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【フランス 安楽死 #5】フランス安楽死法案、上院で核心条文を否決― 終末期の選択と国民意思はどこへ向かったのか

  • 執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
    リップディー(RiP:D)
  • 1月22日
  • 読了時間: 5分

更新日:7 日前

【フランス安楽死法案、上院で核心条文を否決― 終末期の選択と国民意思はどこへ向かったのか】

🎧音声による動画解説



要約図(自由使用可)


フランス安楽死法案の現在: 揺れる「死を選ぶ権利」と民意の乖離


フランス安楽死法案、上院で骨抜きにされた「死を選ぶ権利」


フランスでは現在、終末期にある患者が、自身の意思に基づき医療的に「死の援助(aide à mourir)」を受ける権利を認めるかどうかをめぐり、国会で激しい議論が続いていることは、こちらの記事でも紹介しました。



これは、単なる医療制度の調整ではなく、「生の最終段階を誰が、どのように決定するのか」という、社会の根幹に関わる問題です。


しかし2026年1月21日、フランス上院で行われた審議は、この法案にとって重大な転換点となりました。



フランス終末期医療をめぐる安楽死法案とは


この法案は、2025年に国民議会(下院)で可決されました。

【フランス安楽死 #1】フランス安楽死の現状と時系列まとめ|法案・制度・最新動向を整理
www.rest-in-peace-with-dignity-ripd.com
【フランス安楽死 #1】フランス安楽死の現状と時系列まとめ|法案・制度・最新動向を整理
🎧音声による動画解説フランスの安楽死法案│保留された国民の意思1.フランス安楽死法案が下院議会で承認2025年5月27日、フランス下院議会にて『安楽死法案』が承認されました。賛成:305票反対:199票大差をつけての法案可決となりました。日本の大手メディアは(反対派に忖度する傾向があるので)“プチ”情報統制気味に報じないだろうと想定してましたが、朝日新聞以外は、ほとんど報道しているようでした。余談ですが、毎日新聞や京都新聞は、安楽死制度を断固反対するメディアとして有名です。2.フランス国民のほとんどは安楽死を支持昨年2024年7月の段階でも、国民の84%が安楽死法案を支持…しかも左右の有権者も「賛成」が多数。そして秋口10月7日に上院での審議を開始する予定でした。しかし、またもや延期する事態となっています。その理由を説明するために、ここまでの長い長いフランスの安楽死制度への道程を振り返っておきます。3.フランス安楽死法案の経緯と時系列整理世界的映画監督であるフランス人の ジャン=リュック・ゴダール氏 が、スイスにおいて自発的な意思に基づき最終的な医療行為(いわゆる安楽死)を選択したと

下院で可決された「尊厳ある選択」の内容


下院版の法案が目指していたのは、以下のような原則です。


  • 患者本人の明確で自由な意思が前提であること

  • 複数の医師による厳格な医学的判断

  • 緩和ケアを尽くした上でなお残る耐え難い苦痛への対応

  • 意思の撤回がいつでも可能であること


つまり、「誰でも安易に死を選べる制度」ではなく、


限界状況に置かれた当事者が、最後の選択肢として尊厳を守るための制度


でした。この法案は、長年にわたる市民的議論と熟議を経て、下院で多数の支持を得て成立しています。


法案の詳細については、こちらから



上院で否決された安楽死法案の核心条文


ところが2026年1月21日、上院はこの法案の核心部分――「援助としての死(安楽死・医療的自殺幇助)」を認める条文を否決しました。


フランス、2026年1月21日、上院はこの法案の核心部分――「援助としての死(安楽死・医療的自殺幇助)」を認める条文を否決
反対144票/賛成123票

賛否は拮抗しましたが、結果は否決。

この条文が失われたことで、法案は実質的に中身を失った状態となります。


この判断に対し、法案の発案者の一人であるオリビエ・ファローニ議員は、強い言葉で批判しました。

「上院は、この法案を“機能しないもの”にしてしまった」「本来の目的は完全に失われている」

上院による修正は、対象を「生命が数時間・数日以内に尽きる場合」にまで極端に限定する方向で進められ、制度としてほとんど意味をなさない内容になったと指摘されています。



フランス上院と下院の政治的対立構造


上院での否決の背景には、フランス社会に存在する深い価値観の対立があります。


上院多数派(右派・中道)


・医療的に死を援助する制度そのものに強い抵抗

・「生命の尊重」を理由に、制度化に慎重


下院多数派(左派・中道左派)


・苦痛の中にある当事者の自己決定権を重視

緩和ケアと選択権は両立しうるという立場


この政治的分断の中で、最も重要であるはずの当事者の声が後景に追いやられていることは否定できません。


フランス、2026年1月21日、上院はこの法案の核心部分――「援助としての死(安楽死・医療的自殺幇助)」を認める条文を否決、反対144票/賛成123票


世論調査が示す「90%以上の賛成」という現実


92%のフランス人が賛成、最新の直接質問した世論調査(Ifop、2024)によると。


安楽死法案をめぐる世論と政治判断の乖離


特に看過できないのは、世論と政治判断の乖離です。

フランスでは、複数の世論調査において


国民の90%以上が「一定条件下での安楽死・死の援助の合法化」に賛成している


という結果が繰り返し示されてきました。

それにもかかわらず、今回の上院判断は、この明確な民意を反映したものとは言い難い内容となっています。



当会RiP:Dとしての見解と問題提起


社会全体で考えたとき、世論調査では国民の90%以上が賛成という結果が示されているにもかかわらず、その意向が制度設計に反映されない政治的判断が下されたことに、当会は強い違和感と深い残念さを覚えます。


苦痛の中で生きるか、死を迎えるかという選択は、決して抽象的な倫理論ではなく、現実に存在する人間の切実な問題です。


にもかかわらず、政治的力学や理念対立の中で、当事者の声が制度の外へと追いやられてしまうのであれば、それは民主主義の在り方そのものが問われる事態だと言わざるを得ません。

フランスのカトリック教メディア: 

安楽死は一人の人だけに関わるものではなく、むしろ一軒の家全体に関わるものです。善き牧者のアニーセス修道女、貧者の小さな姉妹会は、この行為が施設全体と一つの事業全体を危険にさらすものであることを思い出させます。



フランス安楽死法案の今後と日本への示唆


法案は今後、下院に差し戻され、再度調整される可能性があります。国民投票という選択肢も一部で議論されていますが、発案者自身は


「骨抜きにされた法案を国民投票にかけても意味がない」と述べています。


このフランスの事例は、日本にとっても決して他人事ではありません。

終末期医療、尊厳死、安楽死――これらの問題は、


いつか必ず私たち一人ひとりの問題として立ち現れます。


誰のための制度なのか。

誰の声が聞かれているのか。


フランスで起きているこの出来事は、私たち自身が「尊厳ある最期」について考えるための、重要な問いを投げかけています。


参考・出典


Rest in Peace with Dignity

 (RiP:D リップディー)ディでー)

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