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カナダ安楽死の歴史①|スー・ロドリゲス裁判と安楽死制度化への道のり

執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
リップディー(RiP:D)
7月30日
読了時間: 17分

更新日:8月20日

※最終更新日:2026年8月1日(随時更新)


👉 安楽死の基本的な仕組みや全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください↓


👉 安楽死の定義と分類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓


※この記事で分かること

カナダのMAID(Medical Assistance in Dying)制度は、2016年に突然導入されたものではありません。

その背景には、1991年にALSと診断されたスー・ロドリゲスが、自殺幇助を禁止する刑法の違憲性を訴えた裁判、1993年のカナダ最高裁判決、世論・議会・医療界を巻き込んだ長年の議論がありました。

本記事①では、1892年以降の法的背景から、Rodriguez事件と1994年のロドリゲスの死までを整理します。続編では、その後の議論、Carter v. Canada、そして2016年のBill C-14による制度化へと続く過程を扱います。



カナダ安楽死制度の歴史|MAID成立まで25年以上続いた議論



カナダの安楽死(MAID)制度成立までの歴史をまとめた年表。スー・ロドリゲスや法廷・議会の流れ、見出しが色分けで示されている。
カナダの安楽死(MAID)制度成立までの歴史をまとめた年表【前半】


カナダの医師による自発的な死の幇助(Medical Assistance in Dying:MAID)は、現在では世界でも代表的な制度の一つとして知られています。


しかし、その制度は突然誕生したものではありません。

今日に至るまでには、およそ四半世紀にわたる議論と、多くの患者や家族の苦悩、そして幾度もの裁判がありました。


耐え難い苦痛の中で「最期くらいは自分で選びたい」と願った人々。

その願いは長い間、法律によって認められませんでした。

それでも声を上げ続けた人々がいたからこそ、現在の制度があります。



本記事では、カナダの安楽死制度が成立するまでの歴史を、当時の社会情勢や裁判を交えながら振り返ります。




👉 世界各国の安楽死制度を知りたい方は、こちらで解説しています↓



🎧音声による動画解説




要約図(自由使用可)


カナダ安楽死制度MAIDの歴史をまとめた縦長インフォグラフィック。スー・ロドリゲス裁判、法廷、賛否の天秤、76%支持が描かれる。



カナダでは安楽死は長年犯罪だった|刑法による自殺幇助禁止の歴史


現在のカナダではMAID制度が存在しますが、長い間、医師が患者の死を援助することは刑法によって禁止されていました。

1892年に制定されたカナダ刑法では、


  • 本人が望んでいても生命を絶つ行為

  • 自殺を手助けする行為


はいずれも犯罪とされていました。


1972年、自殺そのものは犯罪ではなくなりました。

しかし、「他人が自殺を援助すること」は依然として刑事罰の対象であり、重い病気で苦しむ患者であっても、自らの意思で人生の最期を選ぶことは法律上認められていませんでした。


この法律は、「命を守る」という理念のもとに存在していました。

一方で、回復の見込みがなく、耐え難い苦痛を抱える患者にとっては、

「自らの意思を尊重してもらえない法律」と感じられる場面も少なくありませんでした。


こうした状況が、後にカナダ社会全体を巻き込む議論へと発展していきます。



参考・出典






👉 現在のカナダ安楽死の動向については、こちらで解説しています↓




スー・ロドリゲス裁判とは|カナダ安楽死制度の原点となったALS患者の訴え


1991年。

カナダの安楽死制度の歴史を語る上で、

決して欠かすことのできない一人の女性が現れます。


その人物が、スー・ロドリゲス(Sue Rodriguez)です。


スー・ロドリゲス(Sue Rodriguez)。屋外の庭先で、車椅子に座る女性が目を閉じて笑い、足元に白黒の犬が寄り添っている。陽気な雰囲気。

スー・ロドリゲス(Sue Rodriguez)。短い茶髪で青い目の女性が微笑むアップ。紫の服とレースの襟、背後は淡い青緑の絵画風背景。


当時42歳。

一人の息子を育てる母親でした。

彼女はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症します。

ALSは、身体の筋肉が徐々に動かなくなっていく難病です。

意識ははっきりしたまま、


  • 手足が動かなくなる

  • 話せなくなる

  • 飲み込めなくなる

  • 最終的には呼吸もできなくなる


という経過をたどります。

治療法はなく、進行を止めることもできません。


ロドリゲスさんは、自分がこれから迎える未来を理解していました。

そして、自分の人生の終わりについて、自分自身で決める権利を求める決意をします。




「この身体はいったい誰のものなのか」という問い


1992年。

ロドリゲスさんは、国会の委員会にビデオを通じて自らの考えを訴えました。


「もし自分自身の死について同意することができないのなら、この身体はいったい誰のものなのでしょうか。私の人生はいったい誰のものなのでしょうか。」

(原文)

If I cannot give consent to my own death, whose body is this? Who owns my life?

※出典👉Canadian Parliament / Parliamentary Committee



この言葉は瞬く間に全国へ広がりました。


彼女が訴えたかったのは、「死にたい」という単純な願いではありません。

人生の最期に関する選択まで、国家が決めるべきなのか。

あるいは本人の自己決定を尊重すべきなのか。

という、極めて根本的な問いでした。



現在でもこの言葉は、カナダの生命倫理やMAiD制度の歴史を語る際に、

象徴的な発言として広く引用されています。



参考・出典






👉 カナダの安楽死の申請から実施までの全プロセスはこちら↓




Rodriguez事件|カナダ最高裁判所が判断した自殺幇助禁止の合憲性


ロドリゲスさんは、自殺幇助を禁止する刑法は、

カナダ権利自由憲章(Canadian Charter of Rights and Freedoms)に違反するとして裁判を起こします。

争点となったのは、


  • 自由

  • 身体の安全

  • 平等

  • 自己決定


という、憲法上の基本的人権でした。


この裁判は単なる刑法の争いではありません。



「人は人生の最期について、

 自ら決定する権利を持つのか」



という、カナダ社会全体へ投げ掛けられた問いでもありました。


多くの医師、法律家、宗教団体、障害者団体、市民団体などが、

それぞれの立場から意見を表明し、国を二分する議論へと発展していきます。


屋内で、車椅子の女性、スー・ロドリゲス(Sue Rodriguez)が微笑み、周囲に男性数人が立つ。幾何学模様の壁を背景にした落ち着いた場面。


参考・出典





スー・ロドリゲス裁判がカナダ社会に与えた影響


スー・ロドリゲス氏の裁判は、法廷の中だけで争われたものではありませんでした。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)という進行性の難病と向き合いながら、「自分の人生の終わり方を、自分自身で決めることはできないのか」と社会に問いかけた彼女の姿は、多くのカナダ国民の心を動かしました。


テレビや新聞では連日のように裁判が報じられ、家族、医療関係者、宗教団体、障害者団体、法律家などを巻き込んだ全国的な議論へと発展していきます。




世論調査から見る安楽死合法化への意識変化

当時の世論調査からも、その変化をうかがうことができます。

1993年、世論調査会社Angus Reidが実施した全国調査では、



  • 「終末期患者には『死を選ぶ権利』がある」と

    回答した人は76%


  • 医師による自殺幇助を認めるべきと

    回答した人は約70%



に達していました。


👉 カナダ人の安楽死に関する見解 |イプソス


👉 身体と身体政治:カナダ権利自由憲章に基づく自殺幇助 - マギル・ロー・ジャーナル



つまり、国民の多数は一定の条件の下で、自らの意思による終末期の選択を認める方向へと意識を変え始めていたのです。


当時は、全国世論調査では約4人に3人の国民が、終末期患者には『死ぬ権利』があると考えていました。

司法判断と国民意識の間には、すでに小さくない隔たりが生まれていたのです。



一方で、障害者団体や宗教団体、一部の医療関係者からは、

「制度が導入されれば弱い立場の人々に圧力が及ぶのではないか」との懸念も強く示され、社会の議論は決して一枚岩ではありませんでした。



👉安楽死反対運動の実像──宗教・緩和ケア・情報操作から見る背景と手法


👉 安楽死の強制リスクとは何か│社会的圧力・同調圧力は本当に現実的なのか




※後年の調査との比較

2010年のAngus Reid調査では、

  • 安楽死合法化支持:63%

  • 「苦しむ人の痛みを和らげる機会になる」:81%

という結果でした。


さらに2014年には、

  • 法改正への支持(強く支持37%+ある程度支持42%)=79%

  • 「最高裁は患者の自己決定を重視すべき」:71%


という調査結果が示され、Carter事件の最高裁判決(2015年)の直前には、制度化を支持する世論がさらに広がっていました。




参考・出典

  • Ipsos(旧Angus Reid Group)「Canadians' Views on Euthanasia」

    カナダ人の安楽死に関する見解 |イプソス





わずか一票差だった最高裁判決


1993年9月。

最高裁判所は判決を言い渡します。


結果は、5対4。

ロドリゲスさんの敗訴でした。


刑法による自殺幇助禁止は合憲である。

最高裁はそのように判断しました。


しかし、この裁判には一つ、大きな意味がありました。

それは、


最高裁判事9人のうち4人が

「本人の権利を認めるべきだ」と考えていたことです。


つまり、裁判所内部でも意見は大きく割れていたのです。

当時は制度化には至りませんでしたが、この「わずか一票差」という結果は、その後のカナダ社会に大きな影響を与えました。

法律は変わらなくても、人々の意識は少しずつ変化し始めていたのです。



街中で、短髪の女性、スー・ロドリゲス(Sue Rodriguez)と男性が背中合わせに抱き合い、周囲で報道陣が撮影している。緊張感のある場面。


※この5対4の判決では、最高裁内部でも自殺幇助禁止と個人の権利の関係について意見が大きく分かれていました。ただし、1993年の多数意見は刑法上の禁止を維持しており、Rodriguez事件によって安楽死・自殺幇助が合法化されたわけではありません。


参考・出典

Rodriguez v. British Columbia (Attorney General), [1993] 3 S.C.R. 519Supreme Court of Canada




👉 安楽死制度はどう導入されるのか|世界の「立法ルート・司法ルート・第三のルート」




ロドリゲス事件後、カナダ安楽死制度化への道が始まる

~判決のあとも、彼女の願いは消えなかった~


最高裁で敗訴した後も、ロドリゲスさんの病状は進行を続けました。

1994年2月。


彼女は、匿名の医師による援助を受け、自ら望んだ最期を迎えました。

医師は最後まで身元が公表されることはなく、起訴もされませんでした。


スー・ロドリゲス(Sue Rodriguez)。室内で横顔の赤茶髪の女性のクローズアップ。真剣な表情で前を見つめ、背景はぼかされている。

ロドリゲスさんは制度を変えることはできませんでした。

しかし、彼女が社会へ投げ掛けた問いは消えることはありませんでした。


むしろ、その問いは多くの患者や家族、市民へ受け継がれ、20年以上にわたる議論の出発点となっていきます。




👉 安楽死と自殺の違い・関係を整理したい方は、こちらをご覧ください↓




最高裁敗訴後も残された問い


現在のカナダでは、MAID制度は法律として整備されています。

しかし、その始まりには、



一人のALS患者が

「自分の人生の最期は、自分で決めたい」

と願い続けた歴史



がありました。


彼女は裁判には敗れました。

それでも、その訴えは決して無駄ではありませんでした。

制度は一度の裁判で変わるものではありません。


しかし、一人の勇気ある行動が、多くの人々の価値観を変え、やがて社会全体を動かしていくことがあります。

カナダの安楽死制度は、まさにその積み重ねの上に築かれた制度と言えるでしょう。



次回は、ロドリゲス事件後に続いた

医師の刑事事件や社会的議論、そして制度化を決定づけた



「カーター事件(Carter v. Canada)」



までの歩みを詳しく解説します。


▶ 続編:カナダ安楽死の歴史②|Rodriguez判決後からCarter判決へ





👉 地図で確認する安楽死が合法の国 一覧と各国制度は、こちらで詳しく解説しています↓


👉 世界の安楽死制度の成立経緯を年代順で知りたい方は、こちら↓


👉 安楽死とは何かを整理したい方は、こちらで全体像を確認できます↓




図① 25年間のタイムライン

年

出来事

意味

1892

Criminal Code制定

自殺幇助禁止の法的背景

1972

自殺そのものの犯罪化が廃止

「自殺」と「自殺幇助」が法的に分離

1991

Sue RodriguezがALSと診断

終末期の自己決定をめぐる問題が社会化

1992

国会委員会へビデオ証言

全国的な議論へ

1993

最高裁Rodriguez判決

5対4で禁止規定を維持

1994

Rodriguez死亡

議論が継続

2012

Carter事件の下級審判決

法的転換への重要な段階

2015

Carter判決

刑法上の全面禁止が憲章違反と判断

2016

Bill C-14

MAIDの連邦法制度成立



図②「Rodriguez → Carter → Bill C-14」


Sue Rodriguez

1991~1993

↓

Rodriguez v. British Columbia

1993

最高裁 5対4

↓

社会・議会・医療界で議論継続

↓

Carter v. Canada

2015

最高裁が全面禁止を憲章違反と判断

↓

Bill C-14

2016

↓

MAID制度




FAQ|カナダMAID制度の歴史・スー・ロドリゲス裁判


Q1.スー・ロドリゲスとは誰ですか?

A.スー・ロドリゲス(Sue Rodriguez)は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患い、カナダで自殺幇助を禁止していた刑法の規定に異議を唱えた人物です。1993年、カナダ最高裁判所は5対4で彼女の訴えを退けました。この事件は、後のカナダにおける終末期の自己決定と医療による死への援助をめぐる議論の重要な出発点の一つとなりました。


Q2.Rodriguez事件で安楽死は合法化されたのですか?

A.いいえ。1993年のRodriguez事件では、最高裁は自殺幇助を禁止する刑法規定を維持しました。カナダでMAIDの法制度が成立したのは、その後のCarter判決と議会での立法を経た2016年です。


Q3.Carter判決だけでMAID制度が成立したのですか?

A.いいえ。2015年のCarter v. Canada判決は、一定の条件下で医師による死への援助を全面的に禁止する刑法規定がカナダ権利自由憲章に反すると判断しました。その後、カナダ議会がBill C-14を制定し、2016年6月17日にRoyal Assentを受けて、MAIDの法的枠組みが設けられました。


Q4.MAIDは「安楽死」と同じ意味ですか?

A.完全に同じではありません。カナダの法律上のMAID(Medical Assistance in Dying)は、医療者が薬剤を投与する方法と、医療者が薬剤を処方・提供し本人が自己投与する方法の双方を含む包括的な概念です。日本語で一般に「安楽死」「医師幇助自殺」などと呼ばれる行為を含むため、用語を区別して理解する必要があります。


Q5.Rodriguez事件では、なぜ自殺幇助が禁止されていたのですか?

A.当時のカナダ刑法は、自殺そのものとは別に、他者が自殺を援助する行為を犯罪としていました。制度の背景には、本人の自己決定を尊重することと、脆弱な立場にある人が圧力などによって死を選ばされることを防ぐことの両立という問題がありました。


Q6.カナダでは当時、安楽死に反対する人はいなかったのですか?

A.いいえ。Rodriguez事件をめぐっては、障害者団体、宗教団体、医療関係者などから、弱い立場にある人々への圧力や濫用を懸念する意見も示されました。この問題は現在のMAID制度でも重要な論点として残っています。


Q7.このサイトは安楽死に賛成する立場なのに、反対論も紹介するのはなぜですか?

A.制度を検討するためには、賛成側の主張だけでなく、自己決定、脆弱性、社会的圧力、緩和ケア、医療者の良心的拒否、濫用防止などの反対・慎重論も確認する必要があると考えているためです。本記事では、可能な限り一次資料や査読付き研究をもとに双方の論点を確認しています。


Q8.カナダのMAID制度はCarter判決の直後から現在と同じ制度だったのですか?

A.いいえ。2016年のBill C-14による制度導入後も、法改正や裁判、議会での検討が続いています。現在の制度は2016年当時の制度から変化しており、適格性やセーフガードについても段階的に見直されています。


Q9.カナダでは現在もMAID制度について議論が続いていますか?

A.はい。カナダ政府はMAIDについて毎年報告書を公表しており、制度の利用状況や申請、適格性、セーフガードなどを継続的に監視しています。また、精神疾患のみを基礎疾患とするMAIDの適用時期などについても議論が続いています。


Q10.緩和ケアを否定するとMAIDを支持することになるのですか?

A.必ずしもそうではありません。MAIDと緩和ケアの関係については、医療・生命倫理の分野でも議論があります。カナダでは、緩和ケアを重視しながらMAIDに反対する医療者も存在します。一方、MAIDを認める立場からは、緩和ケアでは十分に解決できない苦痛や自己決定の問題が論じられています。


Q11.「安楽死が認められると弱い立場の人に圧力がかかる」という懸念には研究がありますか?

A.あります。カナダのMAID制度をめぐる研究では、脆弱性、社会的決定要因、障害、精神疾患、制度上のセーフガードなどが検討されています。したがって、この問題は単なる感情論ではなく、法学・生命倫理・医学の研究対象となっています。


Q12.このページでは現在のカナダMAID制度まで説明していますか?

A.本記事①では主としてRodriguez事件から1994年までの歴史を扱っています。Carter判決、Bill C-14、制度成立後の法改正については、続編およびカナダMAID制度の解説記事で詳しく扱います。






🔽RiP:D 関連記事

この記事の理解をより深めるため、以下の記事もあわせてご覧ください。


👉 日本における安楽死の法律的な扱いについては、こちらで詳しく解説しています↓



👉 混同されやすい、安楽死と尊厳死の違いをを知りたい方は、こちら(延命治療との関係も整理)↓



👉 安楽死と関係が深い「緩和ケアと安楽死の違い」は、こちらで整理しています↓



👉 安楽死をめぐる賛否の論点を体系的に整理したい方は、こちらをご覧ください↓



👉『滑り坂論』は実証されたのか?↓



👉 日本の安楽死の歴史・事件を知りたい方は、こちらをご覧ください↓




参考文献・主要研究


1.判例・公的資料

Supreme Court of Canada

Rodriguez v. British Columbia (Attorney General), [1993] 3 S.C.R. 519.

1993年、ALSを患うSue Rodriguezが、自殺幇助を禁止する刑法の規定についてカナダ権利自由憲章上の権利侵害を訴えた事件。最高裁は5対4で訴えを退けました。

[Supreme Court of Canada:判決全文]


Supreme Court of Canada

Carter v. Canada (Attorney General), 2015 SCC 5, [2015] 1 S.C.R. 331.

2015年、最高裁は一定の条件下で医師による死への援助を全面的に禁止する刑法規定が、憲章第7条の権利を不当に侵害すると判断しました。

[Carter判決・Supreme Court of Canada]


Parliament of Canada

Bill C-14, An Act to amend the Criminal Code and to make related amendments to other Acts (medical assistance in dying), S.C. 2016, c. 3.

Carter判決を受けて制定された法律。2016年6月17日にRoyal Assentを受け、カナダのMAID制度の連邦法上の枠組みが設けられました。

[Parliament of Canada:Bill C-14]




2.Rodriguez事件・カナダ法制度の研究

Cormack M.

Euthanasia and assisted suicide in the post-Rodriguez era: lessons from foreign jurisdictions.

Osgoode Hall Law Journal. 2000;38(4):591–641.DOI: 10.60082/2817-5069.1494.PMID: 12611410.

Rodriguez事件後のカナダについて、判例、世論、議会、医療団体、海外制度などを比較し、安楽死・自殺幇助をめぐる賛否と制度設計を検討した研究です。


Browne A, Russell JS.

Physician-Assisted Death in Canada.

Cambridge Quarterly of Healthcare Ethics. 2016;25(3):377–383.DOI: 10.1017/S0963180116000025.PMID: 27348822.

Rodriguez判決からCarter判決までの法的展開を整理し、制度化に際して問題となったアクセス、セーフガード、医療者の良心的拒否などを検討しています。




3.Carter判決・制度設計

Landry JT, Foreman T, Kekewich M.

Ethical considerations in the regulation of euthanasia and physician-assisted death in Canada.

Health Policy. 2015;119(11):1490–1498.DOI: 10.1016/j.healthpol.2015.10.002.PMID: 26518907.

Carter判決後の制度設計を念頭に、自己決定、判断能力、公平性、医療者の役割、適格性の判断などの倫理・規制上の問題を検討しています。


Chan B, Somerville M.

Converting the ‘right to life’ to the ‘right to physician-assisted suicide and euthanasia’: an analysis of Carter v Canada (Attorney General), Supreme Court of Canada.

Medical Law Review. 2016;24(2):143–175.DOI: 10.1093/medlaw/fww005.PMID: 27099364.PMCID: PMC4914707.

Carter判決を批判的に分析し、Rodriguez判決との法理論上の違いや、判決が扱った外国制度の証拠・濫用リスクについて検討しています。




4.脆弱性・反対論・慎重論

Lazin SJ, Chandler JA.

Two Views of Vulnerability in the Evolution of Canada’s Medical Assistance in Dying Law.

Cambridge Quarterly of Healthcare Ethics. 2023;32(1):105–117.DOI: 10.1017/S0963180121000943.PMID: 36503576.

カナダMAID制度の発展を「自己決定」と「脆弱な立場にある人々の保護」という2つの視点から分析しています。


Downie J, Schuklenk U.

Social determinants of health and slippery slopes in assisted dying debates: lessons from Canada.

Journal of Medical Ethics. 2021;47(10):662–669.DOI: 10.1136/medethics-2021-107493.PMID: 34349029.PMCID: PMC8479744.

社会的決定要因、障害、精神疾患、適格性をめぐる議論を検討し、カナダの経験が「滑り坂論」にどのような示唆を与えるかを分析しています。


Bélanger E, Towers A, Wright DK, Chen Y, Tradounsky G, Macdonald ME.

Of dilemmas and tensions: a qualitative study of palliative care physicians' positions regarding voluntary active euthanasia in Quebec, Canada.

Journal of Medical Ethics. 2019;45(1):48–53.DOI: 10.1136/medethics-2017-104339.PMID: 30377217.

ケベック州の緩和ケア医18人へのインタビューを通じ、安楽死に対する医療者の懸念、患者の自己決定との緊張、緩和ケアとの関係を検討しています。


Carpenter T, Vivas L.

Ethical arguments against coercing provider participation in MAiD (medical assistance in dying) in Ontario, Canada.

BMC Medical Ethics. 2020;21(1):46.DOI: 10.1186/s12910-020-00486-2.PMID: 32493374.PMCID: PMC7271423.

MAIDにおける医療者の良心的拒否・参加をめぐる倫理的問題を検討した研究です。


※本記事では、制度を支持する研究だけでなく、脆弱性、濫用防止、緩和ケア、医療者の良心的拒否などを扱う慎重論・批判的研究も参照しています。




※「主張→根拠」対応表

本文の主張

根拠

1993年にRodriguez事件を最高裁が5対4で退けた

Supreme Court of Canada

Carter判決は2015年

Supreme Court of Canada

Bill C-14は2016年6月17日に成立

Parliament of Canada

MAIDはCriminal Codeで規定

Justice Laws

MAID制度はその後も改正された

Government of Canada



※調査方法・情報源について

本記事では、カナダのMAID(Medical Assistance in Dying)制度の成立過程を確認するため、カナダ最高裁判所の判決、カナダ政府・司法省・議会資料、刑法、査読付き学術論文、PubMed収録論文などを中心に調査しています。

歴史的事実については、可能な限り一次資料を優先し、学術研究や報道資料は一次資料を補足する目的で使用しています。

また、MAID制度を支持する立場だけでなく、生命倫理、障害者の権利、脆弱性、緩和ケア、医療者の良心的拒否などに関する慎重論・反対論も確認しています。

記事内の法律・制度・統計については、原資料を確認できるよう、可能な限り公式資料へのリンクを掲載しています。

※本記事は法的助言・医学的助言を目的としたものではなく、カナダにおける制度・判例・社会的議論の歴史を整理する情報提供を目的としています。

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