オーストラリア 安楽死 制度|合法化された州と適用条件の全解説
- リップディー(RiP:D)

- 2025年10月20日
- 読了時間: 7分
更新日:4月17日
※最終更新日:2026年4月17日(随時更新)
👉 まず安楽死の基本概念については、こちらで全体像を整理しています。
オーストラリアの安楽死制度「VAD(Voluntary Assisted Dying)」は、世界でも特徴的な仕組みの一つとして注目されています。
2019年にビクトリア州で初めて導入されて以降、現在ではほぼすべての州・準州に広がり、厳格な条件のもとで運用されています。
この制度は、重い病気による耐えがたい苦痛を抱える患者に対し、「自らの意思で人生の最期を選ぶ」という選択肢を提供する一方で、不適切な利用を防ぐために多くの安全措置が設けられている点が特徴です。
本記事では、オーストラリアの安楽死制度について、合法化された州、具体的な適用条件、手続きの流れ、そして制度が抱える課題までを体系的にわかりやすく解説します。
👉 オーストラリアは、世界の中でも比較的新しい安楽死制度を導入した国の一つです(各国比較はこちら)。
🎧音声による動画解説
要約図(自由使用可)

オーストラリア 安楽死 制度の現状と最新情報|
合法化州と申請条件
1. オーストラリア 安楽死制度とは|法的な状況
オーストラリアの安楽死制度(VAD)は、アメリカ合衆国と同様に州の自治権が強く働いており、国家単位での統一的な制度は成立していません。
しかし、現在では『ノーザンテリトリー(※正確には準州:territory)』という地域を除く全ての州で安楽死制度が施行されており、広範な地域で合法化が進んでいます。
※オーストラリアにおいて、この制度は「安楽死」(Euthanasia)という名称は使用せず、『VAD(Voluntary Assisted Dying)』という呼称となります。


(英訳)
👉 なお、オーストラリア以外にも複数の国・地域で制度が整備されています(一覧はこちら)。
2. 制度導入の経緯と時系列
VAD制度の合法化に向けた流れは、2015年頃に国民的な議論が活発化し始めたのを契機としています。
この議論を制度として実現する先駆けとなったのはビクトリア州であり、2017年に州議会で法案が可決され、2019年にサービスの運用が開始されました。
このビクトリア州での施行を皮切りに、国内の他の州でもVAD制度が着実に導入されていきました。


👉「オーストラリアの安楽死法」:一般の人々にも理解できるように書かれているので参照してみてください↓
※👉オーストラリアの「安楽死の申請から実施までの全プロセス」を解説した記事ははこちら↓
3. 最新の制度導入と動向
近年における法的な進展として、オーストラリア首都特別区域(ACT)では、2024年6月5日に安楽死法案が可決されており、2025年11月にはサービスの運用が開始される予定となっています(※追記:無事に運用開始)。
また、2024年8月12日には、オーストラリア保健相(日本の厚生労働省に相当)から、これまでのVADに関する実施状況を詳細にまとめた総括報告書『State of VAD』が公に発表されました。この報告書は、今後の制度運用の参考となる重要な資料とされています。



「オーストラリア安楽死の総括レポート」はこちらをご覧ください↓
https://assets.nationbuilder.com/gogentleaustralia/pages/3038/attachments/original/1723682650/GGA_StateOfVAD_Report_2024_DIGITAL_Aug24.pdf?1723682650
こちらの詳細は別回で述べますが、一般の方は下記の内容を理解しておけば充分です。

4. 安楽死制度が適用される条件と基準 ※ビクトリア州の例
・18歳以上であること。
・オーストラリア市民または永住者であること、およびビクトリア州に通常居住しており、最初の申請時に少なくとも12ヶ月間そうであったこと。
・VADに関する意思決定能力があること。
・治癒不能であり、進行性で、死をもたらす疾患、疾病、または医療状態と診断されていること。
・その疾患により、数週間から数ヶ月以内、最長6ヶ月以内、また神経変性疾患の場合は最長12ヶ月以内に死に至ると予想されること。非末期の状態では対象外。
・その疾患が、本人が耐えられないと判断する苦痛を引き起こしており、許容できる方法で軽減できないこと。
・精神疾患や障害のみを理由としてVADの資格は得られない。
※神経変性疾患:
ALS、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、多発性硬化症、ハンチントン病 etc.
👉 安楽死の種類(積極的・消極的・間接的)の違いは、こちらで整理しています↓
5. 実施状況の具体的な事例
実際にVADが適用された件数に関する具体的なデータ例。
• ビクトリア州の事例: 合法化が最も早かったビクトリア州では、2019年6月の施行から2021年6月までの2年間で、331人がVADを申請し、そのうち224人が実際にVADを選択し、実施されました。
• クィーンズランド州の事例: 2023年1月1日からサービスを開始したクィーンズランド州では、施行後6か月間で591人が手続きを行い、562人が適用対象と評価されました。その中で薬物が提供された患者は338人であり、実際に服用して亡くなられた患者は245人という結果が示されています。
👉 なお、終末期医療には緩和ケアという別のアプローチも存在します
6. 安楽死制度に対する国際的な評価と歴史的背景
オーストラリアのVAD制度に対しては、「申請から実施までの手続きを簡素化せよ」という批判が存在しており、適応条件が厳格である実態がうかがえます。
しかし、現時点では制度は「“それなりに”機能している」と評価されています。
VAD制度には不満点や改善の余地が多々ありますが、一方で、問題が発生しないよう慎重に手堅く、だが着実に進めていく姿勢は高く評価されており、日本が見習うべき重要なポイントとなるでしょう。
特に、日本は「不安」を表明するに留まり、初めの一歩を踏み出す展開力が欠如している点との対比が明瞭化できます。
また、現在VADが施行されていない『ノーザンテリトリー』については、実は1995年というかなり以前に世界初の安楽死法案が一度可決されたものの、1996年7月のサービス開始からわずか1年間で無効となってしまったという特異な歴史があります。
この地域は、安楽死マシーン『サルコ』とも関連する因縁の深いエリアとしても知られています。これについては別回で説明していきます。
👉 安楽死をめぐる賛否の論点を体系的に整理したい方は、こちらをご覧ください↓
👉 安楽死とは何かを整理したい方は、こちらで全体像を確認できます↓
FAQ
Q. オーストラリアの安楽死(VAD)とは何ですか?
A. オーストラリアの安楽死制度(VAD:Voluntary Assisted Dying)とは、重い病気により耐えがたい苦痛を抱える患者が、自らの意思に基づき医師の支援を受けて死を選択できる制度です。現在は州ごとに法律が整備され、ほぼ全国で実施されています。
👉 安楽死と自殺の違い・関係を整理したい方は、こちらをご覧ください↓
Q. オーストラリアでは安楽死は全国で合法ですか?
A. はい。現在はノーザンテリトリーを除くすべての州・準州で制度が導入されており、地域ごとに細かな条件は異なります。
Q. オーストラリアの安楽死の条件は何ですか?
A. 主な条件として、成人であること、オーストラリアの市民または永住者であること、重篤で回復の見込みがない病気であること、本人の明確な意思があることなどが求められます。さらに複数の医師による確認が必要です。
Q. 外国人でもオーストラリアで安楽死は利用できますか?
A. 原則として利用できません。制度はオーストラリア国民または永住者を対象としており、スイスのように外国人が利用できる制度ではありません。
Q. オーストラリアの安楽死はなぜ厳格なのですか?
A. 患者の自己決定を尊重しつつも、不適切な利用や強制を防ぐために複数回の申請や医師の審査など厳格な手続きが設けられているためです。
Q. オーストラリアの安楽死制度の問題点は何ですか?
A. 手続きが複雑で利用までに時間がかかる点や、医師から制度の説明ができない制限(いわゆる「ギャグ条項」)などが課題として指摘されています。
「世界の安楽死制度の全体像」については、こちらをご覧ください↓
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