください↓
▼関連記事
👉安楽死と尊厳死の違いをわかりやすく解説
👉安楽死と緩和ケアの違い
👉安楽死と自殺の違い






コメント