【ドイツ安楽死 #2】ドイツの安楽死協会(DGHS)とは|1980年代から尊厳ある死を支える市民団体
- リップディー(RiP:D)

- 2025年12月8日
- 読了時間: 6分
更新日:1月3日
🎧音声による動画解説
1.ドイツの安楽死協会(DGHS)について
2025年11月19日、ドイツから安楽死に関するニュースが入りました。

概要:ケスラー姉妹とドイツ安楽死協会DGHS|
象徴的支援者としての役割
・1950〜60年代に欧州で人気を博した「ケスラー姉妹」の Alice ケスラー さんと Ellen ケスラー さんが、89歳で亡くなった。自殺幇助(安楽死)によるもの。
・ふたりは以前から「同じ日に一緒に死にたい」と望んでおり、約1年前に支援団体 Deutsche Gesellschaft für Humanes Sterben(DGHS) に連絡、会員となっていた。
・DGHS が今回、この姉妹の自殺幇助(安楽死)が実現したことを明らかにした。姉妹の願い通り、ふたり一緒に人生を終えた。
>ふたり一緒に人生を終えた。
→そう記述されているので、いわゆる“カップル安楽死”(Duo Euthanasia:同伴・二重安楽死)が実施されたということになります。
同伴安楽死については、オランダの記事を参照して下さい。

ケスラー姉妹は、日本での知名度は低いですが、欧米では1950年代から一世を風靡したスターのような存在だったようです。
著名人の安楽死ということで話題になったので、このニュースは「安楽死や自殺幇助が合法、かつ本人の強い意思に基づいて行われる国もある」ということを示す具体例になったことでしょう。
2.DGHSの設立背景と1980年代のドイツ社会
ところでドイツの安楽死協会の存在は、日本では、ある理由から(後述)知名度が低いのですが、スイスと同様に、ほぼ同じ時期、形で昔から存在しています。ドイツの記事も参照してください。
ここでは記事で言及された、ドイツの安楽死界を率いるDGHSについて簡単に紹介しておきます。
DGHSとは — 基本情報・成立
・DGHS は 、1980年11月7日にドイツで設立された団体で、「人が人生の終わりを自ら決める権利(自己決定権)」「人道的な最期」を支持・保障する市民権/患者保護の市民団体。
・団体形態は、登記された協会/団体で、営利目的ではなく、公益性のある「非営利団体」として運営されている。
・団体の主な目的は、
▶ 「重病あるいは終末期にある人々が、自分の意志・価値観に基づき生き方と死に方を選べるようにすること」
▶ 「人道的、尊厳ある死」
を社会・法制度として保障すること。
※ホームページはこちら
目的・理念
自身の判断能力(意思能力)がある人に限り、自分で「いつ」「どのように」「もし必要なら誰の助けで」人生を終えるかを決める権利を保障する。
痛みや苦しみ、将来的な耐え難い状態(病気、苦痛、多臓器不全、重い障害、終末期など)から、自己の尊厳や人格の統一性を損なうことなく生き終える選択の機会を提供する。
生前の意思表示(例えば「延命しない」「どこで・どのように最期を迎えたいか」)を明文化する「患者の意思表示」や「医療・介護・延命拒否の意思」を含む「事前指示(リビングウィル)」を支援・普及。
医療・介護・緩和ケアの普及および改善。苦痛の緩和/尊厳ある終末期ケアの拡充も重要な柱。
DGHS は政治や宗教、政党には依存せず、あくまで
「人道主義(ヒューマニズム)」
「個人の権利・自己決定」
を軸に据えており、中立性を明示している。
最近の動向と現状
2015年に事業の停止命令を受けるが、2020年2月、ドイツ最高裁が自殺幇助禁止法を無効と判決したことにより、合法的に援助を受けた自殺が可能になった。これを受け、DGHSは 正式にサービスを提供開始。
※初めて安楽死(自殺幇助)を行なったのは1984年の末期がん患者で、古くから細々と運営していた。
スイスは1943年にあった法律を独自に解釈して1982年にExitがサービス開始(スイス記事を参照)。
しかしドイツでは、DGHS、いわば市民団体が医師や弁護士、地域行政と協力して、人道的主張をもとに、法律がないまま(悪く言えば“勝手に”、“独自の解釈で”)開始した。
DGHSは2025年9月時点で、約50,000人 の会員を有する。
最近の報告では、2024年には DGHS が 623件 の医師を通じた自殺幇助を仲介したとのこと(データ等はドイツ記事参照)。
DGHSは、2024年11月に改定された基本原則文書で、自己決定できる成人であれば、理由の内容に関係なく「自らの意志で死を選ぶ権利」を認めると明記している。
3.備考:DGHSとドイツ連邦憲法裁判所判決の関係
記事に「警察が出動した」というのは、安楽死協会の規定されたプロセスであり事件性はありません。
スイスも、同じく国家としては安楽死を『法制度化していない』ので、安楽死の実施後は、数十分〜数時間かけて警察の事情聴取が入ります。
それに加えて行政、弁護士、司法、警察、医師などに事前に連携した上で安楽死を実施しています(余談ですが…故に“費用が莫大”…オランダなど法制度化した国は、ほぼ無料)。
市民団体、つまり完全に民間のサービス形態なので、審査のための費用は高く、また時間も掛かります。そのため、スイスで安楽死する外国籍の人々は、ドイツが一番多いです。

ディグニタスのホームページ
2020年にドイツ最高裁が、下記の判決を下すまで、法的根拠は一つありませんでした。あくまでドイツ安楽死協会DGHSが、地域行政や担当してくれる医師、司法、裁判所、弁護士…諸々と連携を組んで『人道的理念』だけを根拠に1980年代からサービスを展開していった形です。(DGHSが先導して周囲を巻き込み、定められた監視のもの“勝手に”活動して、その実績が暗黙の了解で行われていた)。
故に、初めて裁判判例による法的根拠を得た、この判決は画期的、歴史的でした。

2020年2月26日 ガーディアンの報道
4.日本の安楽死反対論では語られにくいドイツDGHSの実像
日本で安楽死を反対する人々(ほとんど“左”巻き界隈)が国民を扇動するために、しばしば用いる言葉とフレーズ…
例
「優生思想、ナチズム、T4作戦、ヒトラー、レイシズム」
「安楽死をいったん認めると“滑り坂”が起こり日本はナチス化する」
『ドイツでは(裁判判例により)安楽死が合法化している』という事実は、彼ら彼女らにとって不都合な事実です。
上記の言葉とフレーズを無効化してしまう…故に、ドイツの安楽死事情については徹底的に言及しません。オールドメディアもドイツ安楽死だけは、決して報道しません。
例
>障害者や経済的弱者が強制的に安楽死を選択させられている
>カナダでは生活保護より安楽死の申請のほうが簡単らしい
このような懸念を煽るための手段(デマまたは陰謀論)…
その威力が半減してしまうからです。







