精神疾患による自殺の実態|警察庁統計と自殺対策白書から見る18年間
- リップディー(RiP:D)

- 6 日前
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要約図(自由使用可)

年間自殺者数全体のうち、健康問題を動機とする自殺が占める割合

図表について|警察庁統計と自殺対策白書を基にした算出方法
本図表は、RiP:D(Rest in Peace with Dignity)が独自に作成したものです。
警察庁が毎年公表している自殺統計資料に記載された数値データを基礎とし、あわせて厚生労働省が発行する『自殺対策白書』の内容を参照しながら、健康問題による自殺者数の内訳を再整理・集計しています。
対象期間は平成19年(2007年)から令和6年(2024年)までの18年間で、「健康問題」を理由とする自殺について、身体疾患・身体障害と精神疾患(うつ病、統合失調症等、その他)に分類し、年次推移および平均値を算出しています。
なお、本図表は特定の立場を前提とした恣意的な数値操作を行ったものではなく、公的機関が公開している一次資料をもとに、一般市民にも全体像が把握しやすい形で可視化することを目的として作成したものです。
警察庁(National Police Agency)が公表する自殺統計資料
厚生労働省(Ministry of Health, Labour and Welfare)が発行する『自殺対策白書』
健康問題による自殺の中心にある精神疾患
日本では長年にわたり、「自殺対策」が重要な社会課題として語られてきました。
その中で、経済問題や孤立と並び、しばしば言及されるのが「健康問題」です。
今回取り上げる図表は、平成19年から令和6年までの18年間にわたる「健康問題による自殺者数」を詳細に分類したものです。
本稿では、この図表に示された精神疾患系の自殺に焦点を当て、感情論や一般論を排し、統計が示す事実から私たちが何を読み取るべきなのかを考察します。
健康問題による自殺の中心にある「精神疾患」
まず確認すべき事実があります。
この18年間、自殺全体に占める「健康問題」を原因とする割合は、
平均で51.2%に達しています。
つまり、日本における自殺の半数以上が、
健康上の問題を背景にしています。

さらに、その内訳を見ると、次の構造が浮かび上がります。
・身体疾患・身体障害による自殺:
平均 約4,300人
・精神疾患による自殺:
平均 約7,400人
健康問題による自殺の中で、精神疾患が明確に多数派を占めていることは、この図表が一貫して示している事実です。
※身体疾患・身体障害による自殺については、こちらから
精神疾患による自殺の内訳|うつ病が占める割合
精神疾患の内訳に目を向けると、さらに特徴的な傾向が確認できます。
精神疾患による自殺のうち、
・うつ病:平均 約5,200人
・統合失調症等:平均 約1,100人
・その他の精神疾患:平均 約1,100人
と、うつ病が全体の約7割を占めています。
これは、「極めて稀で重篤な精神疾患が原因で起きている問題」ではなく、
・社会に広く存在する精神疾患が、
・大規模な死と結びついている
という現実を示しています。
精神疾患による自殺は一時的な増減ではない
この図表を年次で見ても、精神疾患による自殺は、ある年だけ突出しているわけではありません。
・年ごとの多少の上下はある
・しかし、18年間を通じて高い水準が持続している
・特定の政策や医療技術の進展によって、
明確に減少した時期は確認できない
これは、精神疾患系の自殺が
一過性の社会不安や個別要因では説明できない構造的問題
であることを示唆しています。
精神疾患と「治療可能性」――統計が示す現実
精神疾患については、しばしば
「治療可能性がある」
「回復の見込みがある」
と語られます。
しかし、この図表が示すのは、
・治療が存在するとされ続けた18年間に
・毎年7,000人前後が精神疾患を理由に
・自ら命を絶っている
という、動かしがたい事実です。
交通事故死、労災死亡、災害死亡、などと比較しても、極めて大きな数字です。
重要なのは、治療の存在と、苦痛の軽減が統計的に一致していないという点です。
これは医療の努力を否定するものではありません。
一方で、「治療があるのだから耐えられるはずだ」という前提が、現実の死者数と整合していないことを示しています。
数値化されにくい精神的苦痛と自殺
身体疾患と比較した場合、精神疾患には特徴があります。
・客観的な数値指標が乏しい
・痛みや苦しさが外から見えにくい
・本人の訴えが「症状」として疑われやすい
しかし、この図表は、そうした評価されにくい苦痛が、死に至るほど深刻であることを、数字という形で明確に示しています。
精神疾患による自殺が社会に突きつける問い
精神疾患による自殺が、これほど長期間・大規模に発生しているという事実は、私たちに次の問いを投げかけます。
精神的な苦痛は、身体的な苦痛と同様に、人を「生きられない状態」に追い込む現実を、社会は本当に直視しているのか。
現在の制度や議論では、精神疾患による苦痛は「支援・治療の対象」とされる一方、
その限界について語られることは多くありません。
しかし、この図表が示す数字は、その前提だけでは説明しきれない死が存在していることを静かに語っています。
まとめ ― RiP:Dとしての立場
本稿で見てきた統計は、精神疾患による自殺が「例外的な悲劇」ではなく、
日本社会における主要な死の構造の一部であることを示しています。
私たち RiP:D(Rest in Peace with Dignity)は、この現実を前に、
・誰かを急いで結論へ導くこと
・生と死を単純化すること
を望んでいるわけではありません。
一方で、
・長期間にわたり、
・精神疾患のみを基礎疾患として、
・耐え難い苦痛の中で命を失う人々が存在し続けている
という事実は、現行の制度や議論の枠組みだけでは、十分に説明できない現実でもあります。
この点を踏まえるならば、
・精神疾患が唯一の基礎疾患である場合であっても、
・一定の厳格な条件の下で、
・安楽死の適応が議論の対象となり得る可能性
を、初めから排除すべきではないのではないでしょうか。
私たちが問題にしたいのは、拙速な制度導入でも、単純な賛否の対立でもありません。
すでに起き続けている大量の死を、
「制度の外」「議論の外」に置き続けてよいのか
――その問いを、社会と共有したいのです。
精神疾患による自殺の数字は、声を上げることができなかった人々の、静かな記録でもあります。
この事実から目を背けず、制度・医療・倫理のあり方を、冷静に、そして誠実に考えること。それこそが、私たちに求められている出発点ではないでしょうか。



