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【スペイン安楽死 #1】成立経緯と現状

  • 執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
    リップディー(RiP:D)
  • 11月17日
  • 読了時間: 4分

更新日:6 時間前

【スペイン安楽死】成立経緯と現状


制度の概要 (スペイン安楽死)


スペインでは、2021年6月に安楽死制度(Eutanasia/Ayuda para morir)が正式に法制化されました。この法律により、重篤な疾患や耐え難い苦痛に苦しむ患者が、一定の要件と手続きを満たした場合に、医師による生命終結の補助を受けることが可能となりました。


制度開始から1年間で、180人が安楽死を実施し、そのうち22人が臓器提供を行い、68件の移植手術が成立しています。


安楽死制度1周年を祝うスペイン保健大臣

制度成立1周年を祝う保健大臣


近年の申請件数は以下の通りです。


・2022年:

 576件の申請 → 288件が実施(50%)

・2023年:

 727件の申請 → 323件が承認(44%)


承認率が下がっている背景には、スペイン国内における行政的手続きの遅さや審査の厳しさがあると考えられています(後述)。

制度運用においては、スペインの安楽死協会「DMD(Derecho a Morir Dignamente)」が積極的に活動しており、スペイン語圏全体で安楽死に関する情報交流を主導しています。


スペインの安楽死協会DMDのXアカウント

スペインの安楽死協会DMDの説明文

※“尊厳死”は、安楽死と置き換えて読んでください。




ラモン・サンペドロ氏と安楽死の成立


スペインの安楽死制度成立には、数十年にわたる市民活動、司法判断、社会的議論が積み重なってきました。その決定的な契機となったのが、ラモン・サンペドロ事件(1998年)です。映画化され、アカデミー外国語賞を受賞していますし、日本でも話題になったので御覧になった方も多いでしょう。


映画『海を飛ぶ夢』のポスター

事件の経緯


・1969年

 ラモン・サンペドロ、ダイビング事故で四肢麻痺の重傷

 

スペイン人、ラモン・サンペドロ氏の事故現場

※実際の事故現場

スペイン人、ラモン・サンペドロ氏の記念碑

・1993年

 「死ぬ権利」を公表し裁判闘争へ


・1998年

 協力者のラモナ・マネイロの支援を得て、服毒自殺

 時効が切れた7年後に親友だったマネイロは「愛のためにやった」とTV番組で告白しています。ビデオカメラの電源を入れたあと、同室でカメラの背後で最期まで彼を見守っていました。

ラモン・サンペドロ氏の協力者だったラモナ・マネイロ本人

・1999年

 社会的な波紋から政府が初の公聴会を開催


・2004年

 映画『海を飛ぶ夢(The Sea Inside)』が世界的にヒット

 → 国際的な注目により、国内の議論が深化


・2009年

 安楽死賛成が国民の75%へ


・2017年

 賛成率85%


・2021年6月

 安楽死制度、正式に成立


スペインの安楽死制度の成立は「個人の苦悩と訴え」が「社会的議論」へと昇華され、それがやがて立法へ結実した典型例と言えるでしょう。

ただ成立は、彼が亡くなり映画がヒットしてから20年以上を経た後のことです。その間、安楽死協会DMDや国民的な運動が、必死に制度成立を訴え続けたことも注目に値します。




最新の動向


現在のスペインの安楽死制度は沢山の問題を抱えていますが、その一つは手続きの遅さです。


① 手続きの遅さ

本来、申請から1か月以内に結論が出るべきところ、実際には 平均75日を要しています。

DMDはこれを強く批判し、「申請者の3人に1人が審査完了前に死亡している」と指摘しています。


スペイン安楽死の問題を説明した文章

② 国際比較での件数の少なさ

スペインの年間死亡者数は約40万人ですが、安楽死件数は他国と比べてまだ非常に少ない水準です。

制度は成立したものの、行政の官僚的性質や医師側の慎重姿勢が影響し、アクセスは決して容易ではありません。


スペインは“後発組”として制度を導入しましたが、今後は「安全性」と「アクセス性」のバランス調整を進めながら、制度改善が求められています。




適格基準(Eligibility Criteria)


スペインの安楽死制度の主な条件は以下の通りです。

1.重篤で治癒不能な疾患

・身体的・精神的苦痛が「耐えがたい」状態。

・治療見込みが極めて乏しい。


2.意思表示

・患者自身が複数回の意思表明を行う

・精神的能力(Competence)が確認される


3.医師による二重審査

・主治医+独立した第二医師が審査

・さらに審査委員会による最終チェック


4.最終手段であること

・緩和ケア等、他の選択肢が提供されていること

・しかし、これらの条件が厳しく運用されていることが、承認率の低迷につながっている側面もあります。


審査方法や具体的なプロセスについては、別回にて安楽死法案の詳細に言及しながら解説します。




歴史的背景

スペインの安楽死制度は、「個人の苦悩と尊厳を社会がどう受け止めるのか」という深い問いへの答えとして成立しました。その点は、やはりオランダ安楽死の影響を強く受けていることが推察されます。


安楽死合法国に多く共通する現象として、

「苦悩する当事者が、自らの言葉で社会を動かした」という点があります。


スペインもまた、ラモン・サンペドロ氏を中心とする当事者たちの行動が、社会的議論の出発点となり、宗教的背景(スペインの9割以上はカトリック教徒)を乗り越えて合意形成を実現しました。


実際のラモン・サンペドロ氏の写真

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