top of page

カナダ安楽死デマとは何だったのか|2022年の証言騒動とMAiD制度の実態

  • 執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
    リップディー(RiP:D)
  • 11 時間前
  • 読了時間: 7分

🎧音声による動画解説



要約図(自由使用可)


カナダの安楽死制度(MAiD): 不安が生んだ「デマ」と「実態」の再検証


はじめに:2022年、なぜカナダ安楽死は「不安の象徴」になったのか


2022年、カナダの安楽死制度(MAiD:Medical Assistance in Dying)をめぐり、

日本語圏を含む国際社会で大きな不安と混乱が広がりました(※日本では主に2024年初頭から)。


そのきっかけとなったのは、「支援を求めた結果、安楽死を提案された」とされる、いくつかの当事者証言でした。

これらのエピソードは、強い感情を伴って拡散され、


・「カナダでは弱者が死に追いやられている」

・「安楽死が社会保障の代替になっている」


といった言説…いわゆる


「カナダ安楽死デマ拡散」


を大量に生み出す土壌にもなりました。


本稿では、まず当時何が起きていたのかを丁寧に振り返り、そのうえで、現在明らかになっている事実と制度の実態をもとに、冷静な再検証を行います。



2022年に注目を集めた2つのエピソード――何があったのか


① 退役軍人・元パラリンピアンの証言


2022年、カナダの元パラリンピック選手であり、下半身麻痺の障害をもつ退役軍人の女性が、議会証言で次のように語りました。


彼女は、自宅で安全に生活するために階段昇降機の設置支援を退役軍人省(Veterans Affairs Canada)に長年求めていました。しかし、支援が進まない中で対応したケースワーカーとのやり取りの中で、


「MAiD(いわゆる安楽死)という言葉が話題に出た」


と証言したのです。

彼女は、「生きるための支援を求めたのに、死の選択肢を示されたと感じた」と語り、これが大きく報道されました。


この証言は事実として重く受け止められ、政府調査が行われました。その結果、


  • 組織として安楽死を勧める方針は存在しない

  • 特定の職員による不適切な対応であったこと

  • 同様の事例は限定的であり、当該職員は職務から外された


という結論が公表されています。



② 「住宅改修を求めたら安楽死を示された」という報道


同時期、海外メディアや日本語圏のブログを通じて、

「住宅改修や生活支援を求めた障害者に、安楽死が提案された」

という類似の話が繰り返し紹介されました。

これらの多くは、


  • 退役軍人省の対応事例

  • 本人の強い主観的ショックを伴う証言


をもとに構成されており、


制度として安楽死が

自動的に提示される仕組みがあるかのような印象


を与えました。

ここで重要なのは、両事例に共通している点です。

強制されたわけではないしかし「選択肢」として言及された

この曖昧さが、不安を増幅させました。


「オンタリオ州の男性がホームレスになる代わりに医療補助死を申請しています」記事
この記事だけ読むと「カナダはヤバイ!」と誘導されませんか?

※この件や、他のエピソードについては別記事で言及していきます。

 この類の報道姿勢は、オールドメディアの、数々の捏造記事と近似しています

(特に、吉田清治 (文筆家) や、朝日新聞の慰安婦報道デマ問題との関係性に酷似しています)。

 


不安が「カナダ安楽死デマ」へと変わっていった構造


2022年当時、これらのエピソードは、制度全体の説明や法的要件の整理を欠いたまま拡散されました。


・「支援がないから死を勧められる国」

・「障害者や貧困層が安楽死に追い込まれている」

・「医療費削減のために死が選ばされている」


こうした言説は、断片的事実+強い感情表現によって増幅され、特定の思想的立場や反対運動の文脈と結びつきながら、「カナダ安楽死デマ」とも言える状況を生みました。

そこには


・宗教的背景

・緩和ケアと安楽死を対立させる単純化

・情報操作的な見出しや翻訳


といった要素も見られました。

「カナダ安楽死デマ拡散」例

本当の虐殺はガザではなくカナダで生まれた人々に起こっているのです!


希望を失い、家を失い、冬にはテントで暮らし、凍傷で手足を失った人々も多く、MAIDがあなたを助けてくれます。

ホームレスに対するMAIDの掃討チームは次は何をするのでしょうか?


「カナダ安楽死デマ拡散」例

MAIDSとは、死に際の医療援助の略です。

カナダ政府は、自国の医療制度が完全に崩壊していることを承知しているため、病気の子供、貧しい人々、精神障害者、ホームレス、高齢者に対処する唯一の方法は彼らを殺すことです。


「カナダ安楽死デマ拡散」例

MAiDとナチスドイツの安楽死プログラムの間には文字通り何の違いもありません。ドイツ国民に向けたこのポスターは、精神障害者や身体障害者の殺害を正当化しようとしている。カナダにはMAiDの居場所はない。


「カナダ安楽死デマ拡散」例
巧妙な偽ドキュメンタリーも作成して陰謀論に持ち込むキリスト教メディア

カナダは障害者や精神障害者を安楽死させる取組みを強化している。これは親の同意なしに未成年者を安楽死させることを認める『自殺助』に関する法律の多数の改正案さえ提案。現在、社会信用スコアの低い数千人の国民を毎週安楽死させている。


安楽死反対運動の実像──宗教・緩和ケア・情報操作から見る背景と手法
www.rest-in-peace-with-dignity-ripd.com
安楽死反対運動の実像──宗教・緩和ケア・情報操作から見る背景と手法
🎧音声による動画解説安楽死反対運動の実像|緩和ケア医と宗教・情報戦略が議論を曇らせる背景とは要約図(自由使用可)安楽死反対運動の実像──その背景と手法(安楽死 反対運動)世界では、安楽死や終末期医療についての議論が活発化しています。世界的な潮流としては、終末期における「苦痛からの解放」や「自己決定」を尊重する動きが広がっている一方で、これに強く反対する勢力も存在します。本稿では、その反対運動の構造と背景、手法について冷静に整理し、一般市民の皆さまにも分かりやすく提示します。安楽死反対派はどのような言説を用いているのか安楽死に反対する組織や個人は、一見すると緩和ケアや人道的観点を前面に掲げて主張することが多くあります。代表的な国際的団体のひとつに、名前が示す通り「ケア・ノット・キリング(Care Not Killing)」というグループがあります。これは直訳すると「殺さず、ケアを優先すべきだ」というメッセージですが、実際には緩和ケアだけあれば十分で、安楽死は不必要だという立場を取っています。※緩和ケアについては、こちらからhttps://www.rest-in-peace-with-d


カナダ安楽死(MAiD)制度の実態と最新データ


カナダのMAiD制度は、本人の明確な意思と厳格な手続きを前提としています。


MAiD制度の基本的要件

  • 本人が自発的に申請すること

  • 判断能力があること

  • 耐え難い苦痛を伴う重篤な医学的状態があること

  • 複数の医療専門家による独立した確認

  • 同意はいつでも撤回可能


第三者が「提案しただけ」で

実行できる制度ではありません。


年次白書が示す実際の傾向

RIPDが整理している公的データによれば、


  • 実施件数の大半はがんなどの身体疾患

  • 終末期またはそれに近い状況が中心

  • 社会的理由のみで実施されたケースは確認されていない


という傾向が明確です。


カナダ安楽死(MAiD)の実態:データで見る「トラック1」と「トラック2」の真実



懸念への反論――何が誤解で、何が本当の課題なのか


① 個別の不適切対応と制度全体を混同してはならない

2022年の事例は、制度の欠陥というより、行政対応の質の問題でした。

実際、政府は調査・是正・再発防止策を講じています。


これは、制度が暴走している証拠ではなく、問題が可視化され、修正される仕組みが機能していることを示しています。



② 支援不足と安楽死を直結させる誤解

社会保障や支援の充実は重要です。

しかし、それが不十分であることと、安楽死制度が人を死に向かわせていることを直結させる証拠は、現時点では示されていません。


MAiDは、あくまで本人の意思に基づく医療行為であり、福祉の代替制度ではありません。



③ 選択肢の存在と強制の違い

「安楽死が存在すること」そのものが圧力になる、という懸念は理解できます。

しかし同時に、耐え難い苦痛の中で選択肢を奪われることも、別の形の抑圧になり得ます。

重要なのは、


  • 選択肢を用意すること

  • 選ばない自由を確実に守ること


この両立です。



当会としての立場――恐怖ではなく、事実に基づく議論を


私たちは、


  • 安楽死を無条件に推進する立場でも

  • 感情的に否定する立場でもありません


必要だと考えているのは、恐怖やデマではなく、事実と制度に基づいた議論です。

2022年のエピソードは、確かに制度運用の改善点を浮き彫りにしました。しかしそれをもって、


・カナダの安楽死制度全体を「危険」「非人道的」

・と断じることは、現実を歪めます。




まとめ:カナダ安楽死をめぐる不安と現実、その先にある問い


2022年から2023年を通して広がったカナダ安楽死への不安は、


  • 実在する当事者の苦痛

  • 行政対応の不備

  • 情報の切り取りと感情的拡散


が重なって生まれたものでした。

しかし、現在明らかになっている制度の実態とデータは、

安楽死が弱者を排除するための仕組みではないことを示しています。


私たちが向き合うべきなのは、「安楽死に賛成か反対か」という二択ではなく、

人が生きること・苦しむこと・選ぶことを、社会がどう支えるのかという、より根源的な問いなのではないでしょうか。



参考・出典


大摩邇(おおまに) : カナダ政府は「精神障害者」と貧乏人の安楽死を開始

カナダ:貧しい人々の安楽死の費用の支払いを始める : メモ・独り言のblog

『衝撃的』:カナダの安楽死法に悩む専門家たち |APニュース

カナダのリベラルな安楽死法は死の文化を生み出しています

Canada’s New Euthanasia Laws Carry Upsetting Nazi-Era Echoes, Warns Expert

下半身麻痺のカナダ退役軍人が、政府のケースワーカーから安楽死を提案されたと語る |デイリーメールオンライン

カナダのパラリンピアンが階段昇降機を頼んだ際に自殺幇助を申し出た |ケア

レイ・ペニングス:自殺の「権利」を主張することは、最も弱い立場の人々を非人間化する - The Hub


Rest in Peace with Dignity

 (RiP:D リップディー)ディでー)

~安楽死の合法化をめざす会~

連絡先

・X公式アカウント
 

リップディー~安楽死の合法化をめざす会~のアイコン

・YouTube公式チャンネル

リップディーのYouTubeチャンネルの紹介画像

国内外の安楽死制度・法律・社会的議論について
最新情報を毎日発信しています。

安楽死制度・法制度の理解に役立つ、

国内外の解説動画や関連コンテンツを
YouTubeで紹介しています。

リップディー(RiP:D)~安楽死の合法化をめざす会~| 安楽死制度の成立

bottom of page