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ドイツの安楽死協会DGHSとは?【設立背景・活動・判例まで完全解説】

  • 執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
    リップディー(RiP:D)
  • 2025年12月8日
  • 読了時間: 10分

更新日:4月14日


👉 安楽死の全体像については、まずこちらで整理しています



ドイツの安楽死議論を理解する上で、「ドイツ安楽死協会(DGHS)」の存在は欠かせません。DGHSは、自己決定権に基づく死の選択を支援する団体として長年活動しており、ドイツにおける自殺幇助や法制度の議論に大きな影響を与えてきました。



まず結論から整理します。

・DGHSは「安楽死の実施団体」ではない ← 自殺幇助の支援と権利擁護が中心


・ドイツでは積極的安楽死は違法 ← DGHSも直接的な死の実行は行わない


・活動の核心は自己決定権の擁護 ← 「自ら死を選ぶ自由」を社会に提起


・2020年憲法裁判決と深く関係 ← 自殺幇助の権利をめぐる議論に影響・制度は未整備で流動的 ← DGHSの活動は現在も議論の中心にある



このようにDGHSは、「安楽死を実行する組織」ではなく、死の自己決定権を社会的・法的に確立しようとする思想的・実践的団体として位置づけるのが正確です。


本記事では、DGHSの設立背景から活動内容、そしてドイツの判例との関係までを体系的に整理し、その役割と影響力をわかりやすく解説します。



👉 世界各国の安楽死制度の比較はこちらでまとめています


🎧音声による動画解説



要約図(自由使用可)


ドイツ安楽死協会に関するインフォグラフィック。高齢の姉妹が笑顔で並んでいる。背景は山と日没。詳細な説明や統計データも表示。


ドイツの安楽死協会(DGHS)について


2025年11月19日、ドイツから安楽死に関するニュースが入りました。


欧州芸能界で活躍した双子「ケスラー姉妹」の写真と記事。姉妹は89歳で自殺。背景にカラフルな舞台、CNNロゴが見える。

(出典↓)




概要:ケスラー姉妹とドイツ安楽死協会DGHS|象徴的支援者としての役割


・1950〜60年代に欧州で人気を博した「ケスラー姉妹」の Alice ケスラー さんと Ellen ケスラー さんが、89歳で亡くなった。自殺幇助(安楽死)によるもの。


・ふたりは以前から「同じ日に一緒に死にたい」と望んでおり、約1年前に支援団体 Deutsche Gesellschaft für Humanes Sterben(DGHS) に連絡、会員となっていた。


・DGHS が今回、この姉妹の自殺幇助(安楽死)が実現したことを明らかにした。姉妹の願い通り、ふたり一緒に人生を終えた


>ふたり一緒に人生を終えた。

→そう記述されているので、いわゆる


カップル安楽死

(Duo Euthanasia:同伴・二重安楽死


が実施されたということになります。

👉同伴安楽死については、オランダの記事も参照して下さい↓



元オランダ首相のカップル安楽死(同伴安楽死)の記事
元オランダ首相ヤン・ファン・アフト氏夫妻で日本でも話題になりました。スイス、ベルギー周辺では希望すれば普通に実施されています。

ケスラー姉妹は、日本での知名度は低いですが、欧米では1950年代から一世を風靡したスターのような存在だったようです。


著名人の安楽死ということで話題になったので、このニュースは「安楽死や自殺幇助が合法、かつ本人の強い意思に基づいて行われる国もある」ということを示す具体例になったことでしょう。



DGHSの設立背景と1980年代のドイツ社会


ところでドイツの安楽死協会の存在は、日本では、ある理由から(後述)知名度が低いのですが、スイスと同様に、ほぼ同じ時期、形で昔から存在しています。


👉こちらのドイツの現状をまとめた記事も参照してください↓


ここでは記事で言及された、ドイツの安楽死界を率いるDGHSについて簡単に紹介しておきます。



DGHSとは — 基本情報・成立

・DGHS は 、1980年11月7日にドイツで設立された団体で、「人が人生の終わりを自ら決める権利(自己決定権)」「人道的な最期」を支持・保障する市民権/患者保護の市民団体。


・団体形態は、登記された協会/団体で、営利目的ではなく、公益性のある「非営利団体」として運営されている。


・団体の主な目的は、


✅「重病あるいは終末期にある人々が、

自分の意志・価値観に基づき生き方と死に方を選べるようにすること」


✅「人道的、尊厳ある死」


を社会・法制度として保障すること。


👉※DGHSのホームページはこちら↓




 目的・理念

  • 自身の判断能力(意思能力)がある人に限り、自分で「いつ」「どのように」「もし必要なら誰の助けで」人生を終えるかを決める権利を保障する。


  • 痛みや苦しみ、将来的な耐え難い状態(病気、苦痛、多臓器不全、重い障害、終末期など)から、自己の尊厳や人格の統一性を損なうことなく生き終える選択の機会を提供する。


  • 生前の意思表示(例えば「延命しない」「どこで・どのように最期を迎えたいか」)を明文化する「患者の意思表示」や「医療・介護・延命拒否の意思」を含む「事前指示(リビングウィル)」を支援・普及。


  • 医療・介護・緩和ケアの普及および改善。苦痛の緩和/尊厳ある終末期ケアの拡充も重要な柱。


DGHS は政治や宗教、政党には依存せず、あくまで


「人道主義(ヒューマニズム)」

「個人の権利・自己決定」


を軸に据えており、中立性を明示している。



※👉 緩和ケアと安楽死の違いについては、こちらで整理しています


※👉 安楽死と自殺の違いについては、こちらで詳しく解説しています




最近の動向と現状

  • 2015年に事業の停止命令を受けるが、2020年2月、ドイツ最高裁が自殺幇助禁止法を無効と判決したことにより、合法的に援助を受けた自殺が可能になった。これを受け、DGHSは 正式にサービスを提供開始。


※初めて安楽死(自殺幇助)を行なったのは1984年の末期がん患者で、古くから細々と運営していた。

スイスは1943年にあった法律を独自に解釈して1982年にExitがサービス開始。



  • しかしドイツでは、DGHSが、

市民団体が医師や弁護士、地域行政と協力して、

人道的主張をもとに、法律がないまま(悪く言えば“勝手に”、“独自の解釈で”)開始した。


  • DGHSは2025年9月時点で、約50,000 の会員を有する。


  • 最近の報告では、2024年には DGHS が 623件 の医師を通じた自殺幇助を仲介したとのこと。


  • DGHSは、2024年11月に改定された基本原則文書で、自己決定できる成人であれば、

    理由の内容に関係なく「自らの意志で死を選ぶ権利」を認めると明記している。



👉 安楽死をめぐる賛成・反対の論点は、こちらで詳しく整理しています



備考:DGHSとドイツ連邦憲法裁判所判決の関係


記事に「警察が出動した」というのは、安楽死協会の規定されたプロセスであり事件性はありません

スイスも、同じく国家としては安楽死を『法制度化していない』ので、安楽死の実施後は、数十分〜数時間かけて警察の事情聴取が入ります。


それに加えて行政、弁護士、司法、警察、医師などに事前に連携した上で安楽死を実施しています(余談ですが…故に“費用が莫大”…オランダなど法制化した国は、ほぼ無料)。


市民団体、つまり完全に民間のサービス形態なので、審査のための費用は高く、また時間も掛かります。そのため、スイスで安楽死する外国籍の人々は、ドイツが一番多いです。


外国人患者のデータ表と円グラフ。表は1998-2020年の外国人入数、国別人数を示し、円グラフは死因割合を色別に示す。

ディグニタスのホームページ

項目

ドイツ

スイス

法制度

明確な制度なし(判例ベース)

条件付き合法

主体

市民団体(DGHS)

民間団体(Dignitas等)

法的根拠

2020年憲法裁判所判決

刑法の解釈

特徴

判例主導

制度的に安定

外国人利用

多い

非常に多い


※👉 スイスの安楽死については、こちらで詳しく解説しています↓



2020年にドイツ最高裁が、下記の判決を下すまで、

法的根拠は一つありませんでした


あくまでドイツ安楽死協会DGHSが、地域行政や担当してくれる医師、司法、裁判所、弁護士…諸々と連携を組んで『人道的理念』だけを根拠に1980年代からサービスを展開していった形です。(DGHSが先導して周囲を巻き込み、定められた監視のもと“勝手に”活動して、その実績が暗黙の了解で行われていた)。


故に、初めて裁判判例による法的根拠を得た、この判決は画期的、歴史的でした。


赤いローブと帽子を着た数人がドイツの裁判所で判決を下す様子。背景に木彫。落ち着いた雰囲気。上部にテキストあり。

(出典:2020年2月26日 ガーディアンの報道↓)




👉 日本での安楽死をめぐる主要な判例や歴史的経緯については、こちらで体系的に整理しています




👉 日本における安楽死の法的扱いについては、こちらで詳しく解説しています



日本の安楽死反対論では語られにくいドイツDGHSの実像


日本で安楽死を反対する人々(ほとんど“左”巻き界隈)が国民を扇動するために、しばしば用いる言葉とフレーズ…


例.

「優生思想、ナチズム、T4作戦、ヒトラー、レイシズム」

「安楽死をいったん認めると“滑り坂”が起こり日本はナチス化する」


『ドイツでは(裁判判例により)安楽死が合法化している』という事実は、彼ら彼女らにとって不都合な事実です。


上記の言葉とフレーズを無効化してしまう…

故に、ドイツの安楽死事情については徹底的に言及しません

オールドメディアもドイツの安楽死だけは、決して報道してきませんでした。


例.

>障害者や経済的弱者が強制的に安楽死を選択させられている

>カナダでは生活保護より安楽死の申請のほうが簡単らしい


このような懸念を煽るための手段(デマまたは陰謀論)…

その威力が半減してしまうからです。


短髪の眼鏡をかけた人物が手振りを交えながら話す。右側に「安楽死が合法の国で起こっていること」という本が映る。
反対派の御用達ワード「ナチス、ヒトラー、優生思想、T4作戦」を効果的に社会に浸透させるには、ドイツでは安楽死が1980年から実施されていたという事実は隠したい…

文章には赤線で強調された部分があり、右側には本の表紙が表示されています。本のタイトルは「安楽死が合法の国で起っていること」で著者は児玉真美。


まとめ


ドイツの安楽死支援団体「DGHS」は、自己決定権に基づく終末期の選択を支える市民組織として、1980年代から活動を続けてきました。


2020年の憲法裁判所判決により、自殺幇助の全面禁止は否定され、個人の「死を選ぶ自由」が一定程度認められる方向へと転換しています。


制度としては未整備ながらも、ドイツでは判例と市民団体が主導する形で安楽死をめぐる枠組みが形成されつつある点が大きな特徴です。



👉 安楽死の全体像を体系的に理解したい方はこちら


👉 各国の安楽死制度や最新動向については、世界の安楽死動向をまとめたこちらの記事もご覧ください↓


FAQ


Q. DGHSとは何ですか?

A. DGHSとは、ドイツ安楽死協会の略称であり、自己決定権に基づく死の選択を支援する団体です。安楽死そのものを実施するのではなく、自殺幇助の支援や法制度の改善を目的として活動しています。


Q. DGHSは安楽死を行う団体ですか?

A. DGHSは医師による直接的な安楽死を実施する団体ではありません。主に自殺幇助に関する支援や情報提供を行う組織です。


Q. ドイツでは安楽死は合法ですか?

A. ドイツでは積極的安楽死は違法とされていますが、自殺幇助については2020年の憲法裁判所判決により全面禁止はできないとされています。


Q. DGHSはどのような活動をしていますか?

A. 主に会員への相談支援、法制度の改善に向けた活動、自己決定権に関する啓発などを行っています。


Q. なぜDGHSは議論の中心になるのですか?

A. 自殺幇助と自己決定権という重要なテーマを扱っており、ドイツの憲法判例や法制度の議論に大きな影響を与えているためです。


▼関連記事


👉 安楽死の種類(積極的・消極的・間接)の違いはこちらで整理しています


👉安楽死と尊厳死の違いをわかりやすく解説

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