top of page

【韓国 安楽死 #1】韓国の安楽死は今どうなっているのか|法案・世論・反対勢力の実態

更新日:1月2日

🎧音声による動画解説



安楽死法案の提出と韓国における法制度の現状と国民世論



1. 安楽死法案の提出と歴史的経緯


2024年7月5日、韓国の国会においてアジアで初となる安楽死法案が提出されました。提出したのは与党『共に民主党』の安圭佰(アン・ギュベク)国会議員であり、これにより韓国社会における安楽死制度の法制化議論が正式に国政の場で扱われることとなりました。


共に民主党:アン・ギュベク議員

韓国国会に安楽死法案が提出される

「末期患者に対して安楽死を認める法案を提案された」


「アン・ギュベク議員は尊厳支援法の制定を提案...立法討論が始まる」


この法案は、かつて2022年にも提出が試みられたものの、韓国医師会およびカトリック教会などの反対により廃案となった経緯を有しています。

提案された法案が可決されれば、アジアにおける先駆的事例となる可能性が指摘されていました。




2. 韓国の法制度の現状|延命医療決定法


韓国では2018年に「延命医療決定法」が施行されました。この法律は、末期患者に対して 心肺蘇生や人工呼吸器などの延命治療の中断を認めるものであり、患者の自己決定権を一定程度尊重する枠組みとなっています。


日本で言うところの、いわゆる「尊厳死法案」が可決されたということです。消極的安楽死(いわゆる尊厳死)を法的に担保した法律です。

世界では2015年までには、とっくに成立していた法案ですが、韓国も遂に追従した形となりました。日本では2012年に提出されようとしたものの、反対派の強硬的な姿勢により立法が断念された過去があります。


韓国では2018年に「延命医療決定法」が施行。日本の尊厳死法案に相当する法律

もちろん、この法制度は厳密には「安楽死」そのものを認めるものではありません。安楽死は一般に、医師の関与の下で致死的手段によって患者の生命を積極的に終了させる行為を指し、現在の韓国の法制度では違法とされています。



3.韓国国民の意識と安楽死に関する世論調査


複数の調査によれば、韓国における安楽死や医師による自殺幇助に対する支持は非常に高い水準にあります。調査データの例として、成人を対象にした世論調査では、韓国国民の約84%前後が安楽死の合法化を支持しているという結果が報告されています。

こうした支持の主な理由には、「無益な治療を続ける必要はない」、「自らの死を決める権利を重視する」、「苦痛を軽減したい」といった意見が含まれています。


韓国国民の安楽死の支持率は84%であるという調査結果



さらに、別の調査では、82%以上、または90パーセント以上の支持率が示されるとの報告もあり、ほとんどの調査で支持割合が80%以上に達していることが確認できます。


むふむふチャンネル様の提供


こうした高い支持率は社会的価値観の変化を示唆しており、自己決定権や苦痛の軽減といった倫理的要素が強く反映されていると考えられます。




4. 海外での安楽死利用|スイスを選ぶ韓国人の実態


韓国国内での法制度整備が進まない間、一定数の韓国人が スイス等で安楽死支援団体に登録し、安楽死を選択している事例が報じられています。具体的には、複数の支援団体に会員登録する韓国人が増加傾向にあり、実際にスイスでの安楽死を体験する事例が確認されています。


韓国国民のスイスの安楽死団体に会員登録している人々の年次推移
2017年の時点で、ディグニタスに既に24人が会員登録。おそらく2015年以降からスイスの安楽死が認知&注目されはじめ、2020年以降から急上昇

約300人がいずれかの団体に会員登録:

ディグニタス:136人

エグジットインターナショナル:55人

ライフサークル:13人


「痛みを終わらせる唯一の方法」...スイスへ向かう韓国人


末期がんの母親の、スイス安楽死に同行した娘ナム・ユハ著『今日が明日ならいいのに』


この現象は、国内の制度的限界を背景として患者や家族が海外の選択肢を探す現状を反映しています。




5. 韓国における安楽死反対意見とその根拠


安楽死制度の導入に対しては、依然として反対意見も存在します。主な反対勢力としては以下が挙げられます。


韓国で安楽死を反対する集団


・宗教団体(特にキリスト教系)

 国民の4分の1(約30%)はキリスト教信者であり、特にプロテスタントが主流とされています。

 韓国のキリスト教徒は1376万人いるとされ、仏教徒の割合は約15%ほどです。


・韓国医師会

 ただし、現場で働く医師の 『76.3%』が安楽死には肯定的という調査結果があります。


・ホスピス(緩和ケア医)

 一部の緩和ケア医が安楽死に反対するのは、世界普遍の現象です。


上記が主要な反対派とみられています。宗教団体の存在が、日本では可視化・表面化されていませんが(オールドメディアが報じない)、ほとんど日本の状況と似たようなところでしょう。


ただ、日本のように…ALS患者団体や、その他有象無象の障害者団体が…先頭を切って(時には過激な手段で)安楽死(または尊厳死)に反対する集団(多くはクリスチャン勢)は

 

『韓国にはいない』


とのことです(韓国の安楽死協会員より)。そういう集団も少しはいると思いますが、日本のように徒党を組んで過激に社会にパフォーマンスする団体はいないそうです。


むふむふチャンネル様の提供動画

反対論の背景には、生命観や倫理観、社会的安全性への懸念があり、単なる制度論だけではなく、社会全体の価値観に関わる問題として議論されています。

これについては別回で述べます。




6. 韓国の安楽死制度が直面する課題と今後の展望


現在の韓国の安楽死制度に関する議論は、政局の度重なる混乱により、法案が提出されながらも審議がスタートしていせん。

政治的な状況や社会の優先課題との調整のなかで、安楽死法案は後回しにされています。


また、法制度整備に際しては、倫理的・社会的リスクをどのように管理するか、患者や医療従事者の権利と責任をどう定義するかなど、多くの制度設計上の課題が残されています。


一方で、韓国内の高齢化の進展や終末期医療に対する意識の変化は、安楽死や医療的選択の議論を深化させる要因となっています。

患者の尊厳や自己決定の尊重といった価値観が今後の制度設計にどのように反映されるかは、引き続き国民的議論が必要です。




結論|韓国の安楽死議論が示す社会的意味


韓国における安楽死制度をめぐる議論は、国民の高い支持と、政治的・倫理的反対および利権の間で揺れ動いています。

法案提出という画期的な出来事を契機として、安楽死に対する社会的理解や法制度の在り方に関する議論が今後さらに深化することが期待されます。韓国社会がどのように尊厳ある死生観と法的枠組みを構築していくのかは、国内だけでなくアジア全体の安楽死論議にとっても重要な示唆を与えるでしょう。

bottom of page