【カナダ安楽死 #1】現状と実績データ Maid(積極的安楽死/自殺ほう助)
- リップディー(RiP:D)

- 11月15日
- 読了時間: 9分
更新日:6 時間前
【カナダ安楽死】現状と実績データ
カナダでは『安楽死(Euthanasia)』という言葉は使わず、
MAID(Medical Assistance in Dying)と呼称します。
※ちなみにアメリカのMaidは(Medical aid in dying)となります(紛らわしいです)。
※カナダの記事については、初回ということで、単純なキーワードとデータを示して必要最低限度の知識を紹介します。次回以降は、詳細に論じていきますので、とりあえず基本的な情報は押さえておきましょう
利用者数の急増(カナダ安楽死)
カナダの安楽死制度(MAID:Medical Assistance in Dying)は、2015年に法案が可決され、2016年に正式に施行されました。
また2021年に法改正があり、後述するように、安楽死の対象が非末期疾患へと拡大しています(ただし審査はより厳格化)。
そして、こちらの 2023年度までの利用率グラフを見ると、制度開始からの利用者数の伸びが非常に大きいことが分かります。
制度開始から利用者数は“爆増”と言って良いほど増加し、上昇率は極めて急速です。

オランダでは制度成立から約20年かけて、年間死亡者に占める安楽死の割合が5%を超えました。

一方で、カナダは たった7年間で4.7%(2023年) に達しており、5%目前です。
2024年のオランダでは 5.8%(9,958人) に増加していますが、その20年の道のりを、カナダはわずか数年で追い抜こうとしています。
(※あくまで参考ですが、日本での年間死亡者のうち自殺で亡くなる割合は約2.4%。)
※この急増ぶりに、カナダ国内の宗教系団体(特にキリスト教福音派)が敏感に反応して焦りを感じたのか、陰謀論めいた批判をメディアで世界中に拡散・展開しているのは、“さも、ありなん”という状況でしょう(いずれ解説)。
急増の理由としては大きく3点あります。
・制度導入の背景:
市民が訴訟を通じて権利を勝ち取った歴史(自負心)
・後発国の優位:
既に他国の制度設計ノウハウが整備されていた(オランダの影響が強い)
・自己決定権を重視するカナダの文化政治的背景
つまり、制度の発展段階を最短距離で駆け抜けられる環境が整っていたという事です。
訴訟と導入の経緯については、別回で報告します。
安楽死(Maid)の対象条件
・18歳以上
・精神的に健全=判断能力があること
・重篤な疾患、または障害がある
・進行した衰退状態
・緩和できないほどの心理的な過度の苦痛、障害、衰退状態
注意点として、基礎となる疾患が『精神疾患の場合』は対象外であることは覚えておきましょう。精神疾患もOKの、オランダ、ベネルクス3国、ドイツ、スイスとは異なります。
実は、2023年3月17日に、基礎疾患が精神障害でも対象となるはずでした。
しかし1年延期が決定されたあと、2024年2月に『2027年までは検討しないという方針』が決議された…そのような経緯があります。
ただ、それを不服としてオンタリオ州では裁判が起きています。
2023年の詳しいデータ内訳
・安楽死を申請した人:
19,660人
・実際に安楽死で亡くなった人:
15,343人
・申請したが亡くなるまでに間に合わなかった人:
2,906人
・不適格と判断された人:
915人
・申請したが安楽死を選ばなかった人:
496人
制度全体を俯瞰すると、申請者のうち 約22%が実際には安楽死に至っていない ことが分かります。

データのソースは、2024年に公開された『第5回年次報告書』
非常に読みやすい内容と構成になっているので、興味ある方は是非読んでみましょう。
トラック1(末期)とトラック2(非末期)
カナダの安楽死を語る上で気を付けてほしい点があります。
それは、例えば、アメリカやオーストラリア、今まさに安楽死法案を審議中のイギリスとは違って、カナダ安楽死では対象条件に非・末期疾患の患者が含まれるということです。
これは先述のとおり、2016年の施行から5年後の2021年の法改正により決定されました。
カナダのデータを見ていくと、トラック1、トラック2という表現が頻出しますが、前者が末期疾患、後者が非末期疾患、の患者群と覚えておきましょう。
トラック1は、本人に差し迫った『死』が「合理的に予見可能」…
つまり「近いうち(1年以内ぐらい)には亡くなる」と合理的に判断できたケース。
トラック2は、重篤な疾患を抱え、安楽死の条件をクリアしながらも、寿命の推測に関しては不確定という状態の中、安楽死するケースです。
「 生きようと思えばまだ長く生きられます。しかし、心理的な苦痛が壮絶すぎて、もうムリ」…そのような患者さんをイメージすると良いでしょう。
ザックリ説明してしまうと、
トラック1は、『がん』が代表的です。
トラック2は、寿命は不確定で末期ではない『ALS、パーキンソン病などの神経疾患』『(首から下が動かない)四肢麻痺』。
もっと言えば『重度の精神障害』も非末期疾患と言えるでしょう。
オランダでは、『カップル安楽死』が認められ注目されていますが、あちらも寿命は不確定なので“非末期”の安楽死と言えます。
トラック2のケースを『認めるのか、認めないのか?』
ここは今後の安楽死制度の発展の中で、非常に重要なテーマとなってくるので意識して覚えておくと良いでしょう。
トラック1(末期)とトラック2(非末期)の内訳
・トラック1(末期):
95.9%(14,721人)
・トラック2(非末期):
4.1%(622人)
つまり、カナダで安楽死を受ける人の 約96%は「余命1年以内の末期疾患」です。
トラック1の特徴(末期)
・主な基礎疾患は がん(64.1%)
・平均年齢は77.7歳
国際的に見ても典型的な構造で、「安楽死=主に末期がん患者」というイメージ通りの結果です。
トラック2の特徴(非末期)
・基礎疾患は ALS、パーキンソン病、脊髄小脳変性症などの神経疾患が中心
・その他:糖尿病、虚弱、慢性疼痛、自己免疫疾患など
・平均年齢は 75歳
ただし、トラック2は
・利用者が少ない
(全体の4.1%)
・不適格率が高い
(26・9%)
という大きな特徴があり、審査がかなり慎重に行われていることが読み取れます。
難病患者数の規模を考えると、「少なすぎるのでは?」という指摘もありますが、これは審査手順そのものが慎重すぎるのか、あるいは制度の運用上の問題か、継続的な議論が必要な部分となっています。
※このトラック2に関しては、カナダだけでなく、同じく非末期の安楽死を認めているオランダやオランダ周辺国も含めて、WHO、国連人権団体、世界医師会、緩和ケア医業界、とりわけキリスト教原理主義メディアが、しつこく執拗に「トラック2安楽死は止めろ」と糾弾してくる点でもあります。
よくある誤解とデマ・陰謀論
安楽死制度を反対する人々の中には、
>障害者や経済的弱者が強制的に安楽死を選択させられている
>カナダでは生活保護より安楽死の申請のほうが簡単らしい
>「障害者が安楽死で間引きされている、カナダがナチス化してる」
>カナダ政府は社会保障費を抑制するために安楽死制度を進めている
…と非難して、カナダの安楽死に非常に悪いイメージを付与して言及する人々がいます。

しかし、それは『嘘』です。
既述のように実際のデータとは完全に矛盾しています。
・トラック2(非末期)は「全体の4.1%」
・それは神経疾患が中心
・審査はむしろ極めて厳しい
したがって「障害者が大量に安楽死させられている」というデマは間違いと断じることができます。
それではデマを流すだけでなく『陰謀論アプローチ』さえ取りながら、安楽死制度を非難・否定している人々の正体は誰か?それは、
・安楽死を“丸ごと”全体、否定する勢力
・“安楽死”という概念自体、沽券と利権の点から非常に都合が悪いと考える勢力
そういう人達です。また海外だけでなく『日本でも!』下記のような教義を持った人々が、各業界の上層階に蔓延っています(例.日本キリスト教団に所属する石破茂 元首相の類は社会に沢山潜んでいます…)。
「安楽死は自殺であって(キリスト教的)生命倫理に反する卑劣な行為である」
「自殺は神様を裏切る極めて冒涜的で恥ずべき行為である」
「キリストの受難がそうであるように“苦しみには意味がある”」
これについては別記事で詳細に説明したいと思います。
地域特性・所得分布から見える現実


よく言われるような「貧困層が安楽死に追い込まれている」という主張も、データとは一致しません。むしろ、
・所得分布との明確な関連性はない
・むしろ、将来的には「安楽死が富裕層の特権となる可能性」すら指摘されている
という状況です。
緩和ケアと障害者支援:
制度の基盤は機能している


カナダは歴史的に緩和ケアを非常に重視してきた国です。
“Palliative Care” という名称そのものを最初に提唱したのもカナダの医師です。
そのため、安楽死制度のせいで緩和ケアが軽視されているという主張は当てはまりません。
実際にトラック1(末期)の患者では
76%が緩和ケアを受けていた
と報告されています。
これはつまり、
緩和ケアが提供された上で、それでもなお、
『苦痛が軽減できない場合には、人々は自ら安楽死を選択している』
という実態があります。
カナダの安楽死制度は、制度開始から短期間で急速に拡大しましたが、その背景には
・市民の権利闘争としての制度誕生
・後発国としての制度設計の完成度
・緩和ケアと並列での慎重な運用
・末期疾患(特にがん)が中心の利用構造
・厳格な審査と専門スタッフの増加
といった土台がありました。それと同時に
「障害者が大量に安楽死させられている」
「貧困層が標的にされている」といった言説は、
実際の統計とは一致しないことは明らかである事実は覚えておくと良いでしょう。
決して制度は乱用されておらず、むしろ慎重運用で支えられています。
実際には 厳格な評価体制・緩和ケアとの両立・市民の権利としての正統性を土台にしており、データからは秩序立った成熟した制度 が立ち上がりつつあることを確認できます。
カナダは、緩和ケア先進国として知られつつも、個人の自己決定権を強く尊重する法体系を持つため、安楽死制度は医療的ケアの延長ではなく、患者の尊厳と主体的選択を重視する権利として位置づけられています。
当会では、カナダの安楽死について完全なエビデンスとデータを元に、今後も積極的に論じていこうと思います。



