【デンマーク 安楽死 #1】デンマーク安楽死制度化に向けた動向|政府委員会報告と政治・世論の推移
- リップディー(RiP:D)

- 1月1日
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更新日:6 日前
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デンマークにおける安楽死制度化に向けた動向

デンマークは北欧諸国の中でも、近年、安楽死(積極的な死期の選択を可能にする制度)の導入に向けた議論が活性化している国のひとつです。
本稿では、同国における安楽死制度化をめぐる政治・社会の動きについて、歴史的経緯から最新の政府内検討まで整理して説明します。
1. 初期の動き(2018〜2022)|国会請願による安楽死制度導入の萌芽
デンマークにおける安楽死制度導入の最初期の動きは、2018年に提出された国会請願に遡ります。この請願には8,386人の署名が集まりましたが、当時は議会での審議には至りませんでした。
2. 本格的な動きの始まり(2023年)|議員発言と市民請願の拡大

2023年初頭、下院議員ルイーズ・ブラウン氏がテレビ番組(TV2 Østjylland)に出演し、制度化に賛意を示したことが大きな契機となりました。
ブラウン氏は、自身が長年介護した母親の経験をもとに、「人は自らの身体と人生について決定する権利を持つ」と述べ、安楽死制度の必要性を訴えました。
彼女の発言は社会に広い反響を呼び、以後の議論の伏線となりました。

さらに同年5月、看護師のラース・リオル・ラムスガード氏が主導する請願運動によって、約5万人分の署名がデンマーク議会に提出されました。
彼の母親は安楽死を望んでいましたが、彼は残念ながら助けることができませんでした。そこで、彼は請願運動に立ち上がることを決心しました。
署名者の多くは、患者やその家族が極度の苦痛に直面しながら救済を求められない現状への改善を期待しており、社会的な関心は一段と高まりました。
メディアでも安楽死に関する特別番組が組まれ、それが放映された後は、更に2万人以上が署名に参加しました。
3. 政治家の発言と議論の広がり|首相・外相による公式言及

2023年6月15日、当時の首相であるメッテ・フレデリクセン氏は、デンマーク政治祭「フォルケモデット」での演説において安楽死を支持し、議会での対話を継続すべきとの立場を明確にしました。

また、当時のラスムッセン外相も党内でこの問題を取り上げ、議論の幅を拡げました。
同時期の世論調査では、約72%のデンマーク国民が安楽死の合法化に賛成しているとの結果が示され、国民の大多数が制度導入を支持する構図が浮かび上がりました。
4. 政府内検討委員会の設立と報告(2023〜2025)|安楽死制度は必要との公式結論

2023年9月、デンマーク政府は「安楽死制度を検討する委員会」を設立し、制度化の是非および枠組みについての審議を正式に開始しました。
委員会は政府主導の下、医療・倫理・法制度の専門家らで構成され、慎重な検討を重ねました。

2024年2月6日、冒頭のルイーズ・ブラウン下院議員は、改めてテレビ番組で安楽死制度の合法化を訴えて話題を呼びました。

その結果、2025年1月31日、委員会は政府に対して
「安楽死制度は必要である」との報告書
を提出しました。
彼らは、平均余命が6か月以下の精神的に健康な成人の末期患者が、医師の処方箋で自分で薬を服用することで人生を終えることができるべきだと提案しました。
この報告書は、制度化に向けた政策立案の基盤を形成する重要な資料となっています。

5. 現行の法的状況|デンマーク刑法における安楽死の位置づけ
2025年には一定の進展が期待されましたが、残念ながら大きな動きは見られず、現時点のデンマークでは、積極的な安楽死や医師による自殺幇助は法的に禁止されています。
すなわち、医療者が患者の死を直接的に誘導する行為は殺人や幇助とみなされ、刑事責任が問われる状況にあります。
制度化への報告書提出は大きな一歩ですが、最終的な合法化には議会での立法措置が必要です。

結び|デンマーク安楽死制度化の今後と立法府の課題
デンマークにおける安楽死制度の議論は、2018年の初期請願から始まり、2025年1月の政府内検討委員会報告書提出に至るまで進展してきました。
多数の国民支持と政治家の関与により、制度化に向けた社会的基盤は形成されつつあります。
しかし倫理面の慎重論や法制度化の具体策など、解決すべき課題も残されています。今後、立法府での議論がどのように深化していくかが注目されます。




