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『安楽死が合法の国で起こっていること』を読む前の注意点|児玉真美の主張・思想背景・障害者運動

執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
リップディー(RiP:D)
5月24日
読了時間: 21分

更新日:10月11日

最終更新日:2026年9月22日(随時更新)

※更新履歴:記事内容を見直し、人物・団体に関する記述の出典を整理|学術論文・公的資料を追加し、事実と主張、RiP:Dの分析を区別する構成に更新|調査方法・参考資料を追記


👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓


👉 安楽死の定義と分類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓


👉 混同されやすい、安楽死と尊厳死の違いをを知りたい方は、こちら(延命治療との関係も整理)↓





はじめに|なぜ『安楽死が合法の国で起こっていること』(安楽死反対論)が注目されているのか


眼鏡の短髪の女性が手を動かしながら話す室内写真。右に日本語の本の表紙「安楽死が合法の国で起こっていること」が見える。

近年、日本でも「安楽死」や「尊厳死」をめぐる議論が急速に広がっています。

SNSでは、



・「回復の見込みがなく、耐え難い苦痛が続く場合には、

 本人が尊厳ある最期を選べる制度も必要ではないか」


・「家族や周囲のためではなく、

 自分自身の意思として最期を選択できる自由は尊重されるべきだ」


・「最終的には、自らの生き方と死に方を

 本人が決める自己決定権を尊重すべきだ」



といった声が日常的に流れるようになりました。


その中で、2023年に出版され大きな反響を呼んだのが、

児玉真美氏の著書

『安楽死が合法の国で起こっていること』です。


しかし、この本を正確に読むためには、単に「安楽死反対本」としてではなく、


“誰が、どのような思想背景から書いているのか”

を理解する必要があります。

なぜなら児玉氏の議論は、一般的な生命倫理論とは大きく異なり、



  • 障害者運動

  • 反優生思想

  • 自立生活運動

  • 左派系ケア論



という文脈の中に位置づけられるからです。




👉 安楽死をめぐる賛否の論点を体系的に整理したい方は、こちらをご覧ください↓



🎧音声による動画解説



要約図(自由使用可)


児玉真美の写真を中心に、安楽死合法化と障害者運動の関係を解説した日本語ポスター。青背景に団体名や書籍表紙、図解が並ぶ。



児玉真美とは何者なのか


児玉真美氏は1956年生まれ。

京都大学文学部を卒業後、米国カンザス大学教育学部で修士課程を修了しています。


現在は、日本ケアラー連盟理事を務めています。

また、重度障害児を育ててきた経験をたびたび公表しており、その経験が思想形成に大きな影響を与えたとされています。


児玉氏は一貫して、


  • 「役に立つ命」

  • 「社会の負担になる命」

  • 「生産性のある人間」


という尺度で人間を評価する社会に強い危機感を示してきました。

この問題意識は、後の安楽死批判へとつながっていきます。



※参考👇


日本ケアラー連盟の役員メンバー。白地に日本語の名簿文書。〔代表理事〕〔理事〕〔監事〕の見出しと複数の氏名・所属が並び、1行に赤い下線が引かれている。



児玉真美の思想|単なる安楽死反対ではない


児玉氏の特徴は、単なる「安楽死反対論者」ではないことです。


彼女は、



・出生前診断

・選択的中絶(※注1)

・尊厳死

・安楽死

・命の選別



を別々の問題としてではなく、全ての項目を



「現代型優生思想」



として連続的に捉えている点が重要です。

つまり、


「障害者は生まれない方がよい」


という思想と、


「重度障害者は死んだ方がよい」


という思想は、本質的には同じ構造ではないか、という問題提起です。

(あるいは、そこに共通する「被害者意識の構造」を問うものでもあります。)




障害者運動と反優生思想の歴史


この考え方は、1970年代以降の障害者運動、特に



  • 青い芝の会

  • 反優生保護法運動

  • 自立生活運動



などの思想的系譜に近いものです。


👉『障害者運動』の詳細と歴史的変遷については、以下2つの記事で説明しています↓



【障害者運動の歴史的変遷】👉上記の記事より↓

障害者運動の歴史的変遷をまとめた日本語インフォグラフィック。1868年から2020年までの活動年表、人物写真、車いすの図、青・赤・紫の区分が並ぶ。


【障害者運動・反優生思想の年表】👇

白地のスライドに「障害者運動・反優生思想の簡易年表」とあり、1948年~2024年の障害者運動や制度の変遷が箇条書きで示されている。

※参考👇



※注1:児玉真美氏の中絶に対する見解↓


児玉真美の思想相関図のインフォグラフィック。中央に話す女性写真、周囲に団体や植松聖、下部に「選択的中絶とは『胎児の選別』である」などの大見出し。



DPI日本会議・JCILとの関係


児玉氏の思想は、


・DPI日本会議 や、

・JCIL(日本自立生活センター)系


の思想と強い親和性を持っています。


※👉DPI日本会議のホームページはこちら↓ 


※👉日本自立生活センター(JCIL)のホームページはこちら↓



DPI日本会議は公式に、



・「命の選別」

・「優生思想」

・「尊厳死法制化」



への反対を掲げています。

同団体は、

「どんなに障害が重くても地域で暮らせる社会」

を理念として掲げています。児玉氏の主張もまた、

「死ぬ自由」より「生きられる社会条件の整備」

を優先する立場です。


DPI日本会議の国内外ネットワークを示す情報図。中央にDPI JAPANロゴ、周囲に緑・橙・青の枠で交流団体や人権団体、朝鮮総連などの関係を箇条書きで整理。

尊厳生 | DPI 日本会議:関連書籍より。白背景に「関連書籍」「『DPI日本会議』のサイトより」とあり、青い箇条書きの書籍一覧。2人の著者名が赤枠で強調されている。

👉尊厳生 | DPI 日本会議:関連書籍より↓



児玉真美の写真を中央に、安楽死反対や障害者運動の関係図を示す日本語の解説図。各団体名や主張、2025年2月京都講演会の文字がある。
児玉真美氏を中心とした「人物・団体」の相関図


京都ALS嘱託殺人事件と障害者運動


2025年2月、京都で開催された講演会では、第一部で


「JCILによる京都ALS嘱託殺人事件の報告」

が行われ、第二部で児玉真美氏が講演しています。



※ALS患者嘱託殺人の全容については以下から学べます↓


※林優里さんが残した言葉↓

ALS患者による記事のスクリーンショット。見出しは安楽死や「ALS患者帰託殺人の女性」「林優里さんのブログより」。本文に赤線と黄枠の強調、白背景。



京都市居宅介護等 事業連絡協議会

京都市生活介護等 事業(障害者デイサービス)連絡協議会

2025年2月合同研修会


京都で開かれる介護関連の研修会チラシ。安楽死合法化の国で起こっていること、2025年2月25日、会場案内とQRコード付き。
赤い四角の「西陣会」に注目(後述)
児玉真美氏の講演。大学の講義室で、マスク姿の講師が壇上で説明し、受講者が前向きに座る。スクリーンに「安楽死が合法の国で起こっていること」と表示。
児玉真美氏の講演

これは、



  • 障害者運動

  • 自立生活運動

  • 反安楽死運動



が相互に接続していることを示す象徴的な構図と言えるでしょう。

また、この事件は障害当事者運動の中で、



「支援不足が

死を望ませる社会」



という文脈でも語られてきました。




※👉参考:

安楽死制度は不要なのか?社会支援が行き届けば解決するという主張の限界を検証する↓




なぜ児玉真美は「自己決定権」に懐疑的なのか


児玉氏の特徴的な点は、

一般的なリベラル派が重視する「自己決定権」に対しても批判的であることです。

彼女が問題視しているのは、



「その自己決定は、本当に自由なのか?」



という社会構造の問題です。

例えば、


  • 貧困

  • 孤立

  • 介護不足

  • 障害差別

  • 家族負担

  • 医療費削減圧力


が存在する社会では、


「死にたい」という意思そのものが社会によって形成される可能性がある

と考えているのです。


この視点は、



・障害学

・左派フェミニズム

・新自由主義批判



とも接続しています。




※👉安楽死における滑り坂論とは何か|反対論とその反論を制度と事実から整理




相模原障害者施設殺傷事件への視点


2016年の相模原障害者施設殺傷事件について、児玉氏は繰り返し、

「植松聖だけが異常なのではない」

と主張してきました。


相模原の施設正面の写真に、植松被告の顔写真と事件説明文が大きく重ねられた、青空の下の報道画像。
相模原障害者施設殺傷事件(2016年7月26日)

彼女が問題視したのは、



・「障害者は不幸」

・「家族の負担」

・「社会保障費」

・「生産性」



を基準に命を語る社会の空気です。

つまり、



「役に立たない命を減らす」



という思想が、社会全体に広がっているのではないか、という問題提起でした。




※👉安楽死は命の序列化か|制度要件と自己決定の観点から検証する




日本基督教団系ネットワークとの接点


先ほど紹介した児玉真美氏の講演会では、事務局に「西陣会」の名が記載されています。


社会福祉法人 西陣会:ホームページ より

・1960年に任意団体として結成

・同志社大学

・日本基督教団西陣教会

・日本聖公会復活教会

・関西労働者伝道委員会

・京都YMCA

・京都YWCA

などの若者有志が結成に関わったことを明記しています。


西陣会の理念と活動を示す日本語ページのスクリーンショット。緑の見出し「日本基督(キリスト)教団に所属する『プロテスタント』集団」、本文の一部が黄枠と赤線で強調されている。


西陣会は、

「日本基督教団」系統の流れを持つ

プロテスタント系福祉団体



です。同団体は、


「隣人を愛することによって平和と正義が確立される」

という理念や、

「人間のかけがえのない価値と尊厳」

を掲げています。


西陣教会は日本キリスト教団(正式には日本基督教団)に所属するプロテスタント(新教)のキリスト教会です。西陣教会の紹介という日本語ページのスクリーンショット。白背景に黒文、赤と緑の下線付きで教会の歴史や人物名が並ぶ。
西陣教会は「日本基督教団」所属するプロテスタントのキリスト教会


また、同志社や日本組合基督教会、日本基督教団との歴史的つながりも紹介されています。

ここには戦後日本で形成された、



・左派プロテスタント

・福祉運動

・平和運動

・社会運動



のネットワークとの接点を見ることができます。

もちろん、児玉氏自身を単純に宗教人として語ることはできません。

しかし、



  • 障害者運動

  • 福祉運動

  • 左派キリスト教

  • 反優生思想



の接点の中で活動していることは、思想背景を理解する上で重要です。


日本基督教団と障害者運動の変遷を示す日本語インフォグラフィック。教会、車椅子の人々、握る手、十字架に赤い×など。

👉 日本基督教団とは? ①|歴史・NCC・社会運動・教育・生命倫理との関係を解説




※👉児玉真美氏が関与するグループの注目事件↓

尊厳死法制化に反対する理由とは?反対運動の構造と2012年尊厳死法案「未提出の真相」




『安楽死が合法の国で起こっていること』を読む際の注意点


『安楽死が合法の国で起こっていること』は、海外事例を扱ったルポのように見えます。

しかし実際には、



「国家や社会が、弱者に死を勧める構造」



への強い警戒感を基盤に書かれています。


そのため、

単に「安楽死制度の問題点を紹介した本」として読むだけでは、

児玉氏の本来の問題意識を誤読してしまう可能性があります。


彼女の議論の中心にあるのは、



  • 障害者運動

  • 反優生思想

  • 命の選別批判

  • 新自由主義批判



だからです。




※👉安楽死の強制リスクとは何か│社会的圧力・同調圧力は本当に現実的なのか




安楽死をめぐる議論で私たちは何を考えるべきか


安楽死をめぐる議論は、単純な「賛成」「反対」だけでは整理できない複雑な問題です。

現実には、



・耐え難い身体的苦痛

・長期療養による精神的負担

・介護疲れ

・孤立

・将来への不安



の中で苦しみ続けている人々が存在します。



※👉 安楽死と自殺の違い・関係を整理したい方は、こちらをご覧ください↓


👉 身体疾患と自殺の関係|警察庁・厚労省統計から見る年間約4,000人規模の実態



その一方で、

「命の選別」や「社会的圧力」の危険性を指摘する声にも、耳を傾ける必要があるでしょう。

児玉真美氏は、障害者運動や反優生思想の立場から、


「死を選ばされる社会」


への警鐘を鳴らしてきました。


しかし同時に、

回復の見込みがなく、本人が耐え難い苦痛の中で熟慮の末に望む選択については、



「本人の尊厳ある生き方・死に方」



として議論すべきだという考え方も、世界的には広がりつつあります。




👉 世界の安楽死制度の成立経緯を年代順で知りたい方は、こちら↓


※👉 世界各国の安楽死制度を知りたい方は、こちらで解説しています↓



重要なのは、どちらか一方の理念だけで語ることではなく、



  • 十分な福祉や支援

  • 緩和ケアの充実

  • 障害者支援

  • 本人意思の確認

  • 制度の厳格な運用



を前提に、



「人が最期までどう生きるか」



を社会全体で考えていくことではないでしょうか。



※👉 安楽死と関係が深い「緩和ケアと安楽死の違い」は、こちらで整理しています↓


👉 緩和ケアの限界とは?│難治性疼痛・緩和的鎮静と安楽死を考える↓


👉 持続的深い鎮静の限界とは?│緩和ケアにおける目的・適応・安楽死との違いと限界



児玉氏の思想的背景を理解することは、安楽死問題を多角的に考える上で重要です。

その上で私たちは、


「生きることを支える社会」


と同時に、



本人の尊厳ある選択



についても、冷静に議論していく必要があるのかもしれません。





👉 日本における安楽死の法律的な扱いについては、こちらで詳しく解説しています↓


👉 安楽死とは何かを整理したい方は、こちらで全体像を確認できます↓


👉 地図で確認する安楽死が合法の国 一覧と各国制度は、こちらで詳しく解説しています↓




安楽死反対論を検証する論点

論点

児玉氏・反対論側の問題提起

制度推進側からの主な応答

実証的に確認すべき資料

自己決定

社会的圧力で意思が形成される可能性

熟慮された本人意思を複数回確認

制度要件・審査資料

障害

障害者が「負担」と感じる危険

障害そのものを適格性要件にしない

各国制度

貧困

経済的理由で死を選ぶ可能性

社会保障との切り離しが必要

MAiD・各国調査

緩和ケア

苦痛はケアで軽減できる

それでも残る苦痛が存在

緩和ケア研究

滑り坂

適用対象が拡大する可能性

法律上の要件・審査で制御

オランダ長期研究

医師

医療者による判断の危険

複数医師・第三者審査

RTE等

尊厳

「生きる価値」の評価につながる危険

本人の価値観を尊重

生命倫理研究

👉 緩和ケアの限界とは?終末期の苦痛と安楽死制度を考える|国立がん研究センター・京都大学のデータ


👉 緩和ケアの限界とは何か|痛みが消えない終末期医療の実態と国内外の証言



児玉真美氏の議論を理解する4層構造


              児玉真美氏の安楽死批判

              │

┌────────────────┼────────────────┐

↓              ↓              ↓

障害者運動           反優生思想            社会的支援

│              │              │

└────────────────┼────────────────┘

              ↓

            自己決定への問い

              ↓

            「本当に自由な選択か?」

              ↓

            安楽死制度への批判


では、制度設計によってどこまでこの問題を防げるのか?



👉 世界各国の申請プロセスをまとめて確認する場合はこちら(ハイライト)↓


👉 世界の安楽死法│法律の紹介↓




FAQ(よくある質問)


Q1.『安楽死が合法の国で起こっていること』はどのような本ですか?

A.児玉真美氏が2023年に刊行した著書で、オランダ、ベルギー、カナダなどの安楽死制度について、対象者の拡大、制度要件、社会保障、障害者、緩和ケアなどの観点から批判的に検討した本です。本記事では、本書の主張を紹介するとともに、その背景にある障害者運動、反優生思想、自己決定をめぐる議論を整理しています。


Q2.児玉真美氏はどのような人物ですか?

A.児玉真美氏はフリーライターとして活動しており、日本ケアラー連盟の公式役員ページでは理事として掲載されています。京都大学文学部卒業後、カンザス大学教育学部で修士課程を修了したことが国立国会図書館等の資料で確認できます。


Q3.児玉真美氏は安楽死についてどのような立場ですか?

A.児玉氏は、安楽死・尊厳死を、本人の自己決定だけでなく、障害者の生存、社会的支援、優生思想、介護や福祉のあり方などと関連する問題として批判的に論じています。本記事では、児玉氏自身の著作・発言と、RiP:Dによる分析を区別して紹介しています。


Q4.DPI日本会議と児玉真美氏にはどのような関係がありますか?

A.DPI日本会議は公式に、安楽死・尊厳死法制化や「命の選別」に関する反対の立場を示しています。また、DPI日本会議の公式資料では児玉真美氏の著書が関連書籍として紹介されています。ただし、これらの事実だけから両者の思想を完全に同一視することはできません。


Q5.西陣会と児玉真美氏にはどのような接点がありますか?

A.西陣会は公式サイトで、日本基督教団西陣教会などが1960年の結成に関わったことを説明しています。また、西陣会の公式広報資料では、2025年2月25日に開催された『安楽死が合法の国で起こっていること』に関する合同学習会に、主催側として参加したことが確認できます。


Q6.安楽死と尊厳死は同じ意味ですか?

A.一般には同じ意味ではありません。積極的安楽死は、医療者が薬剤等によって患者の生命を意図的に短縮することを指します。一方、日本で「尊厳死」と呼ばれる議論には、本人の意思に基づいて延命治療の開始・不開始・中止などを検討する問題が含まれます。ただし、用語の使い方には文献や国による違いがあります。


Q7.このページは緩和ケアを否定しているのですか?

A.いいえ。本ページは緩和ケアそのものを否定するものではありません。厚生労働省も、人生の最終段階では疼痛や不快な症状の緩和、精神的・社会的援助を含む総合的な医療・ケアが重要だとしています。本サイトでは、緩和ケアの重要性と、緩和ケアだけでは解決できない苦痛については分けて議論しています。


Q8.安楽死制度には社会的圧力や強制のリスクはないのでしょうか?

A.リスクがないと断定することはできません。実際、社会的・経済的な脆弱性や意思決定への影響は、安楽死制度をめぐる重要な倫理的論点です。一方、オランダやオレゴン州の実証研究では、特定の脆弱な集団に対する不均衡な影響について異なる結論が示されており、研究結果は一様ではありません。そのため、本サイトでは制度設計、意思確認、第三者審査、社会保障などを含めて検討する必要があると考えています。


Q9.安楽死反対論や慎重論も検討していますか?

A.はい。本サイトでは、安楽死を支持する研究だけでなく、滑り坂論、脆弱な人々への影響、自己決定の限界、制度運用上の問題などを指摘する研究も紹介しています。また、反対論に対する批判的研究も併記し、異なる立場を比較できるようにしています。


Q10.このページの目的は、児玉真美氏を批判することですか?

A.本ページの目的は、特定の人物を人格的に評価することではありません。『安楽死が合法の国で起こっていること』を読む際に、その主張がどのような障害者運動、反優生思想、社会保障、自己決定などの議論と結びついているのかを整理し、読者が本の内容をより多角的に検討できるようにすることを目的としています。


Q11.日本では安楽死は合法ですか?

A.積極的安楽死を一般的に認める法律は現在日本にはありません。日本の裁判では安楽死が刑事責任との関係で問題となった事例があり、1962年の名古屋高裁判決や1995年の横浜地裁・東海大学病院事件判決などがあります。厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」も、生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死を対象としていません。


Q12.RiP:Dは安楽死に賛成する立場ですか?

A.RiP:Dは、日本における終末期の自己決定と人道的終末選択について、法制度の整備を求める立場を示しています。ただし、本ページでは、まず安楽死をめぐる反対論・慎重論の内容をできるだけ正確に紹介し、その根拠や制度上の論点を検討することを目的としています。




ここまで読まれた方へ

本記事では、安楽死制度に対する反対・慎重論の背景を整理しました。

RiP:Dでは、これらの懸念を踏まえたうえで、本人意思の確認、第三者審査、緩和ケアとの関係、濫用防止などを含む制度設計について検討しています。


嘆願書送付アクション


本サイトでは、各国制度、安全性・濫用防止、緩和ケア、身体疾患による苦痛と自殺などについて、国会提出用の補足資料も公開しています。



書類 一覧


・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』

・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白

・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル

・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策

・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題

・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態

・カバーレター:ご挨拶(1ページ)

・要約文(2ページ)



👉 日本に安楽死制度を導入するための5つのポイント|制度化への課題・世界の動向・実現への道筋↓







出典・参考文献


1.児玉真美氏・著書

児玉真美(2023)『安楽死が合法の国で起こっていること』筑摩書房、ちくま新書1759。ISBN 978-4-480-07577-2。

本書は、オランダ、ベルギー、カナダなどの安楽死・医師幇助自殺制度について、対象者の拡大、制度要件、社会保障、障害者、緩和ケアなどの観点から批判的に論じています。



2.オランダの終末期医療

van der Heide A, Onwuteaka-Philipsen BD, Rurup ML, et al. “End-of-life practices in the Netherlands under the Euthanasia Act.” New England Journal of Medicine. 2007;356(19):1957–1965. DOI: 10.1056/NEJMsa071143. PMID: 17494928.

オランダの安楽死法施行後の終末期医療を調査した代表的研究です。安楽死、医師幇助自殺、緩和的鎮静などの実態を比較しています。



3.「脆弱な人々」への影響を検討した研究

Battin MP, van der Heide A, Ganzini L, van der Wal G, Onwuteaka-Philipsen BD. “Legal physician-assisted dying in Oregon and the Netherlands: evidence concerning the impact on patients in ‘vulnerable’ groups.” Journal of Medical Ethics. 2007;33(10):591–597. DOI: 10.1136/jme.2007.022335. PMID: 17906058.

高齢者、障害者、低所得者、精神疾患のある人など、いわゆる「脆弱な集団」に対する不均衡な影響があるかを、オレゴン州とオランダのデータから検討しています。



4.上記研究への批判的検討

Finlay IG. “Legal physician-assisted suicide in Oregon and The Netherlands: evidence concerning the impact on patients in vulnerable groups--another perspective on Oregon's data.” Journal of Medical Ethics. 2010. DOI: 10.1136/jme.2010.037044. PMID: 21071568.

Battinらの研究結果について、脆弱性の捉え方やオレゴン州のデータ解釈などの観点から批判的に検討した論文です。



5.滑り坂論に関する研究

Keown J. “Euthanasia in the Netherlands: sliding down the slippery slope?” Notre Dame Journal of Law, Ethics & Public Policy. 1995;9(2):407–448. PMID: 11653001.

オランダの安楽死制度を、制度の拡大や「滑り坂」論の観点から批判的に検討した研究です。



6.法制化前後のオランダを長期比較した研究

Onwuteaka-Philipsen BD, Brinkman-Stoppelenburg A, Penning C, de Jong-Krul GJF, van Delden JJM, van der Heide A. “Trends in end-of-life practices before and after the enactment of the euthanasia law in the Netherlands from 1990 to 2010: a repeated cross-sectional survey.” The Lancet. 2012;380(9845):908–915. DOI: 10.1016/S0140-6736(12)61034-4. PMID: 22789501.

1990年から2010年までのオランダの終末期医療を比較し、安楽死法施行前後の実践の変化を検討しています。



7.制度上の不適合事例を検討した研究

“Euthanasia and physician-assisted suicide not meeting due care criteria in the Netherlands: a qualitative review of review committee judgements.” 2017. PMID: 29074515.

オランダの安楽死審査委員会が公表した、法定の注意義務基準を満たさなかった事例を分析しています。制度の安全性だけでなく、審査・監督が必要であることを検討する際の資料となります。



8.日本の医師・一般市民の意識

“Disparity in attitudes regarding assisted dying among physicians and the general public in Japan.” 2025. PMID: 39833823.

日本の医師と一般市民を対象として、安楽死・医師幇助自殺に対する態度を比較した研究です。日本国内における終末期の自己決定をめぐる議論を考えるための基礎資料となります。



9.日本の終末期医療に関する公的資料

厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」

本人による意思決定を基本とし、医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえて方針を決定することを示しています。また、生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死はガイドラインの対象外とされています。



10.オランダ政府

Government of the Netherlands, “Is euthanasia legal in the Netherlands?”

オランダの安楽死・医師幇助自殺について、本人の自発的で熟慮された意思、耐え難く改善の見込みのない苦痛、代替手段の不存在、独立した医師による診察など、法定の注意義務基準を説明しています。



11.DPI日本会議

DPI日本会議「尊厳生」

DPI日本会議が安楽死・尊厳死法制化・「命の選別」について示している公式見解および関連資料を確認することができます。



12.西陣会

社会福祉法人西陣会「西陣会について」

西陣会の沿革、1960年の結成経緯、日本基督教団西陣教会・同志社大学・京都YMCA・京都YWCA等との歴史的関係、現在の法人理念などを確認できます。




本記事の立場と調査方法

本記事の立場について

RiP:Dは、日本における安楽死制度の法制化を支持する立場から情報発信しています。そのため、本記事においても、安楽死制度をめぐる議論について、制度化を検討する立場からの視点が含まれています。


一方、本記事で取り上げる児玉真美氏をはじめ、安楽死・尊厳死の法制化に慎重または反対する立場からは、自己決定だけでは捉えられない問題として、障害者・高齢者など社会的に脆弱な立場にある人への影響、社会的圧力や周囲からの期待、意思決定の自由、優生思想との関係、医療者の倫理、緩和ケアとの関係、制度の適用範囲が拡大する可能性など、さまざまな論点が提起されています。


本記事では、こうした反対・慎重論を単に否定するのではなく、「誰が、どのような根拠から、何を問題としているのか」を確認することを重視しています。

そのうえで、本人や関係団体が公表している資料、公的機関の資料、海外の制度運営機関による資料、査読付き学術論文などを参照し、確認できる事実と、当事者・団体による主張、そしてRiPによる分析・見解を可能な限り区別して記述しています。


特に、児玉真美氏と障害者運動、反優生思想、DPI日本会議、JCIL、西陣会、日本基督教団などとの関係については、人的・組織的な接点が確認できることと、そこから思想的な関係を推論することを同一視しないよう注意しています。

本記事の目的は、特定の人物や団体を人格的に評価することではありません。


『安楽死が合法の国で起こっていること』を読む際に、その背景にある障害者運動、反優生思想、自己決定、社会保障、ケアなどの議論を整理するとともに、安楽死制度に対する反対・慎重論がどのような問題提起を行っているのかを確認し、その主張を制度・法律・医学・学術研究の観点から検討することを目的としています。


読者の皆様には、本記事の記述だけで結論を判断するのではなく、可能な限り本文中に示した一次資料・公的資料・学術論文も確認し、それぞれの論点についてご自身で検討していただくことをおすすめします。



調査方法

本記事では、人物・団体に関する情報について、可能な限り本人、所属団体、関係機関等が公開している一次資料を確認しています。

書籍・著者情報については、出版社、国立国会図書館等の書誌情報を参照しています。

学術研究については、PubMedをはじめとする医学・生命倫理関連の文献データベースおよび査読付き学術誌を検索し、可能な限り、著者名、論文タイトル、雑誌名、発行年、巻号、ページ、DOI、PubMed IDまで確認しています。


安楽死・尊厳死をめぐる学術研究については、制度化に肯定的な研究だけでなく、制度上のリスク、社会的圧力、脆弱な立場にある人への影響、滑り坂論、意思決定能力などを扱う反対・慎重論の研究についても確認しています。

法制度については、日本の法令・判例・国会資料に加え、オランダ、ベルギー、カナダ、米国オレゴン州など、安楽死・医師幇助自殺等に関する制度を持つ国・地域の政府、議会、司法機関、制度運営機関等が公開する一次資料を優先しています。


制度の利用状況や件数については、可能な限り各国政府・公的機関・制度運営機関が公表する年次報告書や統計資料を使用し、二次資料を使用する場合には、その出典を明示するよう努めています。

また、学術論文や公的資料の内容を紹介する際には、資料が実際に述べている内容と、RiPによる解釈・評価を区別することを基本としています。


なお、公開資料だけでは確認できない人物・団体間の関係や、思想的な影響関係については、推測によって補完せず、「確認できる接点」と「そこから考えられる可能性」を区別して記載します。

本記事の情報は、公開資料の追加・更新、研究成果の公表、各国の法制度の変更等に応じて、必要に応じて更新します。

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