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【ジャージー島の安楽死 #1】ジャージー島の安楽死法制化はどこまで進んだのか|成立時期と制度内容を整理

  • 執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
    リップディー(RiP:D)
  • 4 日前
  • 読了時間: 6分

🎧音声による動画解説



要約図(自由使用可)


ジャージー島の安楽死法制化:法整備の歩みと制度の全貌


ジャージー島の位置と基本情報


ジャージー島の位置

ジャージー島の基本情報

ジャージー島は、イギリス海峡に位置するチャンネル諸島の一つで、ジャージー島本島と周辺の小島から構成されています。首都はセント・ヘリアです。


この地域は「イギリス王室属領」と呼ばれ、イギリス国王を君主としながらも、イギリス(連合王国)の一部ではありません。外交や国防はイギリスが担いますが、内政については独自の議会と政府を持ち、高度な自治権を有しています。


正式名称は「Bailiwick of Jersey(ジャージー代官管轄区)」で、日本語の公的文書でもこの訳が用いられますが、一般には「ジャージー島」と呼ばれることが多いです。

乳牛のジャージー種の原産地であり、衣類の「ジャージ」やアメリカのニュージャージー州の名称の由来としても知られています。



安楽死制度の成立が近づくジャージー島


イギリス王室属領であるジャージー島(Jersey)では、安楽死(人道的終末選択)に対し、政治と市民社会が段階的かつ制度的に向き合ってきました。


本稿では、安楽死(自殺幇助:assisted dying)をめぐるジャージー島の議論の経緯と、最新の具体的日程を整理し、その意味を考察します。



1.ジャージー島の制度的特徴と安楽死議論の位置づけ


先述のとおり、ジャージー島は、イギリスに属しながらも、独自の議会と立法権を有する高度な自治領(Crown Dependency)です。

刑法・医療制度・社会制度についても、島独自の法体系を構築することが可能です。


この制度的背景により、イングランド本土では法制化に至っていない安楽死についても、ジャージー島では独立した判断が可能となっています。



2.2021年の原則決定と段階的検討プロセス


ジャージー島の議会の様子

2021年11月、ジャージー島議会は、安楽死について法制度化の可能性を検討することを是とする「原則決定」を採択しました。


この決定は、安楽死を直ちに認めるものでも、否定するものでもありません。

「社会として検討を行う責任がある」という判断を示したものです。


以降、政府は以下のような段階的プロセスを進めてきました。


  • 市民審査会の実施

  • 専門家(医療・法・倫理)による検討

  • 公開意見募集と情報公開




3.市民審査会と世論調査が示した社会的合意


市民審査会では、十分な情報提供を受けたうえで熟議が行われ、


参加者の約78%

「厳格な条件付きで安楽死を認めるべき」

と結論づけました


また、世論調査においても、

島民の約6割が法改正に賛成していることが報告されています。


これらは、感情的な賛否ではなく、

制度として検討することへの社会的合意が

一定程度形成されていることを示しています。


ジャージー島議会での安楽死の審査会

「私のヒユーマニズムの信念は、仲間の人間に対して深い関心を持つということです。私は充実した有意義な人生を送るよう努め、理性と共感に基づいて自分の価値観を定めました……」



4.2026年1月21日 第一読会可決の意味


2026年1月21日、安楽死法案は議会の第一読会に付され、


賛成32票

反対14票


で可決されました。

第一読会の可決は、法案の方向性が議会として支持されたことを意味しますが、この時点では最終的な法律成立ではありません

それでも、この採決は、長年の議論が「制度設計の最終段階」に入ったことを示す重要な節目と位置づけられます。



5.今後の具体的日程と安楽死法成立の見通し


5-1.審議スケジュール

現在示されている予定は以下の通りです。


2026年2月下旬


第二読会および第三読会・条文修正・最終討論・最終採決

ここで可決されれば、安楽死法は正式に成立することになります。


5-2.施行時期

ただし、成立後すぐに制度が運用されるわけではありません。

政府は、以下の理由から約18か月の準備期間を必要とするとしています。


  • 医療実施体制の整備

  • 審査・申請プロセスの構築

  • 医療従事者への研修

  • 監査・報告制度の確立


このため、最も早い施行時期は2027年春から夏頃と見込まれています。



6.想定されている安楽死制度の基本構造と制限


現在の法案では、以下のような厳格な条件が設けられています。


  • 対象は18歳以上の成人

  • 一定期間以上の島内居住要件

  • 末期疾患など、生命予後が限られる状態に限定

  • 本人の自由意思と判断能力の確認

  • 複数の医師による独立した評価

  • 医療従事者の良心的拒否権(オプトアウト)の保障


非末期疾患や精神疾患のみを理由とする適用は、明確に制度対象から除外されています。


【図解】世界の安楽死一認められる国、条件は?

世界 安楽死法|主要国の条件・申請から完了までの比較ガイド
www.rest-in-peace-with-dignity-ripd.com
世界 安楽死法|主要国の条件・申請から完了までの比較ガイド
【世界 安楽死法|主要国の条件・申請から完了までの比較ガイド】※現在7か国、掲載。今後も追加・改訂・随時更新(最終更新2025年12月21日)本稿でまとめてあること:・世界における安楽死法制度の全体像・主要国における安楽死の申請条件 (適格の条件、年齢・疾患・判断能力)・世界 安楽死法:申請から実施までのプロセス (フローチャート)🎧音声による動画解説世界の安楽死法:条件とプロセスの比較要約図(自由使用可)世界 安楽死法|申請から承認までの標準的なプロセス①申請段階 患者の意思を初めて明確にする段階 安楽死を扱う医師が適格基準を評価 (第1チェック) ⇩②評価段階 患者の意思を再度明確にする段階 安楽死を扱う全く別の医師が適格基準を再度評価 (第2チェック) ⇩③協議段階 複数の専門家による『審査委員会』(国によって様々)が 上記2名の医師評価書を総合的にチェック & 審査 (第3チェック) ⇩④実施・報告段階 安楽死の実行と、法的な記録提出の段階 主に最初の医師が実施。全ての記録はデーターベース化される。※③がない国:アメリカ、カナダ、フランス ほとんどの国で3つのチェック段階あり


7.賛否の対立とジャージー島の議論の特徴


宗教的立場や倫理的観点から、安楽死に慎重な意見が存在することも事実です。これらの懸念は、制度設計において無視されるべきものではありません。


一方で、現行の医療・緩和ケアでは救済できない苦痛が存在することも、多くの当事者の証言によって示されています。



ジャージー島の議論の特徴は、


いずれかを切り捨てるのではなく、

制度として両者を調整しようとしている点


にあります。



8.日本社会への示唆と制度的学び


日本では、安楽死に関する法制度は存在せず、公的な議論も限定的です。

しかし、ジャージー島の事例は、「結論ありき」ではなく、


熟議と段階的判断によって

社会的合意を形成する可能性


を示しています。


終末期医療の限界、尊厳、自己決定、社会的支援――これらをどのように制度として位置づけるのかは、日本においても避けて通れない課題です。




まとめ|ジャージー島の安楽死法制化が問いかけるもの


・ジャージー島では2026年2月に最終採決、

 成立すれば2027年施行が見込まれている

市民参加と段階的議論を経て制度設計が進められている

・これは「死を選ばせる制度」ではなく、

 苦痛と尊厳に社会がどう向き合うかを問う制度である


人生の終わりは、誰にとっても例外ではありません。そのとき社会は、どのような選択肢を用意できるのか。

ジャージー島の議論は、その問いを私たちにも投げかけています。



出典・参考資料 一覧


▶ ジャージー島政府・公式資料


▶ 国際・英国系主要報道機関


▶ 市民団体・調査・意見集約


▶ 国際比較・補足的背景資料


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