【フランス安楽死 #2】フランス 安楽死法案:申請から手続き・保護措置まで全プロセスを徹底解説
- リップディー(RiP:D)

- 2025年11月26日
- 読了時間: 6分
更新日:1月3日
🎧音声による動画解説
フランス 安楽死法案:
申請から手続き・保護措置まで全プロセス解説
本稿では、フランスにおける安楽死法を対象として、
・「安楽死の申請から終了に至るまでの具体的プロセス」
・「患者に不利益をもたらさないために設けられた保護措置(セーフティガード)」
――以上の二点に注目しながら解説いたします。
フランス安楽死法案|外部リンク情報
審議中のフランス安楽死法案
フランス安楽死法案の正式名称
『安楽死および自殺幇助の審査法』
(Wet toetsing levensbeëindiging op verzoek en hulp bij zelfdoding )略して『Wtl』
フランスでの、安楽死の一般的な呼称は定まっているとは言い難いですが、法案作成の主要メンバー(オリヴィエ・ファルロニ議員)が、
Droit à l'aide à mourir
(直訳:死のほう助権 or 死に際における幇助の権利)
上記の言葉を国会で唱えているので、おそらく、こちらが社会に流通していくと推測します。

※ただし…隣国のオランダでは英語でいうEuthanasia(ユーサネイジア)を何の躊躇いもなく普通に使用しています。(オランダ語ではEuthanasie)。
また南米もEutanasia(エウタナジア)が一般的です。BBCニュースが南米の安楽死を報道する際も(現時点では)、普通にユーサネイジアを連呼しています。
ドイツ語圏や、フランス、スイスでは、ナチスを連想させることから“ユーサネイジア”を使用したがらない傾向がありますが、使用禁止という訳では決してありません。
フランスの“こだわり”と考えてよいでしょう。
【適格の条件】
フランス安楽死法の適用対象と要件|誰が申請できるのか
1.18歳以上であること
2.フランス国籍を有するか、フランスに安定して定期的に居住していること
3.進行期または末期で、生命を脅かす重篤かつ治癒不可能な病状に罹患していること。
4.症状に関連した現在の身体的または心理的苦痛が耐え難い状況で、患者が治療を受けることに中止の選択をした場合
5.自由かつ充分な情報に基づいて自分の意志を表明
上記の適格条件についてですが、これには例えば…
・精神疾患が含まれるのか?
・頚髄損傷による四肢麻痺は含まれるのか?
・重度の線維筋痛症は含まれるのか?
についてですが、おそらくは
非末期疾患も対象に含まれます
法案は、対象となる病状を
「①進行期または②末期で、③生命を脅かす重篤かつ治癒不能な病状」 と規定しています。
この3つを満たせばよく、「余命○ヶ月」や「死期が目前」など、終末期に限定していない のは明らかです。
また非末期疾患も認めている合法国の要件に照らし合わせても、そう判断するのが妥当でしょう。精神疾患が唯一の基礎疾患は認可されるのか分かりませんが、おそらくは運営途上で段階的に展開していくものと思われます。
ただ、この法案は下院議会にて承認されたもので、上院では大幅な変更もあり得ることは留意しておいてください。
【安楽死 審査プロセス】
【申請段階】
主治医による医学的評価|耐え難い苦痛と代替手段の検討
(患者の意思を初めて明確にする段階)
申請方法は:
患者本人が 直接 医師に申し出る
家族・介助者・代理人が代わりに申請しては「いけない」
遠隔診療(オンライン診察)では申請不可
最初の医師による説明と支援提供(情報提供義務)
申請を受けた医師は、まず以下を説明する義務がある:
病状・予後の説明
利用可能な治療法や支援制度
緩和ケアを受けられることの説明と提案
必要なら心理士・精神科医を紹介
患者はいつでも申請を撤回できることを伝える
【評価段階】
独立医師によるセカンドオピニオン制度|
二重確認の仕組み
複数専門家による評価
中心となる主治医は、以下のような 複数専門家の意見を集めて評価
同じ病気を専門とする別の医師
看護師・心理士など、患者に関わる他職種
必要に応じて:
施設(老人ホームなど)の医師 福祉担当者 など含む
※この医師は、患者の医療記録にもアクセスし、本人を診察して評価
主治医は 要請から15日以内 に
申請を認めるまたは
申請を拒否する
のいずれかを判断し、患者へ 口頭+書面で通知する。
※必要性があれば、法的後見人にも通知。
【実施・報告段階】
フランスにおける安楽死の実施方法
・熟慮期間(クーリングオフ)
主治医が「実施可能」と判断した後:
最低2日間の熟慮期間(患者の尊厳を損なわないと判断すれば短縮可)
この期間を経たのち、患者は 「実施の最終確認」を医師に伝える 必要がある。
※ここでも患者はいつでも撤回可能。
・実施日を患者・医師・看護師で決定
主治医(または付き添い担当の医師/看護師)と患者が 投与日を協議して決める。
ただし、通知から 1年以上経った場合は再評価(意思確認のやり直し) が必要。
・致死性物質の処方と薬局の準備
主治医が法律に基づいた「致死性物質」を処方
指定された地域薬局または院内薬局が調剤
投与担当の医師・看護師が受け取る
※投与薬は非常に厳格な管理のもとで扱われる。
・実施場所の決定
以下から患者が選択:
自宅
病院
老人施設
その他、患者が希望する場所
必要に応じて:
本人が選んだ人が同席することも可能
・投与当日の流れ
担当の医師または看護師は、投与時に:
患者が実施に同意しているか最終確認
必要なら準備を手助け
投与を見届け、監督する
・投与方法
原則は 患者自身が投与
身体的に不可能な場合 → 医師または看護師が代わりに投与
投与の途中で患者が「やめたい」と言えば、即座に中断。
新しい日程を設定できる。
・終了後の処理
医師・看護師は以下を行う:
・投与の経過を詳細な報告書にまとめる
・使わなかった薬剤は薬局へ返却(厳格な管理)
・ 死亡証明書の作成
死亡は通常の規定に従い、正式な死亡証明書が作成される。
・行政への記録と監査
・実施に関するすべての行為は 国家の情報システムへ記録
・監査委員会(医学専門家を含む)が後日チェック
これにより:
・不適切な手続き
・条件不備での実施
・医師の倫理違反
などがないかを監視する仕組みが整えられている。
フランス安楽死|申請手続きの全体フロー
①かかりつけ医へ申請(第1チェック)
⇩
②別の医師も含み、他職種と連携で評価(第2チェック)
⇩
③実施後に国家データベースに記録、監査(※ある意味、第3チェック)
まとめ|フランス安楽死 法案のポイントと注意事項
ザックリではありますが、世界の安楽死プロセスは以下の経過をたどるのが一般的。

※もっとも一般的なモデルでは4段階で、③の過程を踏むことが多い。
この一般的プロセスより審査ルールが「より厳しいのか、または“緩い”のか…」
こちらのプロセスを一つの基準にすると、世界各国の違いが判別しやすいと思います。
ただ、フランスの安楽死制度は『③を抜く』(予定)という事は注目に値します。
ちなみにカナダ、アメリカも同じ仕組みです。
つまり二人の医師間で安楽死プロセスは完結し、更なる
外部の医師や審査機関を設定していないということです。
この件も含めて2026年1月20から始まる上院での審議に注目が集まります。



