日本の安楽死制度導入に関する提言書【補足資料②】各国制度比較と日本への制度モデル

更新日:8月16日
※最終更新日:2026年8月6日(随時更新)
👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
👉 安楽死の定義と分類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓
この資料で分かること
安楽死を制度化している主要国の制度
各国の適格要件
医師・第三者機関による審査
カナダMAIDの制度構造
緩和ケアとの関係
制度導入に伴うリスク
日本で制度設計する場合の論点
日本にも安楽死制度の導入を要望する嘆願書|【補足資料②】各国制度比較と日本への制度モデル


当会 Rest in Peace with Dignity(RiP:D) が作成し、国会議員ならびに関係各所へ提出するために取りまとめた嘆願書(提言書)を公開しました。
本ページでは、嘆願書の
「補足資料 ② 各国制度比較と日本への制度モデル」 を掲載します。
※本資料の調査・編集方針
本資料は、日本における安楽死制度の法制化をめぐる議論の参考資料として、海外の制度、法令、公的統計、査読付き学術論文等を調査・比較したものです。
制度に関する事実確認では、原則として各国政府・公的機関・法令・制度監督機関などの一次資料を優先しています。医学・生命倫理・社会的影響に関する論点については、PubMed等で確認可能な査読付き論文、系統的レビュー、学術的な総説等を参照しています。
また、本資料の提言内容を支持する研究だけでなく、安楽死制度に対する反対論・慎重論、制度上のリスク、脆弱な立場にある人への影響、医療従事者の倫理的負担などを扱った研究も確認し、可能な限り両面的に整理することを基本方針としています。
各国の制度・法令・統計は改正・更新される可能性があるため、本ページでは最終更新日を明記し、重要な制度情報については可能な限り最新の公的資料を確認しています。
なお、本資料は政策提言を目的とするものであり、個別の医療・法律上の助言を行うものではありません。
本嘆願書は、日本における終末期医療の現状や制度上の課題を整理するとともに、海外制度の実例や公的統計、緩和ケアの限界、安全性を担保する制度設計など、多角的な観点から法制度化の必要性を提言するものです。
提出用の資料一式は、以下の構成となっています。
・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』
・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白
・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル
・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策
・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題
・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態
・カバーレター:ご挨拶(1ページ)
・要約文(2ページ)
なお、本ページでは安楽死制度について初めて知る方にも理解しやすいよう、関連する解説記事へのリンクを随所に掲載しています。制度の背景や各論点について詳しく知りたい方は、あわせてご覧ください。
また、実際に国会議員および関係機関へ提出する正式版については、ページ下部に掲載している PDF版 をご参照ください。
🎧音声による動画解説
要約図(自由使用可)
本図は個人・報道機関・教育機関等による転載・引用を歓迎します。内容を改変せず使用する場合は、出典として「Rest in Peace with Dignity(RiP:D)」を明記してください。

本資料は、海外の安楽死・医師幇助死制度を比較し、それぞれの適用条件、審査制度、安全策、実施状況、制度上の課題を整理したうえで、日本で制度化を検討する場合の制度モデルを提示することを目的としています。
嘆願書|補足資料 ② 各国制度比較と日本への制度モデル
(日本 安楽死制度)
Ⅰ. 安楽死・医師幇助死を認める国々 — 法制度の概要
近年、欧州・北米を中心に、末期あるいは回復の見込みのない重篤な病状などに苦しむ患者に対して、積極的安楽死(Active Euthanasia)または自殺幇助(AD/AS: Assisted Dying/Assisted Suicide)の制度を整備する国が複数存在している。また政治レベルで検討する動きが活発化している。
これらの国々は、法的な明文化および手続きの厳格な枠組みを通じて、制度の透明性と安全性を担保している。以下に、代表的な国とその制度の特徴を示す。
国/地域 | 容認形態 | 主な適用条件・手続きおよび安全策 |
オランダ | 積極的安楽死/自殺幇助の双方を合法化 | 「耐え難い苦痛」「改善の見込みなし」「患者の自発的かつ熟慮された意思」「複数医師による診断と同意」「独立の審査機関による報告義務」などの厳格条件がある。 |
ベルギー | 積極的安楽死を合法化 | 適用には「医学的に改善不可能な病状」「耐え難い苦痛」「患者自身の明確な要請」など。未成年者への適用条件についても明文化がなされている国のひとつ。 |
スイス | 自殺幇助を容認(ただし積極的安楽死は不可) | 患者が自ら致死薬を服用する形をとる。営利目的や利己的動機がないことが条件。団体を通じて支援が提供される場合もある。 |
スペイン | 合法化(安楽死・自殺幇助) | 法整備が比較的最近(2021年成立)であり、要請は患者自身が文書で行い、再確認や手続き、審査制度を設けている。 |
その他(例:北米・ラテンアメリカ地域など) | 自殺幇助または限定的な医療死支援を認める例あり | 条件は国・地域によって異なるが、「余命予測」「患者の意思」「医師・複数医師または審査」の要件が一般的。 |
※手続きの流れ、適格の条件など、各国の詳細は、当会ホームページに集約してあるのでご参照。
・当会ホームページ:
・安楽死が合法の国、および検討されている国の動向調査:
(注:上表は代表的事例を示すものであり、各国の制度・適用条件は随時見直されているため、最新情報の確認の必要がある。)
(👉※参照↓)
国 | 制度 | 対象 | 主な要件 | 第三者審査 | 年次報告 | 主な論点 |
オランダ | 安楽死・自殺幇助 | 医学的苦痛 | 耐え難い苦痛等 | RTE | ○ | 精神疾患・認知症等 |
ベルギー | 安楽死 | 医学的条件等 | 耐え難い苦痛等 | 連邦委員会 | ○ | 未成年・精神疾患等 |
カナダ | MAID | 重篤・不可逆的状態 | 法定要件 | 法定手続 | ○ | Track 2・障害・精神疾患 |
スイス | 自殺幇助 | 自己服薬 | 利己的動機なし等 | 制度構造が異なる | — | 民間団体等 |
スペイン | 法定要件 | 複数段階手続 | 保証委員会 | ○ | 制度導入後の運用 |
Ⅱ. 安全性と濫用防止のための標準的手続きと制度設計 — 国際的共通要素
各国の制度を比較した学術研究および制度報告によれば、
以下のような 基本的な要素・手続き が安全性確保と濫用防止のために不可欠である。
自発的かつ熟慮された患者の意思表示: 患者自身が、自らの意思で、十分な情報と理解のもとに、積極的安楽死または自殺幇助を要請すること。
複数医師の診断および同意: 主治医に加え、別の医師または複数医師による診断・意見を求め、要件を満たすか慎重に確認する。
医学的条件の明確化: 改善の見込みがない末期疾患、不治の病、または耐え難い身体的または精神的苦痛など、厳格な適用条件を設定。
第三者機関または審査委員会の導入: 独立した倫理審査委員会や監査機関によるチェック・報告義務を設け、制度の透明性および公平性を確保。
文書による同意と手続きの記録保存: 書面での意思表示、複数回の確認、法的書類の整備などにより、後日の争議や濫用の余地を減らす。
年次報告および統計の公表: 実施件数、対象疾患、年齢・性別、審査過程などを含むデータを公開し、社会的な監視と透明性を維持。
これらはいずれも、制度化による “リスク管理” と “安心・安全保障” を両立させるための国際的なベストプラクティスである。
Ⅲ. 国際制度モデルの成果と課題 — 実績および留意点
国際的な報告によれば、制度化された国々では、安楽死・自殺幇助が医療の例外ではなく、「選択肢のひとつ」として社会に定着しつつある。
特に、患者の尊厳、自己決定、終末期の苦痛対処に貢献してきた。
一方で、制度運用にあたっては、倫理的な議論、社会的合意、医療者の教育、実施基準の明確化と厳守、そして透明性ある管理が不可欠である。制度設計が曖昧なままでは、濫用や倫理的問題につながるリスクがある、と指摘されている。
また、制度を導入した国においても、医療現場・社会での慎重な運用、定期的な見直し、報告制度の継続が行われており、単なる制度設立だけでなく、「実施後の管理と検証」が重要であることが明らかになっている。
Ⅳ. 日本における制度設計の参考点 — 国際モデルからの教訓
本資料が示す国際的な制度モデルと安全策を参照するなら、以下の点を日本の法制化検討における指針とすべきである:
1.厳格な適用条件と手続き基準の明文化: → 嘆願書 第3章 提言1・2
患者の意思確認、複数の医師診断、独立審査機関の設置などを義務化
2.透明性ある報告・統計制度の整備: → 嘆願書 第3章 提言1・2
実施件数、対象疾患、審査過程などを公表し、社会の信頼を維持
3.医療者・社会への教育と倫理ガイドラインの整備: → 嘆願書 第3章 提言3
医療従事者の適切な研修、公的なガイドライン策定、議論の場の確保
4.安楽死制度と緩和ケア制度の併存: → 嘆願書 第3章 提言4
安楽死を唯一の選択肢とせず、緩和ケア・ホスピス等との選択肢の共存を明記
5.段階的かつ慎重な制度導入: → 嘆願書 第3章 提言5
まずは末期疾患・明確な病状のケースに限定、試行制度や報告義務付きで実施
6. 公的統計による継続的検証
制度導入後も、実施件数だけでなく、自殺統計や緩和ケア利用状況等の公的データを継続的に分析し、制度の社会的影響を検証する(→ 補足資料⑤)。
これにより、倫理性・安全性・社会的受容性を確保しつつ、日本の医療制度・社会福祉制度への適応を図ることが可能である。
(※よく指摘される懸念と、国際制度における実際の対応 → 補足資料 ③)
Ⅴ. 結語
国際的に安楽死・自殺幇助を合法化・制度化している国々は、厳格な手続きと安全策を整備することで、患者の尊厳と自己決定権を守りつつ、濫用を防ぐ制度を維持している。
日本においても、こうした国際モデルと安全策を十分に参照しながら、慎重かつ透明性の高い制度設計を行うことが可能であり、また必要である。
また、このような制度設計は、緩和ケアではなお救済が困難な患者や、身体疾患・身体障害による深刻な苦痛を背景とする社会的課題(補足資料④・⑤)を検討する際の基礎となるものである。
本補足資料②が、嘆願書および法制化をめぐる検討における重要な参考となることを期待する。
付録:安楽死制度に関与している国々(※2026年8月時点)
欧州の例
・ピンク色:合法化の国(13ヶ国)
・黄色:もうすぐ合法化と成り得る国(1ヵ国)
安楽死の合法化を政治レベルで検討している国・地域(12ヶ国)

オセアニアの例 ※ノーザンテリトリー以外で全て法制度化済み

他:
・カナダは合法化済み アメリカは14州で法制化。
・南米は5ヵ国で認められており、更に4ヵ国が政治レベルで検討段階にある。
嘆願書(提言書)
【補足資料②】各国制度比較と日本への制度モデル
①「海外制度比較マトリクス」
オランダ | ベルギー | カナダ | スイス | スペイン | |
安楽死 | ○ | ○ | ○ | × | ○ |
自殺幇助 | ○ | △ | ○ | ○ | ○ |
医師関与 | ○ | ○ | ○ | △ | ○ |
独立審査 | ○ | ○ | ○ | △ | ○ |
年次報告 | ○ | ○ | ○ | △ | ○ |
精神疾患 | 条件付き | 条件付き | 現在除外 | — | 条件付き |
主要論点 | 認知症・精神疾患 | 未成年・精神疾患 | Track 2・障害 | 民間団体 | 導入後運用 |
図②「制度導入→監視」のフローチャート
患者の意思
↓
医学的適格性
↓
第2医師による確認
↓
インフォームド・コンセント
↓
緩和ケア等の代替選択肢確認
↓
実施
↓
記録
↓
第三者審査
↓
年次統計
↓
制度評価・法改正
図③「賛成・慎重・反対」の三角形
自己決定・苦痛緩和
↑
制度的安全性
↙ ↘
脆弱性・濫用リスク 医療者の倫理
FAQ
Q1 日本で安楽死制度は導入されていますか?
A. 日本では積極的安楽死を認める法律は制定されておらず、法制度化も実現していません。本資料では海外制度を比較し、日本への制度モデルを提言しています。
Q2 安楽死制度を導入している国にはどのような国がありますか?
A. オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スペイン、カナダ、ニュージーランドなどでは法制度が整備されています。また、スイスでは一定条件のもとで自殺幇助が認められています。
Q3 安楽死制度にはどのような安全対策がありますか?
A. 患者本人の自由意思の確認、複数医師による診断、第三者機関による審査、文書による同意、年次報告制度など、多くの国で厳格な安全対策が採用されています。
Q4 日本が海外制度から学べる点は何ですか?
A. 厳格な適用条件、透明性の高い審査制度、統計の公表、医療従事者への教育、緩和ケアとの併存などが、日本で制度設計を検討する際の重要な参考点になります。
Q5 安楽死制度と緩和ケアは対立するものですか?
A. 海外では、安楽死制度と緩和ケアを対立ではなく補完的な医療として位置付けている国が多く、患者が十分な説明を受けた上で選択できる制度設計が採用されています。
Q6 安楽死と尊厳死は同じものですか?
A. 同じものではありません。
一般に「安楽死」は、患者の死を早めることを目的として生命を終わらせる行為を指します。一方、「尊厳死」は、延命治療の差し控え・中止などを通じて、過剰な延命を避け自然な死を迎えることを指す場合が多く、両者は区別して考える必要があります。
ただし、日本では「安楽死」「尊厳死」という言葉の使われ方に幅があるため、議論では具体的な医療行為を明確にすることが重要です。
Q7 この提言は緩和ケアを否定するものですか?
A. いいえ。
本提言では、緩和ケアを終末期医療における重要な選択肢として位置付けています。
安楽死制度を検討する場合にも、緩和ケア、ホスピス、疼痛管理、精神的・社会的支援などを十分に利用できる体制を整えることが重要だと考えています。
そのうえで、緩和ケアによってすべての苦痛が必ず解消されるとは限らないことについても、医学的エビデンスに基づいて検討する必要があります。
Q8 安楽死制度には濫用や対象拡大のリスクはありませんか?
A. リスクがないとは考えていません。
制度を導入する場合には、本人の意思確認、医学的適格性の確認、複数の医師による評価、第三者による監督、記録保存、統計の公表など、多重の安全策が必要です。
また、制度導入後に適用範囲がどのように変化するのか、脆弱な立場にある人への影響がないかについても継続的に検証する必要があります。
本提言では、こうしたリスクについて補足資料③で詳しく検討しています。
Q9 安楽死制度に反対する意見も検討していますか?
A. はい。
安楽死制度については、自己決定権や苦痛からの解放を重視する立場だけでなく、生命の保護、障害者・高齢者など脆弱な立場にある人への影響、制度の適用範囲が拡大する可能性、医療者の倫理的負担などを懸念する立場があります。
本資料では、制度導入を支持する研究だけでなく、反対・慎重論を扱った学術研究も確認し、制度設計上の課題として取り上げています。
Q10 海外で制度化されているから、日本でも導入すべきだということですか?
A. 海外で制度化されていることだけを理由に導入を求めているわけではありません。
海外制度は、日本で制度設計を検討する際の比較対象の一つです。
各国の制度にはそれぞれ異なる法律、医療制度、社会保障制度、文化的背景があり、単純に外国の制度を日本へ移植することは適切ではありません。
本提言では、海外制度の長所だけでなく、制度運用上の課題や議論も踏まえ、日本に適した制度設計を検討することを提案しています。
Q11 カナダのMAIDと「安楽死」は同じですか?
A. 完全に同じではありません。
MAID(Medical Assistance in Dying)は、カナダの法律に基づく医療的死の支援制度です。制度には医療者が薬剤を投与する方法と、本人が薬剤を自己投与する方法があります。
そのため、日本語で一般に使われる「安楽死」や「自殺幇助」と完全に同義ではなく、制度比較では具体的な実施方法を区別する必要があります。
Q12 精神疾患だけを理由とする安楽死・医師幇助死も海外では認められていますか?
A. 国によって異なります。
オランダやベルギーでは、一定の条件のもとで精神疾患を理由とする安楽死等が法的議論の対象となっています。一方、カナダでは精神疾患のみを理由とするMAIDについて、2026年8月現在、適用開始が延期されています。
したがって、「安楽死合法国=精神疾患にも一律に適用」という理解は正確ではありません。
Q13 医療者自身が安楽死に反対する場合はどうなりますか?
A. 国によって制度が異なります。
例えばオランダ政府は、医師は安楽死を実施する義務を負わず、医師が実施を拒否することもできると説明しています。
また、医療者の良心的拒否や心理的負担については学術研究でも議論されています。
日本で制度を検討する場合にも、患者のアクセスだけでなく、医療者の倫理的・心理的負担や良心的拒否の扱いを制度設計に含める必要があります。
Q14 制度導入後も制度を見直す必要がありますか?
A. 必要です。
制度導入時に安全策を定めるだけではなく、実施件数、適用対象、審査結果、拒否された申請、患者の属性、緩和ケア等の利用状況などを継続的に把握し、制度が当初の目的から逸脱していないか検証する必要があります。
そのため、本提言では年次統計の公表と継続的な制度評価を重視しています。
安楽死を知るための9記事
⓪ 👉安楽死とは
「安楽死とは何か?日本では違法なのか?」
そんな疑問を、初心者でもわかるように整理して解説します。
この記事を読めば、安楽死の全体像が5分で理解できます。
① 👉種類
安楽死にはどんな種類があるのか知っていますか?
積極的・消極的・間接的の違いを具体例つきでわかりやすく解説します。
混同しやすいポイントも整理しています。
② 👉日本の法律
日本で安楽死は認められているのか?
判例や条件をもとに、どこまで許されるのかをわかりやすく解説します。
医師の責任についても理解できます。
③ 👉尊厳死
安楽死と尊厳死は何が違うのか?
混同されやすい2つの違いを、法律と医療の観点から整理して解説します。
日本での扱いもわかりやすく説明しています。
④ 👉世界
安楽死が認められている国はどこなのか?
各国の制度や条件の違いを整理し、わかりやすく一覧で解説します。
日本との違いも一目で理解できます。
⑤ 👉緩和ケア
安楽死と緩和ケアは何が違うのか?
苦痛の軽減という観点から、それぞれの考え方と役割をわかりやすく解説します。
選択の違いも理解できます。
⑥ 👉賛否
安楽死は本当に許されるべきなのか?
賛成・反対それぞれの理由を整理し、海外の議論も含めて比較します。
考え方の違いがクリアになります。
⑦ 👉自殺
安楽死と自殺は同じものなのか?
法律・倫理・医療の観点から、その違いをわかりやすく解説します。
誤解されやすいポイントも整理しています。
⑧ 👉歴史
日本の安楽死の歴史・事件にはどのようなものがあるのか?
安楽死はどのように変化してきたのか?
ナチス時代から現代までの流れを時系列で整理して解説します。
出典・参考資料
本資料では、各国政府・公的機関による法令・制度資料、国際機関の資料、査読付き学術論文、PubMed収載論文等を参照しています。
各国の制度・統計は改正・更新されるため、制度の現状については可能な限り各国の公的機関による最新資料を優先しています。
1.一次資料・法令・政府/公的機関資料
オランダ
Government of the Netherlands.Euthanasia and assisted suicide.Government of the Netherlands.
Regional Euthanasia Review Committees (RTE).Annual Reports / Annual Report on Euthanasia.
オランダの安楽死・自殺幇助について、法的要件、医師の「due care criteria(注意義務基準)」、審査制度等を確認するための一次資料。
ベルギー
Federal Commission for the Control and Evaluation of Euthanasia.Federal Commission for the Control and Evaluation of Euthanasia.
Belgian Federal Commission for the Control and Evaluation of Euthanasia
ベルギーにおける安楽死の法制度、報告・審査制度、実施件数等の確認に使用。
スイス
Swiss Criminal Code.Article 115: Inciting and assisting suicide.
Swiss Academy of Medical Sciences (SAMW/SAMS).Management of Dying and Death.
スイスは、医師による積極的安楽死を合法化した国ではなく、刑法上の自殺幇助に関する規定を基礎として制度・実務が形成されているため、他国と区別して扱う。
スペイン
Gobierno de España.Ley Orgánica 3/2021, de 24 de marzo, de regulación de la eutanasia.
BOE-A-2021-4628.
スペインの安楽死法制、適格要件、申請・審査手続等の確認に使用。
カナダ
Government of Canada / Health Canada.Medical Assistance in Dying (MAID).
Health Canada.Sixth Annual Report on Medical Assistance in Dying in Canada.2025.(2024年のデータを収録)
2024年については、Health Canadaが22,535件のMAID要請を報告し、16,499人がMAIDを受けたとしています。なお、同報告書自身が、障害等の自己申告データを含め、一部データには限界があることを明記しています。
Health Canada.Medical assistance in dying: Monitoring and reporting.
日本
厚生労働省.人生の最終段階における医療・ケア、ACP(人生会議)等に関する資料。
日本緩和医療学会.緩和医療・緩和ケアに関するガイドラインおよび学術資料。
日本医師会.終末期医療・生命倫理等に関する資料。
2.国際機関・国際的ガイドライン
世界保健機関(WHO)
World Health Organization.Integrating palliative care and symptom relief into primary health care: a WHO guide for planners, implementers and managers.2018.
WHO|Integrating palliative care and symptom relief into primary health care
緩和ケアの位置付け、症状緩和、終末期医療に関する国際的な基礎資料として参照。
European Association for Palliative Care(EAPC)
European Association for Palliative Care (EAPC).EAPC Position Statements and Clinical Frameworks.
緩和ケア、緩和的鎮静、終末期医療と安楽死をめぐる倫理的議論を検討する際の資料として参照。
欧州人権裁判所
European Court of Human Rights.Judgments concerning end-of-life decisions and assisted dying, including:
Pretty v. the United Kingdom
Haas v. Switzerland
Lambert and Others v. France
終末期の自己決定、生命・身体に関する権利、国家の規制裁量等を検討する際の参考資料。
3.査読付き学術論文
3-1.海外の安楽死制度・制度比較
Emanuel et al.(2016)
Emanuel EJ, Onwuteaka-Philipsen BD, Urwin JW, Cohen J.Attitudes and Practices of Euthanasia and Physician-Assisted Suicide in the United States, Canada, and Europe.JAMA. 2016;316(1):79–90.doi: 10.1001/jama.2016.8499.PMID: 27380345.
本論文は、米国・カナダ・欧州における安楽死・医師幇助自殺について、法制度、世論、医師の実践、実施頻度等を包括的にレビューした重要な総説です。
Mroz et al.(2021)
Mroz S, Dierickx S, Deliens L, Cohen J, Chambaere K.Assisted dying around the world: a status quaestionis.Annals of Palliative Medicine. 2021;10(3):3540–3553.doi: 10.21037/apm-20-637.
国際的な安楽死・医師幇助死制度の比較に使用。
3-2.オランダ
van der Heide et al.(1997)
van der Heide A, van der Maas PJ, van der Wal G, et al.Medical end-of-life decisions made for patients without explicit request in the Netherlands.The Lancet. 1997;350(9085):552–556.
オランダにおける終末期意思決定と、患者の明示的な要請を伴わない生命短縮行為等を検討する重要な研究。
van der Maas et al.(1996)
van der Maas PJ, van der Wal G, Haverkate I, et al.Euthanasia, physician-assisted suicide, and other medical practices involving end-of-life in the Netherlands, 1990–1995.New England Journal of Medicine. 1996;335(22):1699–1705.doi: 10.1056/NEJM199611283352227.PMID: 8929370.
オランダの制度化以前・初期における終末期医療の実態と監視可能性を検討する歴史的研究。
3-3.ベルギー
Dierickx et al.(2016)
Dierickx S, Deliens L, Cohen J, Chambaere K.Euthanasia in Belgium: trends in reported cases between 2003 and 2013.CMAJ. 2016;188(16):E407–E414.doi: 10.1503/cmaj.160202.PMID: 27620630.
ベルギーで報告された8,752件の安楽死事例を分析し、実施件数、年齢、疾患、非終末期患者等の推移を検討しています。
Wels & Hamarat(2025)
Wels J, Hamarat N.Incidence and Prevalence of Reported Euthanasia Cases in Belgium, 2002 to 2023.JAMA Network Open. 2025;8(4):e256841.doi: 10.1001/jamanetworkopen.2025.6841.PMID: 40266615.
ベルギーの制度について、2002~2023年という長期間の報告事例を分析した比較的新しい研究。
3-4.緩和ケアと安楽死
Dierickx et al.(2018)
Dierickx S, Deliens L, Cohen J, Chambaere K.Involvement of palliative care in euthanasia practice in a context of legalized euthanasia: A population-based mortality follow-back study.Palliative Medicine. 2018;32(1):114–122.doi: 10.1177/0269216317727158.PMID: 28849727.
ベルギー・フランダース地域において、安楽死を要請した患者と緩和ケアとの関係を検討した研究。
Mortier et al.(2015)
Mortier T, Leiva R, Cohen-Almagor R, Lemmens W.Between palliative care and euthanasia.Journal of Bioethical Inquiry. 2015;12(2):177–178.doi: 10.1007/s11673-015-9635-7.PMID: 25898900.
緩和ケアと安楽死の関係についての倫理的議論を検討する際の参考資料。
3-5.脆弱な立場にある人々・障害者への影響
Battin et al.(2007)
Battin MP, van der Heide A, Ganzini L, van der Wal G, Onwuteaka-Philipsen BD.Legal physician-assisted dying in Oregon and the Netherlands: evidence concerning the impact on patients in “vulnerable” groups.Journal of Medical Ethics. 2007;33(10):591–597.doi: 10.1136/jme.2007.022335.PMID: 17906058.
高齢者、女性、低所得者、身体障害者、慢性疾患患者、精神疾患患者等について、制度による不均衡な影響が認められるかを検討した研究。
Riddle(2017)
Riddle CA.Assisted Dying & Disability.Bioethics. 2017;31(6):484–489.doi: 10.1111/bioe.12353.PMID: 28419505.
障害者の権利・自己決定・社会的弱者への影響という観点から、安楽死・医師幇助死をめぐる批判と反論を検討。
3-6.精神疾患と安楽死
Kim et al.(2016)
Kim SYH, De Vries R, Peteet JR.Euthanasia and Assisted Suicide of Patients with Psychiatric Disorders in the Netherlands 2011–2014.JAMA Psychiatry. 2016;73(4):362–368.doi: 10.1001/jamapsychiatry.2015.2887.
精神疾患を理由とする安楽死・自殺幇助について、オランダの実態を検討する研究。
Olié & Courtet(2016)
Olié E, Courtet P.The Controversial Issue of Euthanasia in Patients With Psychiatric Illness.JAMA. 2016;316(6):656–657.doi: 10.1001/jama.2016.9883.PMID: 27532920.
精神疾患患者への安楽死をめぐる倫理的・臨床的論点を扱う慎重論として参照。
Bosma et al.(2024)
Bosma F, Mink KR, van Delden JJ, van der Heide A, van de Vathorst S, van Thiel GJM.The Dutch practice of euthanasia and assisted suicide in patients suffering from psychiatric disorders: a qualitative case review study.Frontiers in Psychiatry. 2024;15:1452835.doi: 10.3389/fpsyt.2024.1452835.PMID: 39529899.PMCID: PMC11550960.
精神疾患を理由とする安楽死・自殺幇助について、オランダの実際の審査事例を分析した比較的新しい研究。
3-7.神経疾患・慢性疾患等
Trejo-Gabriel-Galán(2024)
Trejo-Gabriel-Galán JM.Euthanasia and assisted suicide in neurological diseases: a systematic review.Neurología (English Edition). 2024.doi: 10.1016/j.nrleng.2024.01.007.PMID: 38272260.
認知症、ALS、パーキンソン病、多発性硬化症等の神経疾患と安楽死・自殺幇助の関係を検討した系統的レビュー。
3-8.医療者の倫理的負担・実務
Lo(2018)
Lo B.Beyond Legalization—Dilemmas Physicians Confront Regarding Aid in Dying.New England Journal of Medicine. 2018;378(22):2060–2062.doi: 10.1056/NEJMp1802218.
制度を合法化した後に医師が直面する倫理的・臨床的ジレンマを検討する資料。
Ganzini et al.(2000)
Ganzini L, Beer TM, Brouns ER, et al.Physicians' Experiences with the Oregon Death with Dignity Act.New England Journal of Medicine. 2000;342(8):557–563.doi: 10.1056/NEJM200002243420806.
医師が医師幇助死に関与する際の経験・態度を検討した研究。
4.制度に対する反対・慎重論および倫理的論点
本資料では、制度導入を支持する研究だけではなく、安楽死・医師幇助死についての倫理的懸念、制度上の限界、対象範囲の拡大、脆弱な立場にある人々への影響等を扱う研究も参照しています。
Dugdale et al.(2019)
Dugdale LS, Lerner BH, Callahan D.Pros and Cons of Physician Aid in Dying.Yale Journal of Biology and Medicine. 2019;92(4):747–750.
医師幇助死について賛成・反対双方の主要論点を簡潔に整理した論考。
Grassi et al.(2022)
Grassi L, Folesani F, Marella M, et al.Debating Euthanasia and Physician-Assisted Death in People with Psychiatric Disorders.Current Psychiatry Reports. 2022;24(6):325–335.doi: 10.1007/s11920-022-01339-y.
精神疾患患者への医師幇助死をめぐる倫理的・臨床的論争を検討。
Mehlum et al.(2020)
Mehlum L, Schmahl C, Berens A, et al.Euthanasia and assisted suicide in patients with personality disorders: a review of current practice and challenges.Borderline Personality Disorder and Emotion Dysregulation. 2020;7:11.doi: 10.1186/s40479-020-00131-9.PMID: 32742662.
人格障害を含む精神疾患領域における安楽死・自殺幇助の難しさと倫理的課題を検討。
5.カナダMAIDに関する法制度・研究
Browne & Russell(2016)
Browne A, Russell JS.Physician-Assisted Death in Canada.Cambridge Quarterly of Healthcare Ethics. 2016;25(3):377–383.doi: 10.1017/S0963180116000025.PMID: 27348822.
カナダ最高裁判所のCarter判決からMAID法制化へ至る法的背景を検討する資料。
Gupta & Downie(2025)
Gupta M, Downie J.Interpreting and operationalizing the incurability requirement in Canada's assisted dying legislation.Frontiers in Psychiatry. 2025;16:1549289.doi: 10.3389/fpsyt.2025.1549289.PMID: 40165862.
カナダMAIDにおける「重篤かつ治癒不能な医学的状態」の解釈・運用を検討。
6.本資料の利用にあたって
本ページでは、安楽死制度の法制化を提言する立場から制度設計を検討していますが、制度導入によって生じ得る倫理的・社会的・医学的リスクを否定するものではありません。
特に、
意思決定能力の評価
精神疾患を理由とする申請
障害者・高齢者など脆弱な立場にある人への影響
医療者の倫理的負担
緩和ケアとの関係
適用範囲が将来的に拡大する可能性
報告されない事例や統計上把握できない事例
制度導入後の社会的影響
については、慎重な検証が必要です。
そのため、本資料では制度を支持する資料だけでなく、反対・慎重論を含む学術的議論も参照し、日本における制度設計上の課題として検討しています。
また、海外の制度はそれぞれ法的・医療的・社会的背景が異なるため、海外制度の存在そのものをもって「日本でも同じ結果が得られる」と推論するものではありません。
7.関連するRiP:D資料
本資料と併せて、以下の補足資料もご参照ください。
・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』
・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白
・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル
・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策
・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題
・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態
本文の主張 | 根拠 |
海外で安楽死・PASが制度化されている | Emanuel et al. 2016 |
オランダでは厳格なcare criteriaがある | オランダ政府 |
制度運用には臨床上の問題も存在する | Groenewoud et al. 2000 |
精神疾患への適用が議論されている | Kim et al. 2016 / Evenblij et al. 2019 |
障害・脆弱性への影響が議論されている | Lazin & Chandler 2023 / Shavelson et al. 2023 |
緩和ケアとassisted dyingの関係は複雑 | Gerson et al. 2020 |
医療者の心理的・倫理的負担がある | 2019 qualitative study / Cavanagh et al. 2024 |
制度拡大をめぐる懸念がある | Lewis 2007 |
安楽死制度に対する批判的立場も存在 | Sulmasy et al. 2016 |
情報 | 主な確認先 |
法律 | 各国政府・官報・法令 |
実施件数 | 各国政府・監督機関 |
医学的知見 | PubMed・査読論文 |
緩和ケア | WHO・EAPC・査読論文 |
日本の法制度 | 裁判例・厚労省・国会資料 |
制度への批判 | 査読論文・倫理学研究 |
最新情報 | 各国政府・公的機関 |
制度導入をめぐる主な懸念
安楽死制度には、自己決定権や苦痛からの解放という観点がある一方、以下のような懸念も指摘されています。
脆弱な立場にある人への社会的圧力
障害者・高齢者への影響
精神疾患への適用
適用範囲の拡大
審査制度の実効性
医療者の心理的・倫理的負担
緩和ケアとの関係
これらについては、制度導入を支持する立場だけでなく、慎重・反対の立場からの研究も参照し、本資料の制度設計に反映させています。
国会で検討すべき主要論点
対象疾患
余命要件
苦痛の定義
意思能力
精神疾患
障害者への影響
認知症
未成年者
医師の良心的拒否
緩和ケアとの併存
第三者審査
年次報告
独立監査
制度見直し条項





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