安楽死 法制化|補足資料④ 緩和ケアの限界と、それを補完する人道的終末選択制度の必要性│国会議員提出「人道的終末選択の法制度化に関する要望」【国会提出資料】│Ver.2 全文公開
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更新日:4 日前
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国会議員に提出した「人道的終末選択の法制度化に関する要望」(安楽死 法制化)
先日、改訂を加えた嘆願書の本文に当たる部分を全文公開しました。
嘆願書の構成については
+ 要約文(2ページ分)
+カバーレター
+ 嘆願書 本文『人道的終末選択の法制度化に関する要望書』
+ 補足資料 ① ② ③ ④
となります。
今回は、その補足資料に当たる④を全文公開します。
本文との連携を改善し、更に解像度を高めたものに仕上げています。
安楽死の法制化に向けて、ご査収いただければ幸いです。
嘆願書
補足資料 ④ 緩和ケアの限界と、それを補完する人道的終末選択制度の必要性
1.本資料の位置づけ
本補足資料は、嘆願書本文「第3 提言内容 4.緩和ケアとの併存・強化」に対応し、「緩和ケアは極めて重要であるが、それのみでは全ての患者の苦痛を解消できない」という医学的・国際的コンセンサスを、エビデンスに基づいて整理するものである。
本資料は、
緩和ケア否定ではなく
緩和ケアを最大限尊重したうえで
なお残存する“救済不能な苦痛”への最終的補完策
として、人道的終末選択制度(安楽死・医師幇助死)の必要性を論証する。
2.緩和ケアの意義と到達点(前提の確認)
緩和ケアは、
疼痛
呼吸困難
不安・抑うつ
不眠
社会的・スピリチュアルな苦悩
を含む「全人的苦痛(total pain)」を軽減する医療であり、終末期医療において不可欠である。
本嘆願書は、緩和ケアの軽視・代替を目的とするものでは一切ない。むしろ、安楽死制度は「緩和ケアを尽くした後にもなお残る苦痛」に対する最終的選択肢である。
3.医学的に確認されている「緩和不能な苦痛」の存在
(1)難治性苦痛(Refractory Suffering)
国際的な緩和医療・疼痛医学の分野では、以下が広く確認されている。
WHOおよび国際研究により
末期がん患者の約10〜20% において
標準的なオピオイド治療・補助療法を尽くしても
十分な苦痛緩和が得られない症例が存在する
がん以外の難病(ALS、進行性神経変性疾患、重度心不全、呼吸不全など)を含めると
20〜30%程度の患者が「十分に緩和されない苦痛」を抱えたまま最期を迎える
とする報告もある。
これは、嘆願書本文で指摘した「緩和ケア単独では全ての終末期患者に対応しきれない限界」の根拠である 。
(2)身体的苦痛だけではない「複合的苦痛」
緩和不能となるのは疼痛だけではない。
持続的な呼吸困難・窒息感
コントロール不能な嘔吐
全身衰弱による尊厳の著しい喪失
排泄・嚥下障害
完全介助状態による自己決定の消失
これらが複合的に重なった場合、薬物調整や精神的ケアを尽くしても、患者本人が「これ以上の生を望まない」と合理的に判断するケースが現実に存在する。
4.持続的深い鎮静(Continuous Deep Sedation:CDS)の限界
(1)CDSは「苦痛の消失」ではない
日本および欧州で用いられている「持続的深い鎮静」は、
意識を低下・消失させることで
苦痛の“知覚”を抑える手段
であり、苦痛そのものを取り除く治療ではなく、あくまで苦痛の知覚を遮断する手段である。
(2)患者が問題視する点
多くの患者・家族が指摘するのは以下である。
意識を失ったまま数日〜数週間「生かされ続ける」状態
家族との最後の対話が断たれる
本人の「終わりを自ら決めたい」という意思が反映されない
つまり、CDSは「尊厳ある死の代替」にはなり得ない。
5.日本の緩和ケア体制が抱える構造的課題
(1)地域格差・人的資源不足
専門緩和ケア医・チームは都市部に偏在
在宅緩和ケアへのアクセス格差
夜間・急変時対応の限界
(2)制度・文化的制約
「最後まで生かすべき」という同調圧力
医療者側の法的リスク回避
患者の本音が表出しにくい文化的背景
これらの要因が重なり、理論上可能な緩和ケアが、現実には十分に届かない症例が存在する。
6.国際的到達点:緩和ケアと安楽死の併存
オランダ、ベルギー、カナダ、オーストラリア等では、
緩和ケアを最大限提供することが安楽死適用の前提条件
「緩和ケアを受けたうえで、なお耐え難い苦痛が残る場合」に限定
安楽死件数は全死亡数の 1〜4%前後 に留まる
という形で、両者は対立ではなく補完関係として制度設計されている 。
7.結論:補完なき緩和ケアは、国家の責任を果たしていない
緩和ケアは不可欠である。しかし、
緩和ケアの限界は医学的に確認されており
その限界に直面する患者が確実に存在し
代替策が存在しない現状は
患者に「耐え続ける以外の選択肢がない」状態を強いている
これは、制度的な不作為による苦痛の放置である。よって、
緩和ケアの充実と同時に、
それを補完する人道的終末選択制度(いわゆる安楽死制度)を法的に整備することは、国家が果たすべき人権保障の一部である。
緩和ケアの限界を示すデータ

以下のデータは、英国下院議会に提出された公式報告書および、医療経済局や英国王立内科医会等の公的調査に基づくものである。


つまり最高レベルの緩和ケアを受けても
・『79%』は、安らかな死
・『21%』は、苦痛を伴った死
イギリス:
・病院で緩和ケアを受けた患者の21%で痛みが完全にコントロールできず、32%は部分的にしか緩和されない(Royal College of Physicians, 2016; VOICES調査, 2016)
・がん患者の10~15%が治療抵抗性疼痛(※緩和技術が効かない痛み)を抱え、自己申告では最大30%が痛みを訴え続ける
・最適なホスピスケアを受けても年間5万709人が何らかの痛みを残して亡くなり、そのうち5,298人が最後の3ヶ月で全く緩和されない(Office for Health Economicsモデル)
「安楽死・尊厳死が合法化されている国々のレポート」
(すべて緩和ケア受診率70~95%と極めて高い国々)
カナダ:
・利用者の77.6%が緩和ケアを受けていたにもかかわらずMAID(※いわゆる安楽死)を選択し、40%が1ヶ月未満の短期間しか利用せず、16.8%はアクセス可能だったのに拒否。
オレゴン州(米国):
利用者の91.4%がホスピス・緩和ケアに入所中で、46%がケア介入で安楽死を取りやめる一方、15%は変わらず安楽死を選択。
オーストラリア(ビクトリア州):
81%が緩和ケアを受けていたが、2023年6月までの申請者の内306件中76%が末期がん患者で、処方後66%が実際に使用。
ベルギー・オランダ:
合法化後に政府が緩和ケア予算を倍増させたが、安楽死件数はむしろ増加。
精神疾患によるケースからも、心の深い苦しみ(絶望感)が緩和ケアの限界を示している
【結論】
・緩和ケアを受けた約80%の患者は『安らかな死』を迎えられるが、
残りの約20%は『苦痛を伴った』死を遂げている実態
・·緩和ケアサービスが、いかに充実または普及していようが、いまいが…、
患者がサービスを受けようが (仮に受けまいが…)、
最期に安らかな死 (安楽死) を求める感情は世界に普遍的に存在
・日本では、緩和ケアを尽くしてもなお苦痛が残る患者に対し、医療制度として別の選択肢を用意できていない。これは医療者個人の問題ではなく、制度設計の欠如による構造的限界である。
日本では正確な統計がないが、緩和ケアの技術に差はないので同程度の割合(約2割)の患者が存在すると推測される。公的統計は未整備であるものの、安楽死に関するドキュメンタリーや公開証言の量からも、同様の問題意識が広く存在することが示唆される。
・以上の事実は、緩和ケアの充実と、人道的終末選択制度の検討を「二者択一」としてではなく、同時に進めるべき政策課題であることを示している。

ホスピス最高責任者の発言

英国下院議会での緩和ケアにおける討論会
嘆願書(提言書):補足資料 ④ 緩和ケアの限界と、それを補完する人道的終末選択制度の必要性




