安楽死 法制化|補足資料① 日本の制度的空白と現状整理│国会議員提出「人道的終末選択の法制度化に関する要望」【国会提出資料】│Ver.2 全文公開
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- 1月8日
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更新日:5 日前
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国会議員に提出した「人道的終末選択の法制度化に関する要望」(安楽死 法制化)
先日、改訂を加えた嘆願書の本文に当たる部分を全文公開しました。
嘆願書の構成については
+ 要約文(2ページ分)
+カバーレター
+ 嘆願書 本文『人道的終末選択の法制度化に関する要望書』
+ 補足資料 ① ② ③ ④
となります。
今回は、その補足資料に当たる①を全文公開します。
本文との連携を改善し、更に解像度を高めたものに仕上げています。
安楽死の法制化に向けて、ご査収いただければ幸いです。
嘆願書
補足資料 ① 日本の制度的空白と現状整理
Ⅰ. 日本における法的・制度的現状
・安楽死の法的地位
日本において、医師が患者の明確な意思に基づき、薬物等を用いて生命を終結させる、いわゆる「積極的安楽死」については、これを明示的に認める法律は存在しておらず、現行の刑法体系においては違法と解されている。
医師または第三者による生命の積極的な終結行為は、刑法上、嘱託殺人罪または自殺幇助罪に該当する可能性がある。
過去には、1995年の東海大学安楽死事件に関する名古屋高等裁判所判決において、安楽死が成立し得る場合の「一定の要件」が示唆されたものの、これらは個別事案における判断にとどまり、一般的な法的拘束力を有する制度として確立されたものではない。そのため、医師は現在においても、同様の行為を行った場合に刑事責任を問われるリスクを免れない状況にある。
また、厚生労働省により「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」が示されているが、同ガイドラインは法令ではなく、行政上の通知・指針に位置付けられるものであり、法的権利義務を直接に規定するものではない。
・「消極的安楽死(延命治療の中止/差し控え)」との区別
日本では、治療を中止・差し控える「消極的安楽死」(あるいは「尊厳死」も含めて議論されることがある)は一定の形で認められている、またはその検討が行われてきた。
ただし、この「延命治療の中止等に関する判断」は、ガイドラインレベルにとどまり、法制度として明確に保障されたものではない。
つまり、尊厳死を選択肢とする際にも、医師や医療機関は法的リスクや倫理的な曖昧さを抱える可能性がある。

・制度としての「安楽死法」「尊厳死法」の不在
日本国内では、安楽死および尊厳死を包括的に規定する法律は整備されておらず、長年にわたって法制度の空白が続いている。
このため、医療現場における判断基準や法的根拠、手続き、責任の所在などが明確でなく、患者・家族・医療者の間で不安・混乱が生じやすい構造にある。
・社会の変化と法制度整備の遅れ
一方で、国際的には安楽死を制度化する国が増えており、世界の潮流とのギャップが拡大している。
また、日本国内においては、終末期医療および緩和ケアの分野において一定の進展が見られるものの、すべての患者が自ら望む形で十分な緩和ケアを受けられる体制が一様に確保されているとは言い難い状況にある。
加えて、国際的な緩和ケアの分野においては、終末期医療において、緩和ケアには一定の限界が存在するとの認識が共有されつつあり(詳細は補足資料④を参照)、緩和ケアの重要性が強調される一方で、その限界については、これまで公的な議論の場において十分に整理・共有されてきたとは言えない。
その結果、医療提供体制の地域差、患者の病状、家族の支援状況等の要因により、苦痛の軽減や尊厳の保持が十分に達成されない事例が依然として存在している。さらに、今後の人口構造の変化や社会環境の推移を踏まえると、こうした事例は増加していく可能性があると考えられる。

Ⅱ. 問題点とその帰結
・患者・家族の苦悩と選択の制限
積極的安楽死が違法である現行法のもとでは、「苦痛からの解放」「尊厳ある最期」を望む患者や家族に対し、法的選択肢が存在しない。これは、個人の尊厳と自己決定の権利を制度として保障できていないことを意味する。
・医療現場の倫理的・法的ジレンマ
医療者側も、延命治療の中止や差し控え、緩和ケアといった選択を迫られるなかで、法的責任、倫理的葛藤、家族対応など複雑な判断を強いられる。法的根拠が曖昧であることにより、医療現場の実践が不安定になりがちである。
・制度の透明性 一貫性の欠如
治療中止の判断が「ガイドライン任せ」「医療機関・担当医任せ」では、基準が一定せず、地域や病院、医療者によって対応に差が生じやすい。
また、現行制度では実施状況や判断過程が公的に記録・報告される仕組みがなく、社会的な透明性が確保されていない。
・国際水準とのギャップ
安楽死を合法化・制度化した国々と比べ、日本の法制度は大きく遅れており、医療・福祉の選択肢の幅という点で後れをとっている。これにより、海外に移行を考える患者や家族が出るなど、「制度の外への流出」が懸念されている。
海外渡航には多額の費用・語学・情報の格差により、実質的に「富裕層のみが選択できる不平等」を引き起こす。国内での制度不在が「人権の国外流出を招いている」状況である。

Ⅲ. 私たちの現状認識
私達は、自らを「安楽死の合法化をめざす会」と定め、ウェブサイト上で「安楽死の合法化は世界の潮流」であることを示し、日本における制度的整備の必要性を訴えている。
私達の主張は、日本には安楽死を希望する声、苦痛からの解放を求める当事者の存在があり、制度的選択肢が全くない現状は、人道・倫理・人権の観点から問題であるという事という点にある。
このような現実を受けて、法的枠組みおよび制度設計の検討を、国会および関係省庁で行うことが喫緊の課題であると考える。
Ⅳ. 結び
現行の法制度は、積極的安楽死に関して明確な制度を持たず、延命治療の中止・差し控えも法的保証が乏しい。結果として、患者・家族・医療者が尊厳ある最期を迎えるための選択肢は、極めて限定されている。
ガイドラインは法的拘束力を持たず、判断の最終責任が個々の医師に帰属するため、終末期医療における根本的な不安定性を解消することはできない。
一方、国際的には安楽死を制度化・合法化する国が増え、世界とのギャップが広がっている。日本も、倫理・人権・医療の現実を直視し、法制度として整備する検討を開始すべきである。
本補足資料①は、その法的・制度的空白と現状を整理したものであり、今後の法制化検討における基礎資料としてご覧いただきたい。
嘆願書(提言書):補足資料 ① 日本の制度的空白と現状整理




