【オーストラリア安楽死 #1】 制度の現状
- リップディー(RiP:D)

- 10月20日
- 読了時間: 4分
更新日:7 時間前
【オーストラリア安楽死】
1. 制度の概要と法的な状況
オーストラリアの安楽死制度(VAD)は、アメリカ合衆国と同様に州の自治権が強く働いており、国家単位での統一的な制度は成立していません。
しかし、現在では『ノーザンテリトリー(※正確には準州:territory)』という地域を除く全ての州で安楽死制度が施行されており、広範な地域で合法化が進んでいます。
※オーストラリアにおいて、この制度は「安楽死」(Euthanasia)という名称は使用せず、『VAD(Voluntary Assisted Dying)』という呼称となります。


(英訳)
2. 制度導入の経緯と時系列
VAD制度の合法化に向けた流れは、2015年頃に国民的な議論が活発化し始めたのを契機としています。
この議論を制度として実現する先駆けとなったのはビクトリア州であり、2017年に州議会で法案が可決され、2019年にサービスの運用が開始されました。
このビクトリア州での施行を皮切りに、国内の他の州でもVAD制度が着実に導入されていきました。

一般の人々にも理解できるように書かれているので参照してみてください。
3. 最新の動向と総括報告
近年における法的な進展として、オーストラリア首都特別区域(ACT)では、2024年6月5日に安楽死法案が可決されており、2025年11月にはサービスの運用が開始される予定となっています(※追記:無事に運用開始)。
また、2024年8月12日には、オーストラリア保健相(日本の厚生労働省に相当)から、これまでのVADに関する実施状況を詳細にまとめた総括報告書『State of VAD』が公に発表されました。この報告書は、今後の制度運用の参考となる重要な資料とされています。



https://assets.nationbuilder.com/gogentleaustralia/pages/3038/attachments/original/1723682650/GGA_StateOfVAD_Report_2024_DIGITAL_Aug24.pdf?1723682650
こちらの詳細は別回で述べますが、一般の方は下記の内容を理解しておけば充分です。

4. 主な適格基準(Eligibility Criteria)※ビクトリア州の例
・18歳以上であること。
・オーストラリア市民または永住者であること、およびビクトリア州に通常居住しており、最初の申請時に少なくとも12ヶ月間そうであったこと。
・VADに関する意思決定能力があること。
・治癒不能であり、進行性で、死をもたらす疾患、疾病、または医療状態と診断されていること。
・その疾患により、数週間から数ヶ月以内、最長6ヶ月以内、また神経変性疾患の場合は最長12ヶ月以内に死に至ると予想されること。非末期の状態では対象外。
・その疾患が、本人が耐えられないと判断する苦痛を引き起こしており、許容できる方法で軽減できないこと。
・精神疾患や障害のみを理由としてVADの資格は得られない。
※神経変性疾患:
ALS、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、多発性硬化症、ハンチントン病 etc.
5. 実施状況の具体的な事例
実際にVADが適用された件数に関する具体的なデータ例。
• ビクトリア州の事例: 合法化が最も早かったビクトリア州では、2019年6月の施行から2021年6月までの2年間で、331人がVADを申請し、そのうち224人が実際にVADを選択し、実施されました。
• クィーンズランド州の事例: 2023年1月1日からサービスを開始したクィーンズランド州では、施行後6か月間で591人が手続きを行い、562人が適用対象と評価されました。その中で薬物が提供された患者は338人であり、実際に服用して亡くなられた患者は245人という結果が示されています。
6. 制度に対する評価と歴史的背景
オーストラリアのVAD制度に対しては、「申請から実施までの手続きを簡素化せよ」という批判が存在しており、適応条件が厳格である実態がうかがえます。しかし、現時点では制度は「“それなりに”機能している」と評価されています。
VAD制度には不満点や改善の余地が多々ありますが、一方で、問題が発生しないよう慎重に手堅く、だが着実に進めていく姿勢は高く評価されており、日本が見習うべき重要なポイントとなるでしょう。
特に、日本は「不安」を表明するに留まり、初めの一歩を踏み出す展開力が欠如している点との対比が明瞭化できます。
また、現在VADが施行されていない『ノーザンテリトリー』については、実は1995年というかなり以前に世界初の安楽死法案が一度可決されたものの、1996年7月のサービス開始からわずか1年間で無効となってしまったという特異な歴史があります。
この地域は、安楽死マシーン『サルコ』とも関連する因縁の深いエリアとしても知られています。これについては別回で説明していきます。





