世界 安楽死法|主要国の条件・申請から完了までの比較ガイド
- リップディー(RiP:D)

- 2025年9月28日
- 読了時間: 11分
更新日:1月2日
【世界 安楽死法|主要国の条件・申請から完了までの比較ガイド】
※現在7か国、掲載。今後も追加・改訂・随時更新(最終更新2025年12月21日)
本稿でまとめてあること:
・世界における安楽死法制度の全体像
・主要国における安楽死の申請条件
(適格の条件、年齢・疾患・判断能力)
・世界 安楽死法:申請から実施までのプロセス
(フローチャート)
🎧音声による動画解説
世界 安楽死法|申請から承認までの
標準的なプロセス
①申請段階
患者の意思を初めて明確にする段階
安楽死を扱う医師が適格基準を評価 (第1チェック)
⇩
②評価段階
患者の意思を再度明確にする段階
安楽死を扱う全く別の医師が適格基準を再度評価 (第2チェック)
⇩
③協議段階
複数の専門家による『審査委員会』(国によって様々)が
上記2名の医師評価書を総合的にチェック & 審査 (第3チェック)
⇩
④実施・報告段階
安楽死の実行と、法的な記録提出の段階
主に最初の医師が実施。全ての記録はデーターベース化される。
※③がない国:アメリカ、カナダ、フランス
ほとんどの国で3つのチェック段階あり、4ステップ方式
※この一連の流れを起点にしておけば、他国の法案も何となく理解できます。
【アメリカ(オレゴン州の例)】
【適格の条件】アメリカ安楽死法の適用対象と要件|
誰が申請できるのか
・成人である:
18歳以上であること。
・判断能力がある:
健康に関する決定を下す能力があること。
・末期疾患に罹患していること:
医学的に確認された、治療不能で不可逆的な疾患であり、合理的な医学的判断により
6か月以内に死に至ると予想されること。
・自発的な意思表示:
自らの意思で死を望む旨を表明していること。
外部からの圧力によるものであってはならないこと。
・年齢や障害のみを理由としないこと:
年齢や障害のみを理由として資格を得ることはできない。
※アメリカの場合、致死薬の自己服用(Self-administration)が前提。致死注射はNG。
アメリカの安楽死プロセス:申請から終了までの流れ
①患者が主治医に申請(第1チェック)
⇩
②患者が別の医師と面談(第2チェック)
⇩
③主治医が最終確認
⇩
④実施
【イギリス(イングランド&ウェールズ)】
【適格の条件】イギリス安楽死法の適用対象と要件|
誰が申請できるのか
1.末期疾患の成人(18歳以上)で、回復不能な進行性の疾患があり、その疾患により6ヶ月以内に死亡すると予測される場合。
※神経変性疾患の場合は『12ヶ月以内に死亡すると予測』される場合も含まれるという『案』がありましたが、現在の審議段階では『全ての疾患において6か月以内』とされています。アメリカ同様、厳しい余命要件となってます。
※神経変性疾患:ALS、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、多発性硬化症、ハンチントン病…etc.
2.自身の生命を終わらせる決定をする能力があること。
(※精神的に安定していて判断能力があること)
3.申請時にイングランドまたはウェールズに12ヶ月以上通常居住しており、イングランドまたはウェールズの一般医療機関に患者として登録されていること。
4.明確で、確固たる、十分な情報を得た上で自身の生命を終わらせる意思があること。
5.強制や圧力がない、自発的な決定であること。
備考
※『非末期の疾患』や『精神疾患』は、対象外
どんなに『壮絶な苦痛』を抱えていても、耐え難い『不快感』を持っていても
『寿命がまだまだ残っている』なら、安楽死の対象に該当しません。
イギリスの安楽死プロセス:申請から終了までの流れ
①コーディネーター医師(安楽死に対処できる医師)に要請(第1チェック)
⇩
②独立した医師(まったく別の医師)による安楽死の要請(第2チェック)
⇩
③パネルによる審査(高等裁判官と多方面の専門家による審査)(第3チェック)
⇩
④コーディネーター医師が安楽死を実施後、行政機関に報告
【オーストラリア】
【適格の条件】
オーストラリア安楽死法の適用対象と要件|
誰が申請できるのか
・18歳以上であること。
・オーストラリア市民または永住者であること、およびビクトリア州に通常居住しており、最初の申請時に少なくとも12ヶ月間そうであったこと。
・VADに関する意思決定能力があること。
・治癒不能であり、進行性で、死をもたらす疾患、疾病、または医療状態と診断されていること。
・その疾患により、数週間から数ヶ月以内、最長6ヶ月以内、
または神経変性疾患の場合は最長12ヶ月以内に死に至ると予想されること。
(※非末期の状態では対象外)。
・その疾患が、本人が耐えられないと判断する苦痛を引き起こしており、許容できる方法で軽減できないこと。
・精神疾患や障害のみを理由としてVADの資格は得られない。
※神経変性疾患:
ALS、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、多発性硬化症、ハンチントン病など。
オーストラリアの安楽死プロセス:申請から終了までの流れ
①『調整』医師:患者が適格基準を満たしているか評価(第1チェック)
↓
②『相談』医師:別の登録医師が①と同様の評価(第2チェック)
↓
③『書面』による宣言:2名の証人と調整医師の前で署名(第3-1チェック)
↓
④調整医師が最終チェック:連絡担当者を指名(第3-2チェック)
↓
⑤安楽死許可証を申請:審査委員会と担当省庁が審査して発行(第3-3チェック)
↓
⑥実施
※もう少し簡略化。
①『調整』医師:患者が適格基準を満たしているか評価(第1チェック)
↓
②『相談』医師:別の登録医師が①と同様の評価(第2チェック)
↓
③『書面』による宣言後、最初の調整医師が最終チェックして、安楽死許可証を委員会および省庁(≒国、行政機関)に申請(第3チェック)
※オランダで言うところの『SCEN』に該当。
イギリスで言うところの『パネル審査』に該当。
↓
⑥実施
【オランダ】
【適格の条件】
オランダ安楽死法の適用対象と要件|誰が申請できるのか
1.安楽死の適法性は、「要請による生命の終結および自殺幇助に関する法律」第2条第1項で明文化されている。
その基本原則は、2001年制定当時から現在(2024年)まで大きな改訂はない。
主要な6つの基準は以下の通り:
・患者の要請が自発的かつ慎重に考え抜かれたものであること
・患者の苦痛が絶望的で耐え難いものであること
・医師が患者に対し、病状・予後について十分な説明を行っていること
・医師と患者の双方が、他に合理的な解決策が存在しないと結論したこと
・少なくとも1名の独立した医師が診察・書面による意見を提出していること
・医療的行為によって安楽死が実施されること
さらに、以下の補足事項も重要です:
・末期・非末期の区分は存在しない。
余命が長くても、苦痛が耐え難いと判断されれば申請が可能。
よって(病態により時間が掛かりますが)精神疾患や四肢麻痺で重度寝たきり状態も、要件を満たせば可能。
大部分が基礎疾患を有した方が安楽死を申請するが、疾患の有無は原則的に関係ない。
希望者が「耐え難い苦痛、壮絶な不快感」を抱え、精神的な限界を突破せんばかりの苦悩があるなら、全てが対象となり得る。
・年齢要件:
2023年の改正により、1〜11歳の安楽死も特定条件下で認可(保護者同意が必要)。
・カップル安楽死(Duo-euthanasia):
2016年、既存の安楽死法の枠組みで個別に適用され始め、2024年には54件が確認されている。
オランダの安楽死プロセス:申請から終了までの流れ
①かかりつけ医へ申請(第1チェック)
⇩
②精神科医を含む独立した医師、他ケアスタッフによる評価(第2チェック)
⇩
③SCEN(安楽死のプロ医師)による協議(第3チェック)
⇩
④実施後にRTEが審査(※ある意味、第4チェック)
【カナダ】
【適格の条件】
カナダ安楽死法の適用対象と要件|誰が申請できるのか
公的医療の受給資格(居住や待機期間の条件を満たす等)
18歳以上で、医療判断の能力がある
自発的な申請(外部からの不当な圧力がない)
インフォームド・コンセント(緩和ケアを含む代替手段の説明を受けた上での同意)
『重大かつ治る見込みのない状態:
‣ 重篤で治らない病気・疾患・障害
‣ 能力の不可逆的低下
(身体・社会・職業など、本人にとって重要な機能の重度の低下)
その状態が、『本人にとって耐え難く、本人の許容条件では緩和できない持続的な苦痛』を引き起こしている
苦痛評価の注意点
身体・心理・社会・実存の各側面を幅広く把握
本人の語りと臨床像・既往の意思表明との一貫性
苦痛の原因が病状や低下に起因しているか
苦痛が持続的であるか
主観性の尊重(苦痛は本人の主観に属する)
備考
・オランダの安楽死モデルに、やや近い(非末期疾患も許容)。
つまり認知症、頚髄損傷(首から下が動かない)などで実存的な苦痛を持つ患者も許容範囲内。
※ただし精神疾患が唯一の基礎となる病状への安楽死(MAID MD-SUMC)は、2024年3月17日からは合法の予定でしたが、残念ながら世界的なカナダ安楽死陰謀論の大流言の影響を受け、2027年3月17日まで延期を余儀なくされました。
カナダの安楽死プロセス:申請から終了までの流れ
【本人の希望】
⇩
初期説明(選択肢・支援・撤回自由)
⇩
書面リクエスト(独立証人))
⇩
2名評価(独立)+必要な専門家コンサル
Track1の場合(末期):一般セーフガード
(条件付き)最終同意免除の合意可
Track2の場合(非末期):追加セーフガード
90日最短(短縮の可否は要件次第)
支援手段の情報提供·紹介
「真剣な検討」の確認
⇩
→実施直前の撤回機会 &最終同意→提供(自己投与 or 提供者投与)
→記録·死亡診断·報告
【スペイン】
【適格の条件】
スペイン安楽死法の適用対象と要件|誰が申請できるのか
• 年齢・居住地:
18歳以上で、スペイン国籍またはスペインに法的な居住権を持つか、12ヶ月以上の居住を証明する住民登録証明書を持つ者。
• 意思決定能力:
申請時に判断能力があり、意識があること。
• 情報提供の理解:
自身の病状、利用可能な治療法、緩和ケアを含む選択肢、および依存症者への支援に関する情報(もしあれば)を全て書面で受け取り、理解していること。
• 医学的状態:
担当医師によって、
「重度で慢性的な身体機能不全を伴い、
耐えがたい肉体的または精神的苦痛を伴う状態」
または
「重篤で回復不能な病気で、耐えがたい肉体的または
精神的苦痛を伴い、生命予後が限られている状態」
であると認定されていること。
• 自由意思と非強要:
外部からの圧力の結果ではなく、自発的に、書面または記録可能な他の方法で2回申請していること。
2回の申請の間隔は最低15日間空ける必要がありますが、担当医師が患者の同意能力喪失が差し迫っていると判断した場合は、状況に応じてより短い期間でも認められる。
• インフォームドコンセント:
安楽死の援助を受ける前に、インフォームドコンセントを提供すること。これは患者の診療記録に記録されます。
※特例
患者が上記の要件を満たす意思能力を完全に失っている場合でも、以前に事前の指示書(living will)や同等の法的文書を作成しており、それが安楽死の援助を望む内容であれば、その文書に基づいて援助が提供されることがある。
※留意点
スペイン安楽死法案、法律第3条(定義)と第5条(要件)によると、対象となる疾患は
2つのカテゴリーに分類されます。
①「重篤で治癒不能な病気」
身体的または精神的苦痛が「耐えがたい」ほど続き、改善の見込みがない。
生命予後は「限定的」(数か月以内に限られない)。
②「重度・慢性かつ能力を奪う状態」
自立生活ができない、他者や機器に依存して生活するような重い障害や機能不全。
長期にわたり改善の見込みがない。
身体的または精神的に「持続的かつ耐え難い苦痛」を伴う。
つまり末期疾患でなくても許容範囲になります。
「末期(terminal)」であることは条件に含まれていません。オランダやベルギーと同じく、
慢性疾患や進行性障害で耐え難い苦痛があれば、適格基準の範囲内です。
(例:神経難病、完全麻痺、ALSなど)。
⇩
つまり、条件の幅は広いのが特徴です。
また精神疾患のみの申請も許容されます。
スペイン安楽死法案の法文上に「padecimiento físico o psíquico(身体的または精神的苦痛)」と明記。
ただし当然「慢性かつ改善見込みがない」「耐え難い苦痛」という厳しい条件を満たす必要があります。
実際の運用では、精神疾患を理由にするケースはきわめて慎重に審査されています(オランダ・ベルギーと同様)。
まとめると…
・スペインの安楽死は 『末期に限らない』。
→ ALSや進行性難病、重度の慢性障害も対象。
・精神疾患も法的には排除されていない。
→ ただし、厳格な審査と保証・評価委員会による多重チェックが必須。
スペインの安楽死プロセス:申請から終了までの流れ
①担当医師(多くは主治医)に申請(第1チェック)
⇩
②顧問医師(最初とは全く別の独立した医師)の評価(第2チェック)
⇩
③安楽死『審査委員会(保障・評価委員会:第3者外部機関)』から指名された
新たな医師1名&法務担当者1名による評価(第3チェック)
⇩
④実施
【フランス】
【適格の条件】
フランス安楽死法の適用対象と要件|誰が申請できるのか
1.18歳以上であること
2.フランス国籍を有するか、フランスに安定して定期的に居住していること
3.進行期または末期で、生命を脅かす重篤かつ治癒不可能な病状に罹患していること。
4.症状に関連した現在の身体的または心理的苦痛が耐え難い状況で、患者が治療を受けることに中止の選択をした場合
5.自由かつ充分な情報に基づいて自分の意志を表明
フランスの安楽死プロセス:申請から終了までの流れ
①かかりつけ医へ申請(第1チェック)
⇩
②別の医師も含み、他職種と連携で評価(第2チェック)
⇩
③実施後に国家データベースに記録、監査(※ある意味、第3チェック)



