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京都ALS患者嘱託殺人事件とは?林優里さんの経緯・裁判・判決と安楽死論議

執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
リップディー(RiP:D)
2025年9月13日
読了時間: 12分

更新日:10月4日

最終更新日:2026年10月4日

※更新履歴:最高裁決定を反映|裁判経過を更新|学術文献を追加|参考資料を再整理




【ALS患者嘱託殺人事件の概要】女性:林 優里さん

(2019年11月30発生)


ALS患者嘱託殺人の全体像を表した図。【京都ALS患者嘱託殺人事件】タイムライン。2011年ALS発症から2019年事件発生までの経過。背景に地球の画像とテキスト。
ALS患者嘱託殺人の経過・全体像

京都ALS患者嘱託殺人事件の概要


京都ALS患者嘱託殺人事件は、2019年11月30日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患っていた林優里さん(当時51歳)が、医師2人から薬物を投与され死亡した事件です。


林さんは生前、ブログやSNSなどで安楽死について継続的に発信していました。

そのため、この事件は単なる刑事事件としてだけでなく、ALS患者の自己決定、終末期医療、障害のある人の生存、緩和ケア、医師による死への関与などをめぐる議論を引き起こしました。


一方で、この事件について裁判所が「合法的な安楽死」を認めたわけではありません。

2024年3月、京都地方裁判所は、林さんに対する嘱託殺人などの罪により、大久保愉一被告に懲役18年を言い渡しました。裁判では、弁護側が憲法13条の個人の尊厳・自己決定権を根拠に嘱託殺人罪の適用は違憲であると主張しましたが、京都地裁はこれを退けました。


2024年11月、大阪高等裁判所も控訴を棄却し、一審判決を支持しました。

さらに2025年6月、最高裁判所第二小法廷が上告を棄却し、懲役18年の判決が確定しました。

したがって、現在の日本において本事件を「合法的な安楽死の実施例」と位置づけることはできません。



事件のタイムライン

年月日

出来事

意味

2011年

林さんがALSを発症

長期にわたる療養・終末期意思決定の背景

2018年4月頃

SNSで安楽死をめぐる発信

本人の意思・考えを知る重要資料

2019年11月30日

林さん死亡

事件発生

2020年7月23日

医師2人逮捕

事件が社会的に公表

2024年3月5日

京都地裁判決

大久保被告に懲役18年

2024年11月25日

大阪高裁判決

控訴棄却・懲役18年を支持

2025年6月10日

最高裁決定

上告棄却

2025年6月

判決確定

大久保被告の懲役18年が確定




ALSを患った女性患者・林 優里さんが

皆さんに一番伝えたかったこと


ALS患者嘱託殺人の女性、林優里さんが残した文章

林 優里さんのブログより




「どうか彼女が残した言葉を聴いてください」



※タンゴレオ=林 優里さんのXハンドルネーム

・ALS患者 タンゴレオの挑戦(ブログ)


・3分で読めるtangoleoさん超まとめツイート


・tangoleoさんのツイートまとめ(詳細版)







ALS患者嘱託殺人の女性、林 優里さんのX投稿文を挿入しながら、この事件の真相をまとめた動画です。長編ですが、是非ともご視聴のほどよろしくお願いいたします。





👉 地図で確認する安楽死が合法の国 一覧と各国の制度↓




京都ALS患者嘱託殺人事件|2011~2025年タイムライン

2011

ALS発症

↓

2018

安楽死について発信

↓

2019.11.30

林さん死亡

↓

2020.07

医師2人逮捕

↓

2024.03

京都地裁

懲役18年

↓

2024.11

大阪高裁

控訴棄却

↓

2025.06

最高裁

上告棄却

↓

判決確定



本人の意思をめぐる5つの論点

本人の意思

↓

① 意思は継続的か

② 十分な情報を得ていたか

③ 医学的評価を受けたか

④ 他の選択肢を検討したか

⑤ 外部からの圧力はなかったか




安楽死を知るための9記事


⓪ 👉安楽死とは

この記事を読めば、安楽死の全体像が5分で理解できます。

→ 安楽死とは?わかりやすく解説|種類・法律・世界の現状【完全ガイド】



① 👉種類

積極的・消極的・間接的の違いを具体例つきでわかりやすく解説します。

混同しやすいポイントも整理しています。

→ 安楽死の種類とは?積極的・消極的・間接的の違いをわかりやすく解説【具体例あり】



② 👉日本の法律

判例や条件をもとに、どこまで許されるのかをわかりやすく解説します。

→日本で安楽死は合法?違法?|法律・裁判・判例から結論をわかりやすく解説



③ 👉尊厳死

安楽死と尊厳死は何が違うのか?

混同されやすい2つの違いを、法律と医療の観点から整理して解説します。

→ 安楽死と尊厳死の違いとは?どちらが合法?混同される理由をわかりやすく解説



④ 👉世界

安楽死が認められている国はどこなのか?

各国の制度や条件の違いを整理し、わかりやすく一覧で解説します。

→ 安楽死が合法な国一覧|日本との違いと条件をわかりやすく解説【2026年最新】



⑤ 👉緩和ケア

安楽死と緩和ケアは何が違うのか?

苦痛の軽減という観点から、それぞれの考え方と役割をわかりやすく解説します。

→ 安楽死と緩和ケアの違いとは?|目的・方法・限界「どこまで出来るか」を完全解説



⑥ 👉賛否

安楽死は本当に許されるべきなのか?

賛成・反対それぞれの理由を整理し、海外の議論も含めて比較します。



⑦ 👉自殺

安楽死と自殺は同じものなのか?

法律・倫理・医療の観点から、その違いをわかりやすく解説します。

→ 安楽死と自殺の違いとは?│法律・倫理の観点から分かりやすく解説



⑧ 👉歴史

日本の安楽死の歴史・事件にはどのようなものがあるのか?

安楽死はどのように変化してきたのか?

ナチス時代から現代までの流れを時系列で整理して解説します。


→ 安楽死 日本の歴史|事件・裁判・ガイドラインでわかる終末期医療の全体像


→ 安楽死の歴史をわかりやすく解説|ナチスから現代まで何が変わったのか?




FAQ|京都ALS患者嘱託殺人事件について


Q1.京都ALS患者嘱託殺人事件とは何ですか?

A. 2019年11月30日、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っていた林優里さん(当時51歳)が、医師2人から薬物を投与され死亡した事件です。

林さんは生前、安楽死についてブログやSNSで発信していました。そのため、事件は刑事事件としてだけでなく、ALS患者の自己決定、終末期医療、障害者の生存、緩和ケア、医師による死への関与などをめぐって議論されました。


Q2.この事件は合法的な「安楽死」だったのですか?

A. いいえ。日本では積極的安楽死を一般的に合法化する法律は存在しておらず、この事件について裁判所が合法的な安楽死を認めたわけでもありません。

裁判では嘱託殺人罪の成立や、本人の自己決定権などが争点となりました。大久保愉一被告には懲役18年の判決が言い渡され、その後、控訴棄却を経て2025年に最高裁が上告を棄却し、判決が確定しました。


Q3.林優里さんは本当に安楽死を望んでいたのですか?

A. 林さん本人が生前に公開したブログやSNSには、ALSによる生活上の苦痛や将来への不安、安楽死についての考えが記されています。

ただし、本人の発言と、裁判所が認定した事実、医学的な評価はそれぞれ別の情報です。本ページでは、本人が公開した資料を「本人による一次資料」として紹介し、それだけをもって医学的・法的な結論を導くことは避けています。


Q4.裁判では何が問題になったのですか?

A. 主な論点の一つは、ALS患者本人が自らの死を望み、他者の援助を受けて生命を終えることについて、嘱託殺人罪を適用することが憲法13条の個人の尊厳や自己決定権に反するかという点でした。

また、本人の意思をどのように確認したのか、医師として十分な診察や医学的評価が行われたのかといった点も重要な問題となりました。


Q5.安楽死と尊厳死は同じですか?

A. 同じではありません。

一般に安楽死は、本人の意思に基づき、医療者などが生命を意図的に終わらせる行為を指します。一方、尊厳死という言葉は、延命治療の差し控え・中止などを通じ、自然な死の過程を尊重する意味で使われることがあります。

法律や制度によって用語の定義は異なるため、両者を区別して考える必要があります。


Q6.この事件は「医師幇助自殺」と同じですか?

A. 同じではありません。

医師幇助自殺では、医師が死をもたらす薬剤などを提供し、最終的な行為を本人が行う形態が一般的です。

一方、医師が薬剤を投与して本人を死亡させる場合は、行為主体が異なります。

海外制度では、安楽死と医師幇助自殺の双方を認める国もありますが、制度上の定義や要件は国によって異なります。


Q7.この事件を取り上げることは、緩和ケアを否定することになりますか?

A. いいえ。

緩和ケアは、ALSを含む重い疾患を抱える人の症状、心理的苦痛、社会的問題、家族の負担などを支える重要な医療・ケアです。

ALSの終末期では、人工呼吸器、栄養管理、症状緩和、ACPなどを含む複雑な意思決定が必要になることが学術研究でも指摘されています。

RiPでは、緩和ケアを充実させることと、緩和ケアだけでは解決できないと考える患者の選択を制度上どう扱うかを議論することは、両立し得ると考えています。


Q8.安楽死制度にはどのようなリスクがありますか?

A. 本人の意思に対する家族・社会からの圧力、障害や高齢を理由とした価値判断、意思決定能力の評価、精神状態の影響、医師の判断、制度の適用範囲、第三者審査の実効性などが議論されています。

安楽死制度を検討する場合には、制度を導入することだけでなく、こうしたリスクをどのように防止するかを法律上明確にする必要があります。


Q9.RiP:Dはこの事件をどのように位置づけていますか?

A. RiP:Dでは、この事件を「合法的な安楽死の実施例」とは位置づけていません。

一方で、本人が生前に安楽死について明確な発信を続けていたことや、ALS患者の終末期における自己決定、医療・介護、緩和ケア、社会的支援のあり方について重要な問題を提起した事件であると考えています。

そのため、事件そのものの刑事責任と、日本に安楽死制度を設けるべきかという政策論を分けて考える必要があると考えています。




嘆願書送付アクション


本サイトでは、各国制度、安全性・濫用防止、緩和ケア、身体疾患による苦痛と自殺などについて、国会提出用の補足資料も公開しています。



書類 一覧


・嘆願書 本文『人道的終末選択の法制化に関する提言書』

・補足資料① 日本における安楽死制度の法的現状と制度的空白

・補足資料② 各国制度比較と日本への制度モデル

・補足資料③ 制度設計・安全性確保・濫用防止策

・補足資料④ 緩和ケアの限界と終末期医療の課題

・補足資料⑤ 身体疾患・身体障害による苦痛と自殺の実態

・カバーレター:ご挨拶(1ページ)

・要約文(2ページ)



👉 日本に安楽死制度を導入するための5つのポイント|制度化への課題・世界の動向・実現への道筋↓






参考文献・調査資料


本ページでは、事件の事実関係について裁判資料・公的資料・本人が生前公開した資料を優先し、医学・終末期医療・生命倫理に関する論点については、PubMed収載論文および査読付き学術論文を参照しています。


また、安楽死制度を支持する立場の研究だけでなく、制度上のリスクや障害者の意思決定、安全性に関する慎重論も確認しています。


1.裁判・公的資料

・京都地方裁判所「令和5年(2023年)12月19日」

ALS患者に対する嘱託殺人等をめぐる第一審判決。弁護側が憲法13条の個人の尊厳・自己決定権を根拠として嘱託殺人罪の適用を争ったこと、裁判所がその主張をどのように判断したかを確認するための一次資料です。

→ 裁判所公開判決文 hanrei-pdf-92633.pdf


・厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」

本人による意思決定を基本とし、医療・ケアチームとの十分な話し合いを踏まえて方針を決定するという、日本の終末期医療における基本的な意思決定プロセスを示しています。



2.ALSと終末期意思決定

Smyth A, Riedl M, Kimura R, Olick R, Siegler M. End of life decisions in amyotrophic lateral sclerosis: a cross-cultural perspective. Journal of the Neurological Sciences. 1997;152(Suppl 1).DOI: 10.1016/S0022-510X(97)00253-0.PMID: 9419063.

ALS患者の終末期意思決定について、日本・米国・英国を含む文化・制度の違いを比較したレビューです。



3.ALSと緩和ケア・倫理

・Danel-Brunaud V, Touzet L, Chevalier L, Moreau C, Devos D, Vandoolaeghe S, Defebvre L. Ethical considerations and palliative care in patients with amyotrophic lateral sclerosis: A review. Revue Neurologique. 2017;173(5):300-307.DOI: 10.1016/j.neurol.2017.03.032.PMID: 28479121.

ALSにおける症状緩和、人工呼吸器、栄養管理、意思決定、ACPなどを倫理的観点から整理したレビューです。


・Sethi A, Everett E, Mehta A, et al. The Role of Specialty Palliative Care for Amyotrophic Lateral Sclerosis. American Journal of Hospice & Palliative Medicine. 2022;39(7):865-873.DOI: 10.1177/10499091211049386.PMID: 34583569.

ALSに対する専門的緩和ケアについて、症状管理、ACP、生活の質、家族支援、終末期ケアなどを検討しています。



4.ALS患者との終末期コミュニケーション

Genuis SK, Luth W, Campbell S, Bubela T, Johnston WS. Communication About End of Life for Patients Living With Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Scoping Review of the Empirical Evidence. Frontiers in Neurology. 2021;12:683197.DOI: 10.3389/fneur.2021.683197.PMID: 34421792.

ALS患者の終末期医療、ACP、生命維持治療、緩和ケア、終末期の選択肢について、既存研究を幅広く検討したスコーピングレビューです。



5.安楽死制度の安全性・慎重論

Gibbes Miller D, Kim SYH. Euthanasia and physician-assisted suicide not meeting due care criteria in the Netherlands: a qualitative review of review committee judgements. BMJ Open. 2017;7(10).DOI: 10.1136/bmjopen-2017-017628.PMID: 29074515.

オランダで法定の適正要件を満たしていないと判断された事例を分析し、手続き上・実質上の安全基準がどのように機能しているかを検討しています。



6.障害と安楽死制度をめぐる論点

Tuffrey-Wijne I, Curfs L, Finlay I, Hollins S.Euthanasia and assisted suicide for people with an intellectual disability and/or autism spectrum disorder: an examination of nine relevant euthanasia cases in the Netherlands (2012-2016).BMC Medical Ethics. 2018;19(1):17.DOI: 10.1186/s12910-018-0257-6.PMID: 29506512.

知的障害・自閉スペクトラム症のある人を対象としたオランダの安楽死・医師幇助自殺事例を検討し、意思決定能力や制度上の安全性について重要な論点を提示しています。



7.カナダとオランダの制度比較

Mishara BL, Kerkhof AJFM.Canadian and Dutch doctors' roles in assistance in dying.Canadian Journal of Public Health. 2018;109(5-6):726-728.DOI: 10.17269/s41997-018-0079-9.PMID: 29981089.

カナダとオランダにおける医師の役割、患者の苦痛、代替手段、緩和ケアとの関係を比較しています。



8.日本における安楽死・医師幇助自殺の法政策

Euthanasia, assisted suicide, and cessation of life support: Japan's policy, law, and an analysis of whistle blowing in two recent mercy killing cases. Social Science & Medicine.DOI: 10.1016/S0277-9536(01)00184-8.PMID: 12188460.

日本における安楽死、医師幇助自殺、生命維持治療の中止について、過去の事件・判例・政策を歴史的に検討した研究です。



9.本人が生前公開した資料

林優里さんが生前に公開していたブログ・SNS等については、本人の意思や考えを確認する一次資料として参照しています。

ただし、これらは本人自身による発信であり、医学的評価や裁判所の事実認定そのものを証明する資料ではありません。

したがって、本ページでは「本人の発言」「裁判所が認定した事実」「RiPによる評価」を区別して記載しています。




このページで分かること

このページでは、2019年11月30日に発生した京都ALS患者嘱託殺人事件について、事件発生から逮捕、裁判、2025年の最高裁決定までの経緯を時系列で整理しています。


また、林優里さんが生前に公開していたブログ・SNSの記録、裁判所が示した判断、ALS患者の終末期意思決定に関する医学研究をもとに、この事件が日本の安楽死・尊厳死・終末期医療の議論にどのような問題を提起したのかを整理します。


なお、本ページでは、

・本人が生前に公開した発言

・裁判所が認定した事実

・公的機関が示している制度・ガイドライン

・学術研究が示している知見

・RiP:Dによる評価・意見


を可能な限り区別して記載します。

RiP:Dは日本における安楽死制度の法制化を支持する立場から運営されていますが、本ページでは賛成論だけでなく、制度上のリスク、反対・慎重論、緩和ケアや障害者の意思決定をめぐる論点についても紹介します。

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