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【フランス安楽死 #1】フランス安楽死の現状と時系列まとめ

  • 執筆者の写真: リップディー(RiP:D)
    リップディー(RiP:D)
  • 6 日前
  • 読了時間: 7分

更新日:4 時間前

【フランス安楽死の現状と時系列まとめ】


2025年5月27日、フランス下院議会にて『安楽死法案』が承認されました。


フランス下院議会で安楽死法案の承認を示した画像

賛成:305票反対:199票

大差をつけての法案可決となりました。


日本の大手メディアは(反対派に忖度する傾向があるので)“プチ”情報統制気味に報じないだろうと想定してましたが、朝日新聞以外は、ほとんど報道しているようでした。


フランス下院にて安楽死の容認法案が可決した記事


余談ですが、毎日新聞京都新聞は、安楽死制度を断固反対するメディアとして有名です。


フランスの安楽死に対する世論調査
IFOPとは、老舗・世論調査会社

昨年2024年7月の段階でも、国民の84%が安楽死法案を支持…しかも左右の有権者も「賛成」が多数。

そして秋口10月7日に上院での審議を開始する予定でした。


フランス議員オリヴィエ・ファローニの、安楽死に関するX投稿文

しかし、またもや延期する事態となっています。

その理由を説明するために、ここまでの長い長いフランスの安楽死制度への道程を振り返っておきます。



世界的映画監督であるフランス人の ジャン=リュック・ゴダール氏 が、スイスにおいて自発的な意思に基づき最終的な医療行為(いわゆる安楽死)を選択したというニュースは、日本でも記憶に残っているかと思います。

この直後から、フランス国内では終末期医療・安楽死制度に関する議論が大きく進展していきました。


フランス人映画監督。ジャン・リュック・ゴダール氏

ゴダール監督の死後、フランス政府は市民の声を反映させるため、大規模な「市民会議(Convention citoyenne)」を開催し、国民の代表が数ヶ月間にわたり丁寧に討論を重ねました。日本では起こり得ないだろう民主主義の大胆な試みと言えます。

この周到な準備から、制度化は順調に進むかのように思われました。


【フランス安楽死の現状と時系列まとめ】


・2022年9月  ゴダール監督 スイスで安楽死

 仏マクロン大統領 その日に市民会議を宣言

・2022年12月 市民会議を開始

・2023年4月 市民会議が終了

・2023年9月21日 安楽死関連法案を国会へ


安楽死に関する市民会議の投票場面

30秒後、スクリーンに電子投票の結果が映し出されました。

賛成は125票。これは投票者の『75%』にあたります。

安楽死は、未成年者にも認めるべきだ」とした人も『67%』


安楽死に関するフランス市民会議の様子
終末期医療を学ぶためのセミナーも随時開催

2023年、安楽死に関するフランス市民会議の集合写真

フランス市民会議にて72%が賛成票を投じた記事


しかし、2023年9月以降、法案は度重なる延期に直面します。

延期の理由としては、以下のような国内外情勢が重なったためです。


  • ローマ教皇フランシスコ訪仏の調整(外交圧力)

  • ウクライナ情勢の悪化への対応(戦争開始前)

  • イスラエル・パレスチナ紛争に関する外交課題

  • 政府の優先課題が急変し、終末期医療法案の審議が後回しになったこと


当時の世論調査では、国民の84%が安楽死制度の導入に賛成していることが明らかでした。しかし政治日程の都合により、議論は前に進まず、私たち自身も次第に実現を悲観するほどでした。


フランス安楽死の世論調査。IFOPの調査結果

それに追い討ちをかけるように、2024年6月9日、マクロン大統領による突然の議会解散が発表され、同年5月に予定されていた最終的な審議と採決は、再び棚上げとなりました。

「10日後には最終採決」という段階にまで進んでいたにも関わらずです。


2022年9月に「制度化に向けた本格的議論の開始」が宣言されてからというもの、長期にわたる停滞は国民の失望を深めていきました。その結果、安楽死を希望するフランス国民の一部は、合法化済みの隣国ベルギーへ渡航せざるを得ない状況が続きました。


2024年フランス解散総選挙のため、安楽死審議が延期で、安楽死を希望する市民は海外へ渡航

国民の圧倒的多数、右派・左派の有権者、主要政党の多くが賛成の立場を取る中で、反対意見は少数派にとどまっています。主な反対勢力は以下の通りです。

移民政策を巡る政治的緊張も影響し、安楽死法案の成立を阻む一因となっています。


  • カトリック教会および宗教団体

  • 医師団体(特にホスピス・緩和ケア領域)

  • 極右政党「国民連合(RN)」


移民政策の問題も絡み、安楽死の審議は延期という報道

2024年7月20日には、法案が再度提出され審議が再開されましたが、私たちは再び先送りとなることを懸念し、さすがに大きな期待を抱かないようにしておりました。

また、この間、法案の進展を巡るニュースは海外で大きな話題となりましたが、日本のメディアではほとんど報じられていません。


なお、この時期、同様にイギリス国内でも「安楽死法案」が審議されており、フランスとイギリスの両国が制度化に踏み切った場合、世界の終末期医療政策に大きな転換点が訪れると考えられていました。だからこそ、私たちはこの動向に深い期待を寄せていました。


そしてついに、2025年3月11日、安楽死法案が国民議会に再提出され、同年5月12日より再審議が正式に開始されます。そして冒頭で説明したように5月27日に下院議会での法案承認に至ります。

提出者は、国民議会の オリヴィエ・ファローニ議員 です。彼は長年にわたり超党派で終末期医療改革を訴え続けた中心人物で、フランス国内では非常に尊敬を集めています。


フランス安楽死法案の表紙


フランスの安楽死法案のURLです。別回で内容を紹介します。



しかし法案が上院へ送られる前に、また延期となり頓挫します。理由は政局の混迷です。

下院可決後、予算をめぐる対立 → 首相辞任 → 後任も辞任という政局不安が連続しました。


具体的には以下4つ。


① バイルー首相が“予算案”をめぐり議会と衝突

 下院で不信任案が可決 → 9月に辞任。

② 後任のルコルニュ首相もすぐ辞任

 9月にルコルニュ氏が首相に就任。

 議会との調整が難航し、就任から1か月足らずの10月6日に辞任。

③ 党派対立が激しく、政策協議が機能しない

 各党が2027年大統領選をにらんで妥協を避け、政策協力が進まない状態。

④ 内閣の短期交代で「国会スケジュール」そのものが混乱


首相交代 → 新内閣の組閣 → 政策再調整 この繰り返しで、重要法案はどうしても後回し。



上述したようにフランスでは、右派・左派を問わず、どの政治スペクトルに属する有権者も圧倒的多数が安楽死制度に賛成しています。


にもかかわらず、法案審議は停滞しています。


2026年1月にフランス上院で安楽死法案が審議される予定

いちおう2026年1月12日上院での審議が開始される予定となっていますが、何度も延期をくり返してきた経緯を考えると、あまり期待はできません。

もし来年上旬でも滞るなら『国民投票』を実施すべきだ、という主張も出ています。


また法案成立が遅れている背景には、


  • カトリック系団体

  • 一部医師会

  • 政治的保守勢力の影響


が断続的に強く作用しています。

最近では、2025年1月にはバイルー首相(カトリック系政治家)が法案の遅延を画策したとして批判を浴びました。国民のみならず議会内部からも不満の声が上がっています。


狂信的カトリック教徒:バイルー元首相

※“むふむふ”チャンネル様の提供動画


ローマ・カトリック教皇フランシスコの安楽死反対の声明


フランスでは2000年以降、終末期医療と安楽死に関して多くの社会的議論を引き起こす事件が相次ぎました。

しかし、日本と同様に宗教団体と医療界の連合体」などの強い反対により、制度化は長く停滞してきました。


フランスにおける安楽死関連の事件、その年表
ALS患者嘱託殺人など“ボヤ騒ぎ”に思えるぐらい凄惨な事件が相次いでいます

次回以降に、事件の詳細を紹介していく予定ですが、林優里さん、大久保医師との“安楽死事件”など取るに足らないレベルの悲惨さのオンパレードです。

ですが、その度に反対集団に潰されてきました。その反対姿勢は、とにかく“えげつないです。


個人の苦悩より<<<<<キリスト教生命倫理(教義)


を絶対的なものとして捉えています。

その結果が、以下です。


フランスからベルギーへ安楽死する人々の多さを伝える記事

2024年は『106名』のフランス人がベルギーに向かい安楽死

しています。本来であれば「故郷で家族に見守られながら亡くなりたい」と願う方々が多かったはずです。ちなみに

2023年は『101名』

2022年は『53人』

それ以前は、あまりの多さにベルギー政府が年間20人に限定していました。フランス安楽死制度の成立遅延のため、ベルギーが門戸を開いた形です。



最後にフランス安楽死協会ADMD様の投稿文と、フランス安楽死の時系列経緯を置いておきます。是非ご参考になさってください。


フランス安楽死協会、ADMDの宗教を批判する投稿


フランス安楽死制度に関する時系列まとめ

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