スイスの安楽死・自殺ほう助とは?法律・統計・外国人利用・制度の特徴を解説【最新動向】

更新日:5 日前
最終更新日:2026年9月29日
※更新履歴:2023年スイス連邦統計局統計を再確認|SAMSの現行自殺ほう助指針を確認|PubMed収載論文を再検索|2025年EXIT統計について全国統計との混同を修正
👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓
👉 安楽死の定義と分類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓
👉 混同されやすい、安楽死と尊厳死の違いをを知りたい方は、こちら(延命治療との関係も整理)↓
スイスは、安楽死に関する制度が世界で最も特徴的な国の一つです。
ただし、その実態は「安楽死が合法」という単純なものではなく、
「自殺幇助を一定条件で処罰しない」という独自の法構造に基づいています。
この仕組みにより、スイスでは比較的自由度の高い制度が形成され、外国人も利用可能なことから「自殺ツーリズム」と呼ばれる現象まで生まれています。
一方で、規制の緩さや監視体制の不足をめぐる議論も続いており、現在も制度の在り方が問われています。
本記事では、スイスの安楽死(自殺幇助)制度について、
歴史・法律・統計・最新動向を整理し、その特徴と課題をわかりやすく解説します。
国 | 特徴 |
オランダ | 厳格な要件+医師主導 |
フランス | ※2026年7月15日合法化 |
イギリス | 法案停滞 |
スイス | 最も自由(例外的モデル) |
スイス連邦統計局は
・『自殺(suicide)』
と
・『自殺ほう助(assisted suicide)』
を別区分として統計化しています。
本記事でも原則としてこの区別に従います。
👉 安楽死と自殺の違い・関係を整理したい方は、こちらをご覧ください↓
👉 世界各国の安楽死制度を知りたい方は、こちらで解説しています↓
👉【最新版】オランダ安楽死2025年『年次報告書』完全解説|過去最多10,341件・制度運用・年齢・疾患・審査体制を徹底解説
🎧音声による動画解説
要約図(自由使用可)

スイス 安楽死|
歴史と現状(自殺ほう助の法制度・最新統計)
1.スイス 安楽死の歴史的経緯
日本人(あるいは外国人)でも安楽死(より正確には「自殺ほう助」)が可能な国と聞いて、近年ではすっかり「スイス」というイメージが定着したように思われます。
実際、スイスにおける安楽死の歴史は長く、興味深い経緯をたどっています。
まず、スイスの安楽死(自殺ほう助)の議論は、
1942年に年に既存の法律を根拠として始まりました。
スイスの刑法115条には、以下のような記述があります。
「利己的な理由で他者の自殺を誘導・手助けした場合は
5年以下の懲役または罰金刑に処される」
そして、これは以下のように解釈できます。
「それならば、利己的な理由でなければ、
他者の自殺を誘導・手助けするのは
OKということですね?」
これが、その後の安楽死団体(厳密には、自殺ほう助団体)の法的根拠となっていきました。少し『こじ付け』、または『法律の隙間を突いた』とも言えるでしょう(文責者の印象)。
そもそも、この刑法115条は、
“いわゆる安楽死のテーマ”とは、
全く関係のなく、
以下のような背景があったと言われています。

キーフレーズは、
・『自分自身または家族の名誉を守るために自死する人々』へのお手伝い
・恋人に拒絶され、絶望したあげくの自死』そのお手伝い(?)

キーフレーズは、
・『個人的な理由で自分の人生を終わらせたい
と思っている絶望的な個人』その支援
・現代のような、医師が重度の疾患を患者に
自殺ほう助をする意味合いは不在

👉出典:
【安楽死を考えるために: 思いやりモデルとリベラルモデルの各国比較】
単行本 – 2023/11/27 盛永 審一郎 (著)
このような背景・考え方が第2次世界大戦前、
1930年代にスイスで醸成されていたようです。簡単な表現で説明すると、
・利己的な動機でなければ(ここは絶対ルール)
・(=金銭・遺産目的など犯罪行為などの意図がなければ)
・みずから(voluntary)自死したい人の希望を叶えるために
・それを『手伝うこと(assisted death)』は犯罪にならない
このように解されるでしょう。現在、世界中で論議の的となっている
“一般論での安楽死”論議とは異なるという事です。
時々「スイスは1942年から安楽死が認められている、すごい」と称賛する方がいますが、
その発端は医学的なテーマとは関係ないもので少し誤解されたものとも言えるでしょう。
あえて乱暴な例えをするなら、江戸時代では
「切腹する武士の傍らで介錯する担当者は殺人罪に該当しない」という表現でしょうか…。
これは積極的安楽死の項で述べた
・「中絶の大原則は殺人行為に値するが、一定の条件下では小児科医に限っては合法(非刑罰化)」の論理
・「死刑のスイッチを押す係員」の合法性
「正当防衛による殺人」のテーマ…それらと通じる部分があるでしょう。
👉 積極的安楽死とは?定義・日本の法律・海外制度をわかりやすく解説
※留意点:
スイス刑法115条――自殺ほう助の法的基盤
スイスでは、自殺ほう助そのものを包括的に認める「安楽死法」が存在するわけではありません。
スイス刑法115条は、他者の自殺を助けた者について、
利己的な動機(selfish motives)による場合を処罰対象とする規定です。
そのため、利己的な動機がない場合には
刑法115条による処罰対象とはならないという法構造が形成されています。
ただし、これは「どのような自殺ほう助でも自由に実施できる」という意味ではありません。実際には、判断能力、自律的意思、医学的評価、薬剤の処方、専門職の倫理規範、各団体の規則など、複数の条件・実務上の制約が存在します。
スイスの特徴は、「国家が安楽死制度を法律で包括的に設計している」というより、
刑法、薬事関連法、医学倫理指針、民間団体の規則などが組み合わさって自殺ほう助を規律している点にあります。
👉 日本における安楽死の法律的な扱いについては、こちらで詳しく解説しています↓
2.主要な自殺ほう助団体とその特徴
その後、1982年に「エグジット(Exit)」という自殺ほう助団体が設立され、
これが現代のスイス安楽死の出発点となります。
昔から小規模な自殺ほう助グループはあったようですが、知名度や現在も活動している団体となると、Exitが一番著名な安楽死協会といえます。
ただし確認できる範囲では、いわゆる安楽死サービスを提供しはじめた最初の団体は
1980年ドイツは『DGHS』となります↓
👉ドイツの安楽死│実は1980年から実施|連邦憲法裁判所判決と自殺幇助の現在【2020年以降の変化】
スイスには現在、
およそ7つの自殺幇助団体があります。その中で、日本でも特に知られているのは、
1998年設立の ディグニタス(Dignitas)
2011年にそこから分離して独立した ライフサークル(LifeCircle) でしょう。


👉こちらのドキュメンタリーは下記ページから視聴できます(無料)
ライフサークルは日本のテレビ報道でも頻繁に取り上げられ、広く認知されておりますが、残念ながら 2022年以降は新規受付を終了しています。
また、ディグニタスの元コーディネーターが 2019年に設立した
ペガソス(Pegasos) という比較的新しい団体もあり、徐々に知名度を高めております。
とりあえず、スイスでの安楽死(自殺ほう助)に関心を持たれる初心者の方には、
以下の4団体を基本として押さえておくとよいでしょう。
・1982年:
エグジット(Exit) — 国籍を問わないが、対象はスイス在住者のみ
・1998年:
ディグニタス(Dignitas) — 国内外問わず利用可能
・2011年:
ライフサークル(LifeCircle) — 同上(ただし 2022 年以降は新規受付なし)
・2019年:
ペガソス(Pegasos) — 同上
「国籍を問わない」という意味では、
他に Exit International や The Last Resort といった団体も存在します。
ただしこれらはかなり特殊な性格を持つため、別の機会に詳しくご紹介したいと思います。
3.統計で見るスイスの安楽死(利用者数と傾向)
利用者数の推移を見ますと、年々増加傾向にあります。

2023年の最新の統計では、
スイス国内で安楽死(自殺ほう助)された人々は『1729人』でした。
(※2024年、2025年は未公表)

これは全死亡者数の『2.41%』に相当します。
2003年は『185人』でしたが、2023年は『1,729人』
つまり、
20年間で『約835%』増加しています。

国外からスイスの自殺ほう助サービスを受けに来られた外国人は
Dignitasの場合は2023年『235人』でした。
他の団体の統計値は追えなかったのですが、仮に合計すると
少なくとも『500人以上』はいると推測します。
※👉参考:
・Gauthierらは2008~2012年にチューリヒで扱われた外国人による自殺ほう助611件を分析しています。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25142806/
・さらにFischerらの研究では、DignitasとEXITの利用者の違いも分析されています。
Dignitasでは非居住者が91%だった一方、EXITでは3%だったというデータがあります。

なお、重要な点として、
スイスには「安楽死制度(国家により法制化された仕組み)」は存在しません。
つまり、国家が医師による安楽死を制度的に義務付けたり保障したりしているわけではなく、「自殺幇助」が非犯罪化されている(ただし“利己的動機”がなければ許される)という形態です。
実際、一度は「国家システムとして安楽死(自殺幇助)を法制化しよう、または廃止しよう」という案が、州単位(チューリッヒ州)で住民投票にかけられましたが、反対多数により否決されています。
2011年5月15日 の住民投票で否決され、禁止案は約85%が反対、ツーリズム禁止案は約78%が反対。
つまり民間による安楽死という仕組みを、多くの国民が支持していると言えるでしょう。
オランダやカナダの医療制度に根ざした安楽死制度とはやや性格が異なる
「スイス方式」があることを覚えておいてください。
また、この制度の性質ゆえに、スイス国民以外の人々(外国籍の方)が比較的受け入れられているという背景があります。
👉 世界各国の申請プロセスをまとめて確認する場合はこちら↓
👉 世界の安楽死法│法律の紹介↓
4.最新動向と倫理的・社会的議論
・安楽死(自殺ほう助)件数の増加
スイス連邦統計局によれば、2023年には 1729人 が自殺ほう助を選んでおり、
これは2022年の1,594人から 約8.5%の増加です。
このうち 女性が1036人(約59.9%)、男性が693人という構成で、
女性比率の高さも継続しています。
加えて、
2023年のうち 65歳以上が91% を占めており、高齢者での比率が非常に高い傾向です。
・団体の会員数増加
Exit(ドイツ語圏を中心に活動)では、会員数が過去最高を記録しており、
2022年末時点で 約15万4000人 に達しています。
Dignitas も 2022年には 約1万2000人の会員を有しており、
新規会員の多くはアメリカ、ドイツ、英国などから来ています。
スイスではオランダの記事で述べたように“カップル安楽死”が可能ですが、Dignitas では
実際にカップル安楽死を選ぶのはごく一部で、2022年には 206人 となっています
・ガイドラインと倫理
スイス医師会(Swiss Medical Association)は 2022年に “判断能力を持ち、一貫した死の願望を表明する成人” に対して、自殺ほう助は倫理的に妥当とされうるというガイドラインを出しています。スイスの医師会は安楽死を支持していると言えるでしょう。
・新技術・自殺カプセルの論議
2024年9月23日、世界中を驚かせた、フィリップ・ニチケ(Philip Nitschke)氏による 「Sarco(サルコ)ポッド」 と呼ばれる装置。
これは医師を介さず、窒素を使って低酸素状態を作り出し、利用者が自身で操作することで死に至るという仕組み。スイスで初めて実行されました。
この技術は、自殺幇助をこれまでの
医療‐制度的枠組みから離れて実現しうるという点で、
倫理・法制度の観点から新たな議論を呼んでいます。
サルコについては、いずれ単体記事で説明する予定です。
👉 安楽死をめぐる賛否の論点を体系的に整理したい方は、こちらをご覧ください↓
👉 日本の安楽死の歴史・事件を知りたい方は、こちらをご覧ください↓
5.まとめ|スイス安楽死 注意事項
安楽死制度という用語についてですが、
スイス連邦司法庁は英語で明確に assisted suicide と表記しています
(直訳:サポートを受けた自殺=自殺ほう助)。
SAMS(スイス医学アカデミー)も一貫して assisted suicide を使用しています。
👉 安楽死のさまざまな形態と法における位置づけ
したがって「スイスで安楽死する」…そのフレーズ使用は便宜上、間違いではないですが…
厳密にいうと「スイスに“自殺ほう助”(assisted suicide)を受けに行く」が正解です。
ただ、スイス現地では、安楽死に相当する語は
AVD(Assisted Voluntary Death)
を見聞きします。
VAD(voluntary assisted dying)の亜型と考えてください。
つまり、もし現地へ向かわれる方々は、間違っても、
ユーサネイジア(euthanasia)や、メイド(Maid)という言葉は使用しないように気を付けてください。
もちろん現地スタッフは理解して接してくれますが、あまり良い印象は持たないでしょう。
※👉用語の説明については、こちらをご覧ください↓
外国籍の人々の、スイスでの“安楽死サービス”利用者は、年々増加しています。
各国が自前の安楽死制度を創設するのは、
もはやスイスの団体だけで“手に負えない”ほど希望者が溢れているからです。
スイス安楽死団体、Dignitasは
「イギリスは、安楽死希望者の対応を
アウトソーシングするな(スイスに送ってくるな)。
自国で安楽死制度を作ってやりなさい!」
と強い口調で声明を発表している程です
(このことからも安楽死の合法化は世界の潮流となっています)。
👉出典:「重い病気の人が、平穏な死を得るために、自宅や国を離れ、何千マイルも飛ばなければならないのは間違っている」
👉出典:2004年にDIGNITASが英国上院の委員会へ提出した公式文書
「英国で同様の活動をする組織が存在することを望む」
上院 - 末期患者法案の幇助死 - 証拠議事録
つまり、いずれは外国籍としての日本人の受付は終了するだろうと推測しています。
数年後には近隣諸国からの人々のみでアジア圏は対象外となるかもしれません。
日本でスイス行きの手続きをしている方々の間では、
連絡不通や遅延等が始まっており、既にその兆候は見られています。
「いずれはスイスで…」と希望される方は“タイミングを計る必要性”があるでしょう。
👉 安楽死とは何かを整理したい方は、こちらで全体像を確認できます↓
👉 世界の安楽死制度の成立経緯を年代順で知りたい方は、こちら↓
👉 地図で確認する安楽死が合法の国 一覧と各国の制度↓
スイスで使用される用語分類
スイス連邦司法庁は、
・direct active euthanasia(積極的安楽死)
・indirect active euthanasia(間接的安楽死 ≒ 持続的深い鎮静)
・passive euthanasia(受動的・消極的安楽死 ≒ 尊厳死、平穏死、自然死)
・assisted suicide(自殺ほう助)
を明確に区別しています。
直接的な積極的安楽死は刑法上処罰対象であり、
自殺ほう助は刑法115条の「利己的動機による場合」を処罰する構造です。
※👉出典:安楽死のさまざまな形態と法における位置づけ↓
行為 | スイスでの位置づけ |
直接的・積極的安楽死 | 原則として犯罪 |
間接的安楽死 | 一定条件で許容 |
延命治療の差し控え・中止 | 一定条件で許容 |
自殺ほう助 | 刑法115条により一定条件で処罰されない |
本人による最終行為 | 自殺ほう助の重要な特徴 |
👉 安楽死と関係が深い「緩和ケアと安楽死の違い」は、こちらで整理しています↓
スイス・オランダ・カナダの違い
項目 | スイス | オランダ | カナダ |
法的モデル | 刑法等による自殺ほう助 | 法律による制度化 | MAiD法制化 |
医師による直接的安楽死 | 原則不可 | 条件付き | 医療制度内で制度化 |
自殺ほう助 | 条件付きで処罰されない | 条件付き | 法制度内 |
最終行為 | 本人 | 医師または本人 | 医療者等 |
民間団体 | 大きな役割 | 医療制度中心 | 医療制度中心 |
外国人 | 一部団体で可能 | 実務上極めて限定 | 制度上の居住要件等 |
第三者審査 | スイス独自の構造 | 地域審査委員会 | 報告・監督制度 |
制度の特徴 | 非犯罪化+自己規制 | 法律+審査 | 法律+医療制度 |
👉オランダの安楽死法とは?6つの要件・手続き・審査制度をわかりやすく解説
👉カナダMAID(安楽死)とは?申請条件・審査・セーフガードを徹底解説
FAQ(よくある質問)
Q1.スイスでは「安楽死」が合法なのですか?
A. 厳密には異なります。スイスでは、医師が薬剤を投与して患者を直接死亡させる「直接的・積極的安楽死」は刑法上処罰対象です。一方、本人が最終的な行為を行う「自殺ほう助」は、利己的な動機による援助を処罰する刑法115条の枠組みのもとで、一定の条件下で処罰されません。
Q2.スイスには「安楽死法」という法律があるのですか?
A. ありません。スイス医学アカデミー(SAMS)も、スイスには自殺ほう助を包括的に定める全国的な単独法はなく、刑法や薬事関連法、医学倫理指針、団体の規則などが関係していると説明しています。
Q3.安楽死と自殺ほう助は何が違いますか?
A. 最も重要な違いは「誰が死に至る最終行為を行うか」です。積極的安楽死では第三者が薬剤を投与して死亡させますが、自殺ほう助では本人が最終的な行為を行います。
Q4.外国人でもスイスの自殺ほう助を利用できますか?
A. 一部の自殺ほう助団体は外国人を受け入れてきました。このため、外国人がスイスへ渡航して自殺ほう助を受ける「自殺ツーリズム」が研究対象となっています。ただし、団体ごとに条件が異なるため、「外国人なら誰でも利用できる」という意味ではありません。
Q5.スイスでは自殺ほう助を医師が必ず行うのですか?
A. 医師が必ず実施するわけではありません。スイスでは自殺ほう助は主として民間団体が関与する形で行われています。一方、致死薬の処方や判断能力の評価など、医師が関与する部分があります。SAMSは、医師に自殺ほう助を実施する義務はないとしています。
Q6.スイスの自殺ほう助には医学的な条件がありますか?
A. 法律上の枠組みと医学倫理上の条件は区別する必要があります。SAMSのガイドラインでは、判断能力、自律的な意思、耐え難い苦痛、代替手段の検討などを重要な条件として挙げています。
Q7.スイスでは自殺ほう助の件数は増えていますか?
A. 増加しています。スイス連邦統計局によれば、自殺ほう助は2022年に1,594件、2023年には1,729件でした。ただし、2025年の1,421件という数字はスイス全体ではなく、EXITのドイツ語圏・イタリア語圏における実績です。
Q8.「自殺ほう助」と通常の「自殺」は同じ統計ですか?
A. スイス連邦統計局では別区分として扱われています。本記事でも、制度の利用として行われる「自殺ほう助」と、通常の自殺を原則として区別しています。
Q9.緩和ケアを否定しているのですか?
A. いいえ。緩和ケアは終末期医療において重要な役割を持っています。本サイトは、緩和ケアの価値を否定することではなく、緩和ケアによっても解決できない苦痛が存在する場合に、どのような選択肢を制度として検討すべきかという問題を扱っています。
Q10.スイスの制度には問題点や慎重論もありますか?
A. あります。特に、脆弱な人への社会的圧力、判断能力の評価、自殺予防との関係、高齢者・認知症・精神疾患への適用、民間団体による自己規制、統計上把握しにくい事例などが議論されています。これらについては賛成・反対双方の研究を確認する必要があります。
Q11.「滑り坂(slippery slope)」が実際に起きているのですか?
A. 単純に「起きている」「起きていない」と結論づけることはできません。スイスの長期データでは、精神疾患や認知症を背景とするケース数は増加していますが、全体に占める割合は約5%で推移しているとの研究があります。一方、これらの事例が存在すること自体を制度拡大の問題と捉える研究者もいます。
Q12.スイスの制度をそのまま日本に導入すればよいのですか?
A. 必ずしもそうではありません。スイスは、刑法、医学倫理、民間団体の自己規制などが組み合わさった独特の制度構造を持っています。日本で制度を検討する場合には、オランダ、カナダなどの法制化モデルも含め、適格要件、第三者審査、報告・監査、濫用防止などを比較する必要があります。
嘆願書送付アクション
本サイトでは、各国制度、安全性・濫用防止、緩和ケア、身体疾患による苦痛と自殺などについて、国会提出用の補足資料も公開しています。
※世界の制度を比較したうえで、日本で制度設計を考える際には、適格要件、第三者審査、記録・報告、医療従事者の良心的拒否、障害者・高齢者等への配慮、緩和ケアとの関係などを個別に検討する必要があります。
書類 一覧
・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』
・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白
・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル
・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策
・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題
・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態
・カバーレター:ご挨拶(1ページ)
・要約文(2ページ)
👉 日本に安楽死制度を導入するための5つのポイント|制度化への課題・世界の動向・実現への道筋↓
参考文献・学術資料
1.スイスの自殺ほう助の社会的・法的特徴
Hurst SA, Mauron A.“Assisted Suicide in Switzerland: Clarifying Liberties and Claims.”Bioethics. 2017;31(3):199–208.DOI: 10.1111/bioe.12304PMID: 27767219
スイスの自殺ほう助について、本人・援助者それぞれの権利や法的関係を整理し、他国との比較を行った生命倫理研究です。スイス型制度が他国とどのように異なるのかを理解する際に有用です。
2.スイスで自殺ほう助が増加した背景
Steck N, Junker C, Zwahlen M; Swiss National Cohort.“Increase in assisted suicide in Switzerland: did the socioeconomic predictors change? Results from the Swiss National Cohort.”BMJ Open. 2018;8(4).DOI: 10.1136/bmjopen-2017-020992PMID: 29666138
2003~2014年のスイス住民を対象に、自殺ほう助の増加と社会経済的要因を分析した人口ベース研究です。高齢者、性別、教育、居住地域などとの関連を検討しています。
3.社会的要因・脆弱性との関連
Steck N, Junker C, Maessen M, Reisch T, Zwahlen M, Egger M; Swiss National Cohort. “Suicide assisted by right-to-die associations: a population based cohort study.”International Journal of Epidemiology. 2014;43(2):614–622.DOI: 10.1093/ije/dyu010PMID: 24550250
2003~2008年のデータを用いて、自殺ほう助と性別、婚姻状況、単身生活、教育、社会経済的環境などの関連を分析しています。制度利用者の背景を考えるうえで重要な研究です。
4.EXITとDignitasの利用者比較
Fischer S, Huber CA, Imhof L, Mahrer Imhof R, Furter M, Ziegler SJ, Bosshard G. “Suicide assisted by two Swiss right-to-die organisations.” Journal of Medical Ethics. 2008;34(11):810–814.DOI: 10.1136/jme.2007.023887PMID: 18974416
EXIT Deutsche SchweizとDignitasによる自殺ほう助事例を比較した研究です。両団体の利用者の年齢、性別、居住地、疾病などの違いを分析しています。
5.スイスの医学・法律・倫理的枠組み
Bosshard G.“Assisted suicide - medical, legal, and ethical aspects.”Praxis (Bern 1994). 2012;101(3):183–189.DOI: 10.1024/1661-8157/a000828PMID: 22294304
スイスにおける自殺ほう助について、医師の関与、判断能力、説明、法的枠組みなどを医学・法律・倫理の観点から整理しています。
6.外国人による「自殺ツーリズム」
Gauthier S, Mausbach J, Reisch T, Bartsch C.“Suicide tourism: a pilot study on the Swiss phenomenon.”Journal of Medical Ethics. 2015;41(8):611–617.DOI: 10.1136/medethics-2014-102091PMID: 25142806
2008~2012年にチューリヒ法医学研究所で扱われた外国人による自殺ほう助611件を分析した研究です。スイス特有の「自殺ツーリズム」を理解するための主要研究の一つです。
7.自殺予防と自殺ほう助の緊張関係
Reiter-Theil S, Wetterauer C, Frei IA.“Taking One's Own Life in Hospital? Patients and Health Care Professionals Vis-à-Vis the Tension between Assisted Suicide and Suicide Prevention in Switzerland.”International Journal of Environmental Research and Public Health. 2018;15(6):1272.DOI: 10.3390/ijerph15061272PMID: 29914132PMCID: PMC6024894
スイスの病院において、自殺ほう助を求める患者への対応と自殺予防という二つの医療倫理上の責務がどのように衝突し得るかを検討しています。
8.精神疾患・認知症と「滑り坂」論
Güth U, Battegay E, Jox RJ, Abawi K, Weitkunat R, Schneeberger AR.“Assisted suicide in Switzerland (part 1): Medical-ethical controversies and the dilemma of the sorcerer's apprentice.”Praxis (Bern 1994). 2024;113(9):230–234.DOI: 10.23785/PRAXIS.2024.09.003PMID: 39530167
精神疾患・認知症を背景とする自殺ほう助について、いわゆる「滑り坂」論をスイスの長期統計から検討しています。反対論・賛成論の双方を理解するうえで参考になります。
9.高齢者・多疾患併存と統計上の課題
Güth U, Battegay E, Jox RJ, Abawi K, Weitkunat R, Schneeberger AR.“Assisted suicide in Switzerland (part 2): the «invisible» old age suicide.”Praxis (Bern 1994). 2024;113(10):274–279.DOI: 10.23785/PRAXIS.2024.10.007PMID: 39665123
2018~2022年のスイスの自殺ほう助6,608件を分析し、高齢者の多疾患併存によるケースが公的統計では十分に把握できない可能性を指摘しています。
10.緩和ケアと安楽死を単純な対立関係として扱わないための研究
Hurst SA, Mauron A.“The ethics of palliative care and euthanasia: exploring common values.”Palliative Medicine. 2006;20(2):107–112.DOI: 10.1191/0269216306pm1109oaPMID: 16613406
緩和ケアと安楽死・自殺ほう助について、両者の価値観が完全に対立するとは限らないことを検討した論文です。制度議論において緩和ケアを単純な「反対側」として扱わないための参考になります。
調査方法・情報源について
本記事は、スイスの自殺ほう助制度について、法律・公的統計・医学・生命倫理に関する公開資料をもとに整理しています。
主な情報源として、スイス連邦司法庁(Federal Office of Justice)、スイス連邦統計局(Federal Statistical Office)、スイス医学アカデミー(Swiss Academy of Medical Sciences)、PubMed収載の査読付き学術論文などを参照しています。
法制度については、可能な限り政府・公的機関が公表する一次資料を優先し、統計については出典となる統計機関の公表値を確認しています。
学術的な論点については、安楽死・自殺ほう助を肯定的に論じる研究だけでなく、制度上のリスク、脆弱な人への圧力、精神疾患・認知症、社会的要因、医療者の倫理的葛藤などを扱う研究も確認しています。
なお、本サイトは安楽死制度の法制化を求める立場で運営されています。そのため、本記事ではその立場とは別に、制度に対する慎重論・反対論についても可能な限り一次資料および査読付き研究を紹介し、事実関係と意見を区別して記載しています。
情報は更新時点で確認した資料に基づいており、法制度・統計・ガイドライン等に変更があった場合は、可能な範囲で更新します。
本サイトの立場について
RiP:Dは、日本における安楽死制度の法制化を求める立場で活動しています。
そのため、本記事では制度の必要性や制度化を支持する議論を紹介する場合があります。
一方、制度に対する反対・慎重論、制度利用者の脆弱性、自殺予防との関係、判断能力、社会的圧力、制度拡大に関する懸念などについても、可能な限り公的資料および査読付き研究を確認して掲載しています。
本記事における「公的資料」「統計」「研究結果」と、RiPとしての評価・意見は区別して記載しています。

























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